キュウリの国内最大収量めざし運営開始 ゆめファーム全農SAGAが開所式2020年1月28日
JA全農が佐賀県に建設した大規模多収栽培実証施設「ゆめファーム全農SAGA」の開所式が1月24日、開かれた。佐賀市のバイオマス事業と連携し、近くの市清掃工場から出る廃熱蒸気や二酸化炭素をハウス栽培に利用する循環型農業実証施設で、JA全農では初めての試みとなる。
キュウリの大規模多収栽培実証施設の「ゆめファーム全農SAGA」の内部
JA全農は、収益アップに向けてさまざまな技術を確立、普及するための大規模な実証農場「ゆめファーム全農」を2014年から運営している。栃木県のトマトに始まり、2017年からは高知県でナスを実証。昨年12月にキュウリの実証を始めた「ゆめファーム全農SAGA」は、約1haの鉄骨ハウスで、土耕栽培と養液栽培を行う。双方の経済性や効率、普及の方法などを比較検討しながら進め、国内最大収量の10アールあたり45~50トンをめざす。
開所式にはJAや市の関係者ら約40人が出席した。
JA全農の野口栄代表理事専務は「実証結果に基づき最適な施設や多収栽培技術の標準化を進め、農家所得の向上を支援していきたい」とあいさつ。施設を見学した同市の秀島敏行市長は「想像を超える規模の大きさ。CO2を有効活用してほしい」と話した。
あいさつする野口JA全農専務
高齢化により農業従事者が減り続けるなか、供給量を維持するために生産量を拡大していくことは、全農に課せられた大きな使命。一人当たりの生産量をいかに上げるかが全体の収量アップの鍵を握っている。
その対策のひとつとして始まった「ゆめファーム全農」プロジェクトは、栽培施設の設置から栽培管理・収穫販売までのノウハウを蓄積し、それをパッケージ化して担い手に総合的に提案することをめざしている。
全農耕種総合対策部高度施設園芸推進室の吉田征司室長は、「施設園芸の分野において収量をあげながら稼げる農業を、まずは全農がしっかり実証して生産者に提案できるモデルを作っていきたい」と話す。
キュウリの実証に佐賀県を選んだ理由のひとつは、全国規模で有名なキュウリの生産者をはじめ、10アール当たりの収量40トンという記録を持つ生産者が地域に何人もいるから。こうした様々な生産者と手を携えながら実証できる環境がある。
実際、未成熟果のきゅうりは成長が速く、規格に合ったベストの長さで出荷するには、日に何度も収穫しなければならない。また、高温多湿で人間にとって過酷な栽培環境が生産者を減らしているという現実もある。
吉田室長は、「キュウリは蒸しこんで湿度を高くして栽培することが大事だといわれるが、栽培方式も日進月歩でベストな方法も変わる。最新技術を取り入れながら生産者にとってよい方法を実証していきたい」と話している。
施設内を見学する参加者
「ゆめファーム全農SAGA」では、今後の大規模化や、様々な土質で安定的に生産していくことを見据え、地域で主流の「土耕栽培」と肥料の入った水で育成する「養液栽培」の2つの栽培方式を比較実証する。
キュウリは、主幹作物であるにも関わらず、養液栽培はほとんど実績がない。土質の影響を受けない養液栽培は、安定的な管理と生産ができ、耕うんによる労働力の省力化にもつながるが、コストに見合う生産量が得られるかなどさまざまな角度から検証していく。
(関連記事)
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