「みどり戦略」実践へ 農業を次代につなぐ 農水省・久保牧衣子氏【全中教育部・オンラインJAアカデミー】2024年7月22日
JA全中教育部は7月18日、東京・大手町のJAビルでオンラインJAアカデミーを開いた。今年度5回計画しているアカデミーの2回目で、「新たなみどり戦略を考える」のテーマで、農水省みどりの食料システム戦略グループ長の久保牧衣子氏と、元JA全青協会長で野菜農家の飯野芳彦氏が講演した。久保氏は「みどり戦略」による全国の取り組み状況を報告し、飯野氏は、国連による世界農業遺産に認定された「落ち葉堆肥農法」の利用と農業の魅力について話した。
みどり戦略でJAに期待を述べる久保牧衣子氏
久保氏は2021(令和3)年制定の「みどりの食料システム戦略」(みどり戦略)の進捗状態を報告した。それによると、みどり戦略推進交付金を活用して資材・エネルギーの調達から生産、加工・流通、消費に至る環境負荷低減と持続的発展に向けた取り組みが生まれている。
内容は、グリーンな栽培体系への転換をサポート(41.7%)、有機農業の産地づくり推進(23.6%)、有機転換推進事業(17.5%)など、グリーン農業、有機農業に関するものが多い。
一方、地域ぐるみで環境負荷低減に取り組む「特定区域」(モデル地区)は16道県で30地区となっている。特定地域で地域ぐるみ有機農業の団地化に取り組む特定環境負荷低減事業活動に関しては2県3市で認定されている。事例として転炉スラグで土壌改良し土壌病害を抑えた長崎県央地域農業振興協議会、「コウノトリ育む農法」で無農薬米を学校給食に提供している兵庫県の豊岡市の取り組みなどを挙げた。
また、特定区域内で市町村長の認可を受け、農業者同士で有機農業のための栽培管理に関する協定を締結することができるが、令和5年に茨城県の常陸大宮市とJA常陸で全国で初めて協定を結んだ。地域ぐるみの有機農業団地づくりに挑戦している例として評価した。
このほかみどりの食料システム法に基づく生産者の認定は令和6年5月末現在で1万5690人。特にエコファーマーをJAでとりまとめグループで協定した福井県の9691人が目立つ。このようなみどり戦略に取り組むJAの取り組みに期待を込めた。
なお久保氏は、令和6年度から施行実施するクロスコンプライアンスについて説明した。農林漁業者が補助金を申請する場合、「みどりの食料システム法」の基本方針にある「農林漁業に由来する環境負荷に総合的に配慮するための基本的な取り組み」について、その実施状況を示す「チェックシート」の提出が求められることになっている。
落ち葉農法350年
農業の魅力を話す飯野芳彦氏
飯野氏は埼玉県川越市で農業を営む野菜農家の7代目。3haの畑で年2回転させ、枝豆やトウモロコシ、ニンジン、サトイモなど多品目を栽培する。地層は関東ローム層で作物のできない火山灰土だったが、江戸時代の初め、大都市である江戸の人口が増えるにつれて野菜の供給地が必要になり、およそ350年前、江戸幕府による開墾・入植がはじまった。
そのとき土づくりに使ったのが落ち葉だった。幕府によって人工的に区割りされた開墾地にはこのための雑木林がついていた。今は宅地化が進んで雑木林も減ったが、落ち葉堆肥農法は、この地域で代々引き継がれ、飯野氏ら野菜農家は、いまも秋には落ち葉を集める〝くずはき〟を行っている。
代々落ち葉堆肥を投じで土作りしてきた畑に対して飯野氏は「現在、農地から得られる富は過去の蓄積であり、現在、農地への施しは未来への蓄積だ」と、農地への思いは強い。「農地を農地として残すことが農業が産業である証(あかし)だ」という。
従って、飯野氏にとって「みどり戦略」は「地域農業の維持が目的でなければならない」。農業従事者が減るなかでAIの利用や規模拡大による効率化が話題になっているが、逆に少ない人で農業を維持するために選択するべきだとみる。
飯野氏は「先人たちは落ち葉という農村の少ない資源を最大限活用するすべを協同・共同・協同・協働・共働によって維持し、さまざまな課題を解決してきた」と先人の知恵を評価。その上で「みどり戦略はこうした地域の協同活動をもっと評価し、食料・農業・農村の維持に資するものであってほしい」と注文をつけた。
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