【クローズアップ:酪農ファクトブック】栄養とSDGsと牛乳 乳和食の効能説く2021年7月9日
Jミルクは「栄養とSDGsと牛乳・乳製品」と題した2021年酪農ファクトブックをまとめた。国連の持続可能な開発目標であるSDGsと牛乳の関係を栄養面で解説した。酪農がいかに栄養供給に貢献しているかを強調し、特に国内向けには乳成分のコクを生かし減塩と和食を引き立てる「乳和食」の効能を説いた。
17の目標を掲げるSDGsは「総論賛成・各論慎重」なのが実態だ。特に畜産酪農業界にとっては、糞尿処理をはじめ環境保全面で負荷が大きい。いわば〈両刃の剣〉だ。
場合によっては生産抑制的に働きかねない、との懸念が広がっているのが実態だ。ただ、地球温暖化、気候変動が、クライシスの単語を使う気候危機とまで称される中では、業界挙げた対応を急がねばならない。
それが、結局は畜酪の持続可能性につながる。生産側の論理のみで動く時代はとうに過ぎた。環境重視の〈宇宙船地球号〉の一員の自覚と具体的行動こそが問われる。
酪農の貢献アピール
場合によっては環境に負荷を及ぼす酪農だが、全体の差し引きでSDGsと関連づけることが欠かせない。今回のJミルクがまとめた2021ファクトブックも狙いはそこにある。栄養学の権威・中村丁次神奈川県立保健福祉大学学長が監修した。イラスト、写真を使い分かりやすく作成した。
SDGs関連では、目標1の貧困、目標2の飢餓ゼロ、目標3の全ての人に健康・福祉に合致すると指摘。酪農の生乳生産を通じた牛乳・乳製品供給は、2015年に国連がSDGsを掲げた前年の14年、世界栄養報告書での「良好な栄養状態が人間の幸福の基盤になる」が酪農の貢献を裏付けるとした。
牛乳は栄養の〈塊〉
中村学長が説くのは、他の食品にない牛乳・乳製品の栄養面でのメリット。特に日本人に不足しがちなカルシウムの吸収率が良く、必死アミノ酸の含有量が多く良質なタンパク質を提供し、多様なビタミン類も補給できる点だ。
日本人の健康・栄養状態は今、「二重構造」にあるという。若年女性と高齢者の低栄養の反面、一部の中高年の過栄養である。これらを解消するためにも、適度な牛乳・乳製品の窃取がカギを握る。
コロナ禍、免疫力でも注目
コロナ禍、生乳需給は混乱に陥った。だが、行き場のなくなった生乳の廃棄という最悪の事態は避けられた。国や酪農団体、乳業メーカーなど業界挙げ保存が利く加工へ回す臨機応変な対応が功を奏した。
さらに食品スパーでの牛乳、ヨーグルト、チーズ、バターなど家庭用需要が拡大したことも大きかった。牛乳・乳製品の栄養価と共に生活習慣病を抑え、ウイルスへの免疫力が消費拡大につながった。
各乳業も、機能性、免疫力をアピールしたヨーグルト新商品などの投入も、需要の底支えとなる。感染症と栄養の相関関係も、牛乳・乳製品の効能に注目が集まった一因だ。
乳和食は〈ニュー和食〉
酪農ファクトブックでも、注目の取り組みとしたのが「乳和食」の広がり。もともと、日本型食生活は栄養バランスが優れているが、カルシウム不足と塩分過多に課題があった。
これを克服し、本来の和食の良さを引き立てるのが乳成分を加えた和食、「乳和食」だ。みそ、醤油などのだしを牛乳・乳製品に一部置き換えることで乳成分のうまみとコクを生かした料理に仕上がる。
栄養士・小山浩子氏が料理教室などを通じ全国に広げ、「乳和食」のバリエーションも大きく広がってきた。
循環生産の課題も整理
生乳が牛乳・乳製品を通じ人々に栄養を提供するにしても、持続可能な酪農生産の課題は残る。
輸入飼料中心の酪農生産がいつまでも続くわけはない。やはり基本は自給飼料率を以下に高めるか。それを通じた耕種部門と結び付いた地域内での循環農業の確立が本来の日本型酪農の姿だ。
酪農ファクトブックではその点にも触れた。
環境負荷軽減へ家畜糞尿を活用したバイオマスの再生可能エネルギー、放牧など家畜福祉の増進、労働環境改善などだ。乳業メーカーは製品のプラスチック割合の減少なども問われる。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(156)-改正食料・農業・農村基本法(42)-2025年8月23日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(73)【防除学習帖】第312回2025年8月23日
-
農薬の正しい使い方(46)【今さら聞けない営農情報】第312回2025年8月23日
-
イタリア旅行の穴場 ブラッチャーノ湖とアングイッラーラ【イタリア通信】2025年8月23日
-
【注意報】早植え、普通期水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 熊本県2025年8月22日
-
【役員人事】JA全中(8月21日)2025年8月22日
-
JA全中専務に秋吉亮氏が就任(8月21日付)2025年8月22日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】コメ騒動の消費者側の要因2025年8月22日
-
(449)フードセキュリティの盲点:食卓を握る冷蔵・冷凍技術【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年8月22日
-
【JA人事】JAにしたま(東京都)新組合長に中村勝司氏(6月25日)2025年8月22日
-
ジェラート「カザロ」12周年祭 特別価格や限定商品、試食も JA全農福島2025年8月22日
-
新たなブランド米「白銀のひかり」 を視察研修 岩手県JA稲作部会連絡協議会2025年8月22日
-
「福岡県産ぶなしめじ・えのきフェア」25日から開催 JA全農2025年8月22日
-
「AMAZING COFFEE」とコラボ みのるダイニング札幌で限定アイテム販売 JA全農2025年8月22日
-
なめらかな食感と濃厚な味わいのイチジク「博多とよみつひめフェア」開催 JA全農2025年8月22日
-
「もしもFES渋谷2025」に「ザブトン教授の防災教室」を出展 JA共済連2025年8月22日
-
JA兵庫南特産「志方いちじく」予約販売開始 先着20人限定で300円OFF2025年8月22日
-
銘柄米の表示管理・偽装対策のDNA検査 新たに15品種を追加 ビジョンバイオ2025年8月22日
-
エコ農産物のPR販売拠点 今秋、都心にオープン 東京都2025年8月22日
-
2025年度研修No.5「間違いだらけの環境制御」開催 千葉大学植物工場研究会2025年8月22日