所得向上・生産拡大へ意思統一 営農指導で全国大会2019年2月25日
JA全中は2月21、22日の両日、東京都内で平成30年度JA営農指導実践全国大会を開いた。産地振興や技術普及等に取り組んでいる営農指導員を表彰し、その成果を広く伝えることで、JAグループが取り組んでいる「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」につなげる。事例発表では、和歌山県JA紀州の田中俊史さんが最優秀賞に、青森県JAつがる弘前の鈴木美喜子さんが審査員特別賞に選ばれた。全国のJAの営農指導員など約350人が参加した。
◆「自己研鑽」申し合わせ
 主催者のJA全中・須藤正敏副会長はあいさつで、「東京で開かれるオリンピック・パラリンピックを機会に、食品の安全・安心のほか、生産者の安全を含めたGAP認証取得、海外輸出を視野に経営指導し、いま一度、元気な農業を取り戻して欲しい」と、期待を込めた。
 主催者のJA全中・須藤正敏副会長はあいさつで、「東京で開かれるオリンピック・パラリンピックを機会に、食品の安全・安心のほか、生産者の安全を含めたGAP認証取得、海外輸出を視野に経営指導し、いま一度、元気な農業を取り戻して欲しい」と、期待を込めた。
 JA全中の肱岡弘典常務が、JAグループが取り組んでいる営農・指導事業について報告し、全国8ブロックから、8人の営農指導員が、それぞれの取り組みを発表した。
 なお大会は最後に、創造的自己改革の実践に向けた営農指導強化のための申し合わせとして、(1)県域・全国の仲間とのネットワークを通じて優れた取り組みを学び、自らの地域の取り組みに活かす、(2)最新の営農技術や経営指導に関する知識の習得に絶えず励み、常に自らの資質向上に取り組む、(3)JA自らが定めた目標の実現に向け、営農指導と経済事業の強化に全力を尽くすとともに、農業者の所得増大を支え、さらに農業生産の拡大をはかり、担い手をはじめとした組合員から高い評価を得ることを確認した。
(写真)檀上に勢揃いした事例発表者
「計算できる農業」実現
JA紀州 田中俊史さん
 最優秀賞のJA紀州、田中俊史さんは「ミニトマト日本一へ!赤糖房(あかとんぼ)・優糖星(ゆうとうせい)・王糖姫(おとひめ)の挑戦は続く~夢を描き実現へ~」で発表。JA紀州のいなみ営農販売センターの営農指導員として、ミニトマトで生産者の収入アップに取り組んだ。
 最優秀賞のJA紀州、田中俊史さんは「ミニトマト日本一へ!赤糖房(あかとんぼ)・優糖星(ゆうとうせい)・王糖姫(おとひめ)の挑戦は続く~夢を描き実現へ~」で発表。JA紀州のいなみ営農販売センターの営農指導員として、ミニトマトで生産者の収入アップに取り組んだ。
 同JAみなべいなみミニトマト部会が栽培する3種のミニトマトは商標登録のブランド品だが、生産者の高齢化、栽培意欲の低下で、販売金額は8億円で頭打ちだった。これを打開するため、販売金額10億円を設定し、品質を維持したまま収量を増やすことをめざした。
 そのため、栽培技術のばらつき、高齢化、生産意欲の低下の3つの対策に取り組んだ。営農指導員と生産者が巡回する「園地まわり」を増やし、「栽培チェック用紙」の導入などで品質の均一化を進めた。また高齢化には、いなみ地区以外にも部会員を広げたり、新規参入者を募ったりして面積を拡大した。さらに通いコンテナを導入し、出荷調整作業を70%削減した。
(写真)田中俊史さん
 栽培意欲の向上には、「ファンづくりは自ら、地元、そして全国へ」のコンセプトで、生産者家族の女性を対象にしたイチゴ料理研修会や小学校への出前授業、大手量販店とコラボの収穫体験などを行い、消費者の顔が見える関係をつくることで、生産者の「やりがい」を促した。こうした取り組みで出荷者一人あたりの販売金額は、平成20年度で約706万円、30年度は約877万円となり、約171万円の増収を見込む。
 さらに出荷期間終了後に廃棄していたミニトマトをJA紀州のブランド商品「紀州みなべ南高梅」とコラボした加工品「tomato-ume」を開発。これは平成29年で1億円の販売金額で、出荷者一人あたり15万円の増収に繋がった。
 販売価格は毎年、出荷期間中(6月30日まで)は、「赤糖房」が1kg1500円、優糖星が同1000円、王糖姫が同900円の固定価格で全量販売が可能になった。「計算ができる農業を実現した」として評価された。
リンゴと野菜で複合
JAつがる弘前・鈴木美喜子さん
 審査員特別賞のJAつがる弘前の鈴木美喜子さんは「りんごとやさいの複合を可能にしたピーマンへの取り組み~持続可能な仕組み作りをめざして~」で発表。同JAはリンゴ産地として知られるが、雇用労力の利用で壁にぶつかっていた。春からの摘果作業は雇用に頼らざるを得ないが、夏場は雇用が途切れるため、秋の収穫に必要な雇用が安定して確保できないという問題があった。
 審査員特別賞のJAつがる弘前の鈴木美喜子さんは「りんごとやさいの複合を可能にしたピーマンへの取り組み~持続可能な仕組み作りをめざして~」で発表。同JAはリンゴ産地として知られるが、雇用労力の利用で壁にぶつかっていた。春からの摘果作業は雇用に頼らざるを得ないが、夏場は雇用が途切れるため、秋の収穫に必要な雇用が安定して確保できないという問題があった。
 そこで夏も継続雇用するためピーマンを導入。初心者でも取り組み易く、リンゴ+αの収入にもつながる。選果作業が複雑で手間がかかるが、JAが重量選果機、包装機を導入して平成29年から受託事業としてフォロー。「『もいだら』『はごさへで』『もてくるだけ』」(収穫して、箱に入れて出荷するだけ)を合い言葉に栽培を呼びかけた。
(写真)鈴木美喜子さん
 作付け初年度から黒字計上することを前提に収支のシミュレーションを示し、ていねいに説明した結果、平成29年度は生産者87人が販売金額約8000万円、前年比145%の成果をあげた。約半数が新規作付け者にもかかわらず、生産者一人あたりの平均販売金額は平成29年度で92万3000円、30年度は販売金額が1億円を超え、一人あたり104万4000円と順調に推移し、夏場の安定した所得確保につなげた。
 こうしたノウハウを活かし、ニンニクの省力化のための受託事業を展開し、またトマトでも新規就農者向けのハウス施設の支援事業にも取り組んでいる。「リンゴ以外の品目は儲けにならない」という組合員、役職員の意識を変え、ピーマンでの取り組みの波及効果が出ている。
 このほかの事例発表は次の通り。(敬称略)
 ▽「地域農業の課題と向き合う(農業振興計画2016の実践)」(千葉県JA山武郡市営農振興課・石井枝里奈)。
 ▽「契約取引におけるかぼちゃの単価向上を目指して~生産者の思いに応えるために~」(石川県JA加賀営農部・山本健太)
 ▽「JA子会社が創る農業の未来」(三重県JA伊勢、(株)あぐりん伊勢・澤山和人)
 ▽「集落営農を核とした新たなキャベツ産地の育成~変化はチャンス、試練はチャンス、行動こそが未来をつくる~」(山口県JA山口宇部宇部西部営農総合センター・岡山圭喬)
 ▽「四万十から全国ブランドへ~お米戦国時代、生き残りをかけた最後の戦い~」(JA高知県営農推進課・森本英和)
 ▽「JA伊万里きゅうり部会~きゅうりが生み出す∞の可能性~」(佐賀県JA伊万里営農畜産部・松尾高広)
(関連記事)
 ・担い手につくる誇り 組合員が求める自己改革を【仲澤秀美・JA梨北常務理事】(19.01.29)
 ・【第4回営農・経済フォーラム】所得増大、生産拡大へ自己改革加速を(18.09.18)
 ・自己改革 営農指導で加速を-JA営農指導実践全国大会(平成29年度)(18.02.26)
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