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2014.06.20 
強めたいJAからの発信 文化賞シンポも盛況一覧へ

農協運動の仲間達が贈る第36回農協人文化賞記念シンポジウム
・農業と農協が復興の拠点に
・基礎組織から底力の強化へ
・希望と意欲を持つ暮らしを
・交流が知恵を、知恵が富を生む
・人間がいない農協改革論議

 「農協運動の仲間達が贈る第36回農協人文化賞」は6月16日、東京都内で今回の受賞者19人を表彰した後、受賞者をパネリストに記念シンポジウムを開いた。今年のテーマは「JAは地域の生命線 示そう農協の底力を」。政府が「農協改革」を政策課題として強調するなか、シンポジウムでは農協の使命やこれまで果たしてきた役割についての理解を改めて共有し、それぞれの地域で組合員農家はもちろん、地域住民に対しても日々の事業を通じて農協のめざす理念、役割について一層発信していく必要性が議論された。また、協同組合運動を次世代に繋ぐためのリーダーとなる組合員、職員の育成も急務であることも強調された。シンポジウムには100人が参加し会場からも活発に意見が出され議論を深めた。

JAは地域の生命線
示そう農協の底力

 

受賞者をパネリストに恒例のシンポジウム

 

◆農業と農協が復興の拠点に

 毎年、受賞者に執筆をお願いしている「色紙」には、「震災復興特別賞」の2人の受賞者は、甚大な被害から復興に向けての心境を寄せた。
 管内の水田460haが津波被害にあい、JAの18支店中11支店が流出したJAおおふなと(岩手県)の菅生新一組合長は「天は乗り越えられない試練を与えはしない」と記した。「震災後、こう思わなければやっていけないという気持ち」を表したものだという。
 地域復興の牽引役は「先代、先々代が生活の拠り所とし創りあげた農業協同組合」。JAのあらゆる事業を通じて手を差し伸べていくべきで、「長い時間がかかるが息切れしないようにがんばっていきたい」と決意を新たにした。
 JAみやぎ亘理の岩佐國男組合長の言葉は「感謝の心そして貢献」だ。東北一を誇るイチゴ産地が津波で壊滅状態になり「ショックから立ち上がれない日々」が続くなかでも、クリスマスには出荷しようと目標を立てた。努力の末、それが実現し市場に出荷されたイチゴを見て止まらなくなった涙とともに浮かんだ言葉だという。
 「16メートルの津波が襲っても、455年間培ってきた技術とやる気は流されなかった」と岩佐組合長。「まだ一歩踏み出しただけ。(管内の)200町歩を再整備し農業を復興させる」と話した。
 受賞した両組合長からはJAグループの全国的な支援への感謝が改めて述べられ、協同組合運動の意義が再確認された。しかし、その農協をめぐる環境は厳しさを増し、農を基軸にした地域にづくりへの課題は多い。

 

◆基礎組織から底力の強化へ

 課題を明らかにするためにもやはり組合員との対話が重要との指摘があった。
 JA静岡市の組合員は1万人を超える。その基礎組織は部農会と270ある集落組織。理事や総代を選出する母体だ。「協同は小さな力の積み重ね」と色紙に記した青山吉和組合長(信用事業部門受賞)はこの部農会と農協幹部との対話会を始めた。最初はJAの提供するモノやサービスへの「悪口と要望」ばかりだったが、JAは組合員自身がつくるものであることなど考え方をしっかり伝えていくと「組合員から提案も出るようになってきた」という。現在は次世代の組合員教育のために10億円目標の基金をつくることにし、その運用収益を財源に研修も行っている。
 島根県のJA斐川町は平場の水田地帯。複数の自治会単位で構成する65の生産振興地域ごとに行政と一体となった農業振興を図る体制をつくっている。JAは組合員支援のための施設の整備と利用促進で結集を図ってきた。全国的な課題である担い手への農地集積は約7割。JAと行政でつくった法人で担い手不足の農地をカバー。周藤昌夫組合長(経済事業部門受賞)は「1町1農場構想」を強調、転作は麦と大豆に全域で力を入れる。これらの実現には転作作物の商品開発など「モノづくり」、農地の白紙委任や農地の受け皿となるJA出資法人など「仕組みづくり」が次世代を育てることになるという。
 集落営農の組織化から地域農業の強化・持続を図る取り組みを強調したのは、先進地域である長野県のJA上伊那の宮下勝義元組合長だ(営農事業部門受賞)。宮下氏によるとJA上伊那として追求してきたのは「それぞれの地域の総意で地域にあった営農形態を組織化すること」だ。集落営農組織にとどめず法人化も目標としてきた。その組織の進化を支えるのがJAであり「支所機能」が重要になっていると強調した。

 

◆希望と意欲を持つ暮らしを

発言する受賞者 農業政策からも「人・農地プラン」の策定が求められている。JAいわて中央では全集落でその策定に取り組む。藤尾東泉組合長(一般文化部門受賞)は策定のため支援担当職員を全集落に張り付かせているという。農地中間管理機構事業の始動も視野に入れ、リーダーシップを発揮する。
 一方、集落営農を基礎にしながらも、若い専業者に園芸作物で経営発展してもらうことも課題としていると話したのは、JA広島北部の香川洋之助組合長(営農事業部門受賞)。管内の高卒者の農業大学校への進学を学費など支援する基金を行政とともにつくった。現在10人ほどが支援を受けて農業を学んでいるという。そのほか、JA職員に対して「1職員1作物栽培運動」を呼びかけ実践、組合員の立場に立つ姿勢を心がける。
 このような実践は、JA合併を進めるなかでも、組合員とJAがどんな場でどう向き合うかに応えようとする取り組みといえる。JA秋田ふるさとの高橋慶典組合長(経済事業部門受賞)は第26回JA全国大会決議で「支店を中心とした協同活動」を打ち出したことを重視すべきだと話した。協同活動が組織を支える人づくりだけでなく、農家の所得増にもつながっていることに改めて着目すべきだと強調した。JA秋田ふるさとでは35年以上前から女性部を中心として漬物づくりが続いているという。「6次産業化の先取りをしていたのでは、と思う」と話し、農家の手取りをいかに増やすか、その実践が問われていると話した。
 農産物の販売では地域野菜を特産品化したJA京都中央の大島正次常務(経済事業部門受賞)は
市場出荷ばかりではなく、組合員をまとめ地域の量販店などへの出荷にも力を入れていることを紹介した。

 

◆交流が知恵を、知恵が富を生む

会場から活発な意見も 大分大山町農協の矢羽田正豪組合長(営農事業部門受賞)は「生産者にはなによりも夢や希望がなければならない」と強調した。
 大分大山町農協は組合員600戸の未合併農協。矢羽田組合長は「組合員が少なくても、農家と一緒にやっていくのは大変なこと」と話す。そこで中山間地の小規模農業でもやり方次第で営農と暮らしは成り立つと、特産品や加工、直売など「ちょっと高めの目標」を組合員に示して、いち早く取り組んできた。つとに有名な地域起こしのキャッチフレーズ「桃栗植えてハワイへ行こう」については、「自分の稼ぎで海外を見て刺激を受けようということ。農協はその代金を融資、桃と栗の売り上げで返済してくれればいい。交流が生まれれば知恵が生まれる。そこから豊かさも得られる」と紹介した。
 今では住民の7割がパスポートを持っているという。海外視察は農業の新たなヒントを得ることだけが目的でない。食や音楽など、広く文化に触れようという機運が地域にあるという。
 こうした大山町ような地域づくりがある一方、全国的には農村の疲弊が進む。JA秋田ふるさとの高橋組合長は「日本の風景は同じになった」と指摘し、それは高速道路入り口に系列化された商店が並ぶような光景を指し「結局、東京など大都市圏にお金が吸い込まれる仕組みができた。これもシャッター通りの一因だろう」と話した。その状況を変えるためにも、農業の現場から運動を組み立てる必要があるのではと提起した。

 

◆人間がいない農協改革論議

nous1406200205.jpg ジャーナリストとして農業・農協を見てきた榊田みどり氏(一般文化部門受賞)は高橋組合長の指摘に呼応して、今の農政が強調する「稼ぐ農業」よりも、むしろ山形県の置賜地方などで始まっているという地域資源を可能な限り利用して食料はもちろんエネルギーなども含めた自給圏構想に注目すべきではないかという。都会にお金を吸い上げられるシステムに乗らず地域を豊かにするために地域資源を使う、JAにもその視点を、との提起だ。
 ただ、そうした地域農業・経済づくりを進めようにも、農協改革が問題であるとばかりに性急に状況が進みつつある。榊田氏も「これだけ現場を踏まえない議論に大変な危機感を覚える」と話し、元日経新聞論説委員の山地進氏(一般文化部門受賞)は「人間がいなくなった改革論」と警鐘を鳴らした。
 これに対抗するには、農業の実態とJAの地域での貢献などについてもっと発信すべきだと会場からも強調された。
 JA全中の村上光雄副会長は、JAグループとして統一広報に取り組み一定の手応えは感じているものの、地方紙をはじめとするメディアを通じて理解促進を図る必要があると話した。
 また、JAいわて花巻の高橋専太郎組合長は「アグリスクールサミット」に触れて、JAの教育文化活動に消費者の理解や関心があるとしてこれをJAの発信力につなげていくべきだとした。同様にJA上伊那の宮下元組合長も食農教育は「まさに緩効性肥料をまいているようなもの」と指摘し、消費者、とくに女性の理解を得ることが重要だと提起した。
 福祉事業部門で受賞したJAちばみどり・助け合い組織コスモスの会の伊藤照子会長は、女性たちが始めた福祉活動が今やJAの事業となっていることを紹介した。榊田氏は「食だけでなく、老い、教育など女性を土俵にして地域でJAが応えている部分が多いはず。もっと前面に出して発信を」と提起した。
 石田正昭三重大学招へい教授は「農協の歴史的使命について改めて統一して理解し運動を進める必要がある」とシンポジウムの議論をまとめたうえ、農協改革が論じられるなかで「もっとそれぞれの地域の日常的な場面でJAの姿を理解してもらうことが必要」、「そのために女性が前面に出てくる組織となるべき」などの問題提起も行った。

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