JA自己改革を完遂 JA和歌山中央会会長 中家徹氏2017年6月23日
JA全中が6月22日に開いた所信説明会で次期全中会長に立候補したJA和歌山中央会の中家徹氏の主な発言は以下のとおり。
今、農業、農村、そしてわれわれJAも厳しい試練に直面していると思う。この厳しい状況を乗り越え、将来への展望を切り開くために再度、全中会長選に立候補した。
農業者の所得増大、農業生産の拡大、そして地域の活性化の実現に向けてJAグループあげて取り組んでいる自己改革の今後の完遂に向けて取り組むが、そのためにはどうしても政府との十分な話し合いが必要だ。
そのなかで主張すべきことは主張する、また、理不尽な批判、あるいは提言、さらに自主自立の協同組合にあって不当な介入等に対しては毅然とした態度で臨む。
第一は自己改革を完遂すること。農協改革の集中推進期間は平成31年5月まで、また、准組合員の事業利用規制の検討期間が33年3月までになる。この3年間のわれわれの取り組みが本当にこれからのJAグループの浮沈を決すると言っても過言ではない状況だ。
わが国は多種多様な農業があり現場実態がある。したがって自己改革の取り組みもJAによって多様だが、JAグループの役職員が今日の危機意識を共有して総力をあげて自己改革を完遂する、このことが極めて重要である。そして組合員からJAはなくてはならない、どうしても必要な組織であるという本物の評価を得ることができれば組合員のJAへの結集が高まり、協同組合の原点に立った新たな出発ができると確信している。
そのためにもピンチをチャンスに変えて自己改革の取り組み状況を継承しながら、そして実践を加速していく。
改革の一丁目一番地は何と言っても農業者の所得増大だ。そのためには生産資材価格の引き下げなどコスト削減対策は非常に重要であり、改革プランに基づき実践していく。しかし、コスト削減も限界がある。一方では一円でも高く売り、手取りを高める販売対策が重要であり、輸出拡大、あるいは直接販売、ネット販売等の拡大を図る。これらも販売戦略として非常に大切だが、加えて国内需要の拡大対策が非常に重要ではないか。
農産物価格は需要と供給で決まる。改めて需要拡大ということだろうと思う。現在、日本人の必要食料の半分近くは輸入食料だと言われている。改めて和食の普及、米を中心とした日本型食生活を積極的にPRする。そして食料安全保障の観点からも関係機関と連携して国産農畜産物の消費拡大運動を展開し、消費者のみなさんの理解をいただきながら国内需要の拡大の取り組んでいきたい。 一方、改革を進めるにあたっては30年産の米問題、日欧EPA交渉への対応など喫緊の農政課題への対応が求められる。主食の米は30年産以降も引き続き需要に応じた生産を基本とした所得対策の確立が必要だ。
今、日欧EPA交渉がヤマ場を迎えている。とくに畜産、酪農については国内生産の拡大が可能となる国境措置の維持が不可欠である。青果については生産流通改革への適切な対応が求められる。そのため生産現場の実態をふまえ生産者の声をくみ上げながら品目ごとの特性に応じた対策を確立して、安心して農業生産に取り組める環境の整備に努める。
◆ ◆
第2は総合事業経営の仕組みを堅持し、農村地域の振興を図ることだ。政府は農協法改正のなかで営農経済事業を中心とする職能組合になること、また、農村地域の振興やそのための農村サービスについては、それを主眼として実施しないことを求めている。それが信用事業の譲渡であり代理店化であり、また准組合員の事業利用規制などとして具体的に提起されている。しかし、JAが行うすべての事業は、組合員の営農活動や暮らしを密接につながっており、総合事業のこの仕組みは何として堅持しなければならない。
われわれは先のJA大会のおいて、農協に改革が求められるなかにあっても、JA綱領に基づき、JAは食と農を基軸として地域に根ざした協同組合ということをお互いに確認した。JAは地域に根ざした協同組合として豊かで暮らしやすい地域社会の創造も大きな役割だ。
私のJAでの取り組みだが、採算が厳しい地域でも逃げ出さずにAコープやSSを維持したり、買い物難民対策として移動購買車などを導入して地域の生活インフラを支えている。地方創生が政治課題として掲げられているが、JAにはその一翼を担う大きな力がある。農村地域ではその責任もある。震災復興等での取り組みもそうだが、農村の実態に即した地域政策を提言し、行政とも連携し農村地域の振興、活性化に取り組みたい。
JAの力の源泉、最大の強みは組合員。農協改革のなかで准組合員の事業利用規制が提起されたにも関わらず、残念ながら組合員の間にその危機感を醸成するに至っていない。組合員が多様化するなかで、組合員対策、組織基盤強化対策の対応を怠った、あるいは十分な対策を講じてこなかった。
このことを真摯に反省し協同組合の原点に立ち返り、事業や活動を通じて改めて正・准すべての組合員のつながり強化に努力するとともに、准組合員制度を堅持する。あわせて協同組合の理念を理解し組合員に働きかけができ、次世代に協同組合運動を引き継ぐことができる職員を育成していく。最近、協同組合運動者という言葉がだんだん聞かれなくなっている。改めて真の協同組合運動者を育てなければならない。
◆ ◆
第3はJAグループの結集軸となる(一社)全中を構築することだ。全中は平成31年9月に一般社団法人に移行する。これをふまえ今後の都道府県中央会のあり方が検討されている。全中、県中をあわせた機能はどうあるべきか、役割分担はどうあるべきか、(一社)全中のあり方の大枠をたたき台として都道府県中のみなさんとも十分に議論し、組合員目線に立ち、組合員、JAから求められる新たな全中の姿を早期に確立していく。
この難局を乗り越えるためにはJAグループが一枚岩になって対応する必要がある。JA、県段階、全国段階の縦のパイプ、そして中央会、各連合会間の横のパイプ、この血流を良くして、しっかり連携することが重要であり、その結集軸となる全中を構築していく。
今、農協改革等によってJAグループには閉塞感が漂っているようにも感じる。この閉塞感を打破し、JAグループの将来の姿を組織協議等もふまえて提示していくことも全中の大きな役割、機能ではないか。来年度にはJA大会も控えている。次期JA大会に向けて協議を進めていきたい。
自己改革を進めるうえでも農政課題への対応を進めるうえでも広報対応が極めて重要だ。食料、農業やJAについての国民の理解を促進、正しい世論形成のために全国連と一体となった広報体制を強化する必要がある。協同組合の仲間と連携を強化し、協同組合の価値や役割などについても理解醸成に努めたい。
われわれの大先輩であり、私の恩師でもあるかつての全中会長、宮脇朝男氏は「全中会長は最前線で翻っている軍旗である」という言葉を残した。この難局に立ち向かい乗り越え、そして将来への展望を切り開くためにこの恩師の言葉をかみ締めて粉骨砕身、全力を尽くして臨んでいく。
(関連記事)
・全中会長候補が所信 自己改革を強調 (17.06.23)
・国民と共に食を守る JA東京中央会会長 須藤正敏氏 (17.06.23)
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