子実トウモロコシ 生育順調 現地で見学会 JA古川・JA全農2022年8月8日
JA全農は2022(令和4)年度から宮城県のJA古川と協力して子実トウモロコシの大規模実証を行っており、8月4日、5月の播種見学会に続き生育状況の見学会を現地で開いた。
実証栽培は、JA古川の大豆生産組合を中心とした31経営体が計91.5haで行っている。
大半のほ場が前作は大豆で、今年トウモロコシを作付けしたほ場は次年度以降は大豆と組み合わせた輪作体系を検討する。
作型は、JA古川の基幹的な作目の水稲・大豆の作業時期が重複しないように田植え前の4月中下旬播種、田植え後の5月中下旬播種の2つの作型で取り組んでいる。
田植え前の4月20日に播種したほ場は、12週後の7月11日に出穂した。除草剤の散布はしたものの、殺虫剤、殺菌剤は散布の必要がなかったという。アサガオなど雑草が伸びているが、今後の生育や収穫に大きな影響はなさそうだという。収穫は9月上中旬を予定している。
一方、田植え後の5月23日に播種したほ場は、8月1日に出穂した。除草剤の散布はしたが、殺虫剤、殺菌剤の散布はしていない。
大崎市は7月4日に最大瞬間風速25メートルの強風となったが倒伏しなかった。しかし、16日には観測史上最大雨量となった24時間で237ミリを記録する強風雨に見舞われ、冠水と一部が倒伏した。
実際にほ場でみると倒伏というよりも、激しい雨で茎が叩き折られたように切断しているものもあった。草丈は2メートルを超す高さになっていたが出穂前で、結果的にいちばん倒れやすい時期に豪雨が襲ったということになる。一部で被害は余儀なくされたものの、10月中下旬の収穫を予定している。
実証試験の目標は10a当たり700㎏、計640tを生産する予定でJA北日本くみあい飼料で配合飼料原料として利用することにしている。
現地見学会では、農研機構東北農業研究センターの篠遠善哉研究員が子実トウモロコシの栽培のポイントなどを話した。トウモロコシは水稲のように分げつせず、基本的に1本に1雌穂。2穂目が出ることもあるが登熟しない。
栽培のポイントは、排水対策が十分なほ場の選定、前年からほ場を乾かす準備も必要だ。堆肥の投入は重要で投入量は牛糞堆肥で10a800㎏ほど。肥効は複数年あり、地力増強にもつながることから大豆との輪作に効果が期待される。
播種の深さは3cm~5cm。播種後に鎮圧することで倒伏耐性が向上するが、鎮圧は行うかどうかは土壌やほ場条件によるという。
虫害はアワノメイガやオオタバコガなど。関係者は農薬の適用拡大を働きかけている。収穫適期は立毛実水分30%以下だという。乾燥調製は水分15%以下。既存の乾燥、貯蔵施設が利用できるが、サイレージ調製して屋外に貯蔵することもできるという。
JA古川が実証試験に取り組んだのは「昨年の米価下落が影響した」と同JAの大友専務は話す。米以外の作物をどう作るか、1300haの大豆栽培をしている技術を生かし「新たな転作の柱になれば」と期待を寄せる。
子実トウモロコシの栽培は2021年産で全国992ha、生産量は6477tだった。2022年産は北海道1300ha、本州以南が600haと前年の2倍程度に拡大する見込み。
JA全農によると、種子準備から乾燥までの作業時間を試算した結果、10a当たり2.69時間となった。水稲に比べて約10分の1の作業時間となる。10a当たりの所得は少ないものの、面積当たりの労働時間が極めて少ないため、時間当たりの所得は高水準となる。JA全農の試算では、労働時間当たりの10a当たり所得は主食用米で2400円程度だが、子実トウモロコシは助成金を含めると1万9000円となる。
JA全農の小里司米穀部次長は「食料安保の観点から輸入穀物へ転作面積を拡大し生産基盤を維持する必要がある。人手不足のなか生産者の労力軽減と生産拡大を両立できる転作品目の選定と普及が急務」と強調する。
JA古川の大豆・麦・子実用トウモロコシ生産組織連絡協議会の鈴木正一会長は、播種以来、毎朝晩、ほ場を巡回してきた。出穂以降はカラスやタヌキなど獣害を防ぐためにも見回りを続け管理をと呼びかけたいという。今回n栽培については「自信がついた。面積を拡大し農家の収入を上げる取り組みにつなげたい」と話した。
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