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JAの活動:JA革命

【JA革命】第2回 めざすは窮極の地産地消 食と農のルネッサンス2014年7月2日

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・3段跳びの発展・展開
・”6面相”の直売所で
・直売所を超えた直売所
・視野は食と農・地域へ
・スタートは30坪の店舗
・各部署からの有志を糾合
・食品業者も出荷会員に
・ケーキよりイチゴ売る
・島の高齢者、安否確認も
・売れ残りはゼロ目指す

 幅広い事業を展開するJAの中で、いま、農産物直売所は最大の成長部門だ。直売所は農家の経済的利益だけではなく、消費者を含めた地域の人々にも欠かせないライフラインの機能を果たしている。愛媛県JAおちいまばりの「さいさいきて屋」は、日本で最大規模のそうした直売所である。高齢化が進んだ中山間地や大小の島を抱えた管内で、直売所を軸に、さまざまな工夫とアイデアで小規模の兼業や高齢者の農家の生活が成り立つ仕組みを作り上げた。同JA直販開発室の西坂文秀室長に聞いた。(前回の北海道JA浜中町に続き、谷口信和・東京農業大学教授と共に訪ねた)

◆3段跳びの発展・展開

新スタイルの直売所に挑戦する「さいさいきて屋」 人口17万人の愛媛県今治市で25億円を超える売り上げを誇る「さいさいきて屋」。ホップは1500万円の投資、30坪の壁なし店舗、出荷者94人、職員1人プラスパート3人で2000年に始まった直売所1号店。1年後の売り上げは年2億1000万円。だが、立ち退きの危機に遭遇した。
 これを02年にAコープ店の直売所2号店(89坪)への転換というステップによって乗り切ると、06年度には実出荷者782人、売り上げは7億1000万円へ。しかし、面積の制約から出荷者・出荷量の制限に逢着。この難問を07年に大規模な食と農のテーマパークへの大胆なジャンプ(直売所562坪)で切り抜けて今日に至る。その歩みは立ち止まるところを知らない。ここに直売所を通じた食と農のルネッサンスが展開する。

(写真)
新スタイルの直売所に挑戦する「さいさいきて屋」

 

◆”6面相”の直売所で

直売所に隣接した実証農園「さいさい農園」。新技術の実証と新作物、新品種の生産技術の指導に使う。 「さいさいきて屋」は6面相だ。一つ目の顔は総合的な直売所。徹底した地産地消に基づき、農産物だけでなく、畜産物、魚介類(漁協の出店)の品揃えに工夫を凝らし、ワンストップショッピングが実現されている。
 二つ目の顔は直売所と彩菜食堂、SAISAICAFE(コーヒーカフェ)との結合。後二者は直売所を支える。食堂は100%地元産と旬にこだわり、直売所出荷残品の翌日活用を実現。カフェはイチゴ・ブルーベリー等の果物が売れるようにタルトを作っている。さらに野菜や果実の出荷残品から乾燥・パウダー工房で作るパウダー・ペーストを活用した商品が溢れている。
 三つ目の顔は地域の食のセンター。小中学校への給食素材の供給(4割程度カバー)や幼稚園への給食提供を担っている。

(写真)
直売所に隣接した実証農園「さいさい農園」。新技術の実証と新作物、新品種の生産技術の指導に使う。

 

◆直売所を超えた直売所

 そして四つ目の顔は食と農の結合。直売所に隣接した新技術・新品種実証農園(519坪)は新規就農者育成、出荷農家への営農指導にも活用されるJAならではの施設。これに貸し市民農園(初・中・上級コース2052坪、ハウスまで貸し付け)、学童農園(267坪)が加わる。
 五つ目の顔は農を起点とした地域経済振興(農商工連携)。実証農園では09年から今治名産のタオル原料である綿花栽培を始め、野菜や綿の枝葉で染色したタオルマフラーの商品化にこぎつけ(2012年度グッドデザイン賞受賞)、LEEとのジーンズ共同ブランドを開発した。
 そして六つ目に、ネットスーパーによる買い物難民対策と安否確認の結合だ。タブレット端末で注文と安否確認を同時に行うシステム構築は地域社会維持の新地平である。

 

◆視野は食と農・地域へ

直売所内の残留農薬分析室。オープン方式で外から見える。 こうして、直売所は、第1に塵も積もれば山となることを実証し、小規模農家でもやれる低いハードルの地域農業振興を実現した。JAのための農家から、農家のためのJAへの脱皮が実現している。第2に、「直売所は生き物だ」という西坂文秀室長の信念に基づき、補助金に頼らず不断のリニューアルを通じた進化が達成されつつある。
 第3に、進化は生産者と消費者の両方の目線を持つことで可能となっている。トレーサビリティは生産者に売れるものを保証するが、食べられるものを求める消費者に応えるべく残留農薬検査室を設置している。第4に、以上の全てに貫かれているのは、単なるマーケティグ思想を超えた地産地消という「生き方」である。第5に、今また、窮極の地産地消実現に向け新たな取り組みが始まっている(乞うご期待)。
 こうした壮大な実験を保証しているのは、JAおちいまばりにおけるプロジェクトというボトムアップ方式の導入だ。地域社会に根ざし、職員が元気なJAには限りない未来が待ち受けている。

(写真)
直売所内の残留農薬分析室。オープン方式で外から見える。

 

高齢者でも成り立つ農業
 生・消・JAの“三方よし”

スタイルの直売所に挑戦する「さいさいきて屋」
インタビュー・西坂室長

 

JAおちいまばり直販開発室 西坂文秀 室長 谷口 最初は30坪(99平方m)の店が、いまや売上げで全国トップクラスの農産物直売所になりました。これまでの主な経過を聞かせてください。
 西坂 20数年営農販売を担当し、専業農家を相手に共選共販の仕事をしてきましたが、年々、販売額が減少しました。そのころ全国で農産物の直売所が広がっており、そこでは市場が求める規格、ロットの規制がないので、兼業農家が生き生きと出荷していました。 
 さっそく企画書を書いて提案しました。その時できた30坪ほどの小さな直売所が、今日の「さいさいきて屋」の前身です。3年で1億円の売上げを目指しましたが、なんと初年度2億円、3年で3億円を売上げがありました。

 

◆スタートは30坪の店舗

 この場所は借地で、自分たちで草刈りして駐車場をつくり、建物のペンキ塗りまでして、文字通り手作りの直売所でした。予算の1500万円はほとんどシステム開発に使いました。30分ごとに売上げデータが出荷者に送信され、代金は自動的に農協口座に振り込まれます。本人持ち込みのため仕入れ作業はなく、在庫管理も必要ありませんので事務員は不要でした。手数料は15%。これはやれると確信を持ちました。
 今は15分おきに販売データが入って、品物の動きをリアルに感じることができ、それに自分で好きな値段をつけます。ここが共選共販との違い、農家はもちろん、初めて農業をする人にも大きな刺激になります。また、共選共販は何千人もの出荷者がおり、顔が分かりません。しかし直売所は、スタート時点で90人余り、翌年の終わりには400人に増えましたが、直に農家や消費者の声を聞くことができます。
 壁もない建物でしたが、「安全・安心」に消費者が目を向けるようになりました。農家にも消費者にも、そして地域に貢献する農協にもよいという”三方良し”の関係ができたのです。
 2年後に借地の返還を求められたとき、旧エーコープ店舗を改装し、100坪ほどの店で営業を始めました。新店舗でも順調で、品物が売り場に収まらなくなりました。

(写真)
JAおちいまばり直販開発室 西坂文秀 室長


 谷口 当時、何人くらいの出荷者があったのですか。
 西坂 900人ほどです。実際に出荷するのは作っている作目が季節ごとに変わるので、常時300人ほどですが、売り場が狭いために場所取り争いの連続でした。仕方なく一人当たりコンテナ2つとか、新規入会はお断わりなどでやりくりしましたが、農家には栽培を勧めておきながら、4、5年でやめろという話はない。農業するために農協があるのに、その農協が出荷を制限する。そんなのはおかしいと考え、あらたな施設を農協へ提案しました。
 当時、売上げが8億円くらいになっていましたが、まだまだできると思っていました。農と食と教育の3本柱によって、直売所が地域における「食の番人」、「食と農のテーマパーク」の役目を果たすことでお客さんの層が広がり、高齢の出荷者だけでなく、ジェラートやショートケーキなどを製造販売することで、若いお客さんも来てくれると訴えました。
 農協からOKが出て、18億円の予算がつきました。その時こだわったのは補助事業を使わないことでした。というのも、合併前に野菜の総合集荷場をつくったとき、多目的すぎて使い勝手がわるいため変更を申請したのですが、補助事業だったため改装できなかったという苦い経験があったのです。
 売り場の配置が悪くて、われわれ職員が苦労するのは我慢できても、直売店のお客さんに不便をかけるわけにはいきません。店は生き物です。4?5年経つとリニューアルしなければなりません。お客さんに迷惑をかけると品物が売れなくなり、生産者も農協も影響を受けます。

 

◆各部署からの有志を糾合

低温倉庫も備えた精米プラントがある。2万袋を集荷し、すべて店で販売する。 谷口 その時、職員によるプロジェクトが大きな役割を果たしたと聞きますが、それはどのようなものでしたか。
 西坂 いろんな部署から職員が自主的に集まり、研究して企画書を作りました。予定地が市街化調整区域だったので、その解除に行政の協力も得ました。支店長会議、理事会、経営管理委員会でプレゼンスしました。
 最後に、経営管理委員会で説明し、「合併で農協の経営はよくなったが、支店の統廃合などで農家は不便になった。組合員のためになるなら、この夢のある企画にのってみよう」という意見が出て、一気に進みました。ただ最初の半年は順風満帆というわけにはいきませんでした。

(写真)
低温倉庫も備えた精米プラントがある。2万袋を集荷し、すべて店で販売する。

 

 谷口 それはいつごろで、原因は何ですか。
 西坂 初年度の秋でした。出荷の制限が厳しすぎたのです。地元産にこだわったため品ぞろえができませんでした。学校給食は、タマネギ、ジャガイモ、ニンジンなどが一年中そろわないとできません。
 農協としては、これから営農指導で、必要な作付体系を導入して可能な限りカバーしますが、無いものは市場や業者などから入れてでも確保する必要があります。ただ、地元産というコンセプトは大事にして、今治市で手に入らなければ愛媛県内でというようにしています。

 

◆食品業者も出荷会員に

直売所の運営は、客と農家のニーズのバランスが大事です。偏ると長続きしません。ただスーパーのようにはしないというスタンスは守ります。「この店じゃないと…」といわれ、一か所で用を足せるように、必要最小限の塩や砂糖、調味料、魚なども置いていますが、これらはすべて地元の業者です。
 それも仕入れでなく、会員として登録し、出品してもらうのです。手数料は農家会員と同じで、値付けも業者に任せます。ただ、農家会員は自由に加入できますが、業者会員はこちらから声をかけています。
 谷口 店内には、食堂やカフェがありますが、これも同じコンセプトですか。
 西坂 そうです。自前というコンセプトを大事にしています。それには、地元の人が毎日でも使ってくれる日常的な食堂が適すると考えました。
 当初、食堂運営の知識がなかったので、シェフを雇いました。以前の100坪ほどの店のときです。スタッフの教育を兼ねて総菜や弁当などをつくりましたが、オードブルとなると、シェフはどうしても冷凍の伊勢海老などを添えようとします。店にあるもので作るというコンセプトを理解してもらえず、3人のシェフに辞めてもらいました。普通の主婦は、焼き飯に肉がなければ、冷蔵庫にあるハムやソーセージなどなんでも使います。この店が冷蔵庫ですから、主婦と同じように、冷蔵庫にあるものでつくるのが我々の求める料理人です。

 

◆ケーキよりイチゴ売る

 店のケーキがテレビなどで紹介されて有名になりましたが、パティシエには、ケーキを作るのはイチゴ、イチジクを売るためだと話しています。経験がなくても料理の好きな人を雇い、ここでパティシエや調理師などの資格をとってもらっています。
 学校給食も同じです。自分の通った学校で、たまたまPTAの知り合いから話があったのですが、給食で今治産の農産物はほとんど使っていなかったため、せめてこの学校だけでもと誘いがありました。一品でも今治産でということで始まりました。
 食と農のまちづくりを宣言している市の働き掛けもあって、これが島嶼部も含め市内全部の小・中学校に広がりました。学校の栄養士は栄養を優先し、真夏にホウレンソウとか、冬にピーマンとかを使おうとするので季節感がばらばらです。そのため、月ごとに今治市でとれる野菜のリストをつくりました。
 旬の野菜を使うメリットは、[1]給食費が下がる、[2]露地物で栄養価が高い、[3]おいしいということです。地元産を使うことで自給率も上がります。このことを何度も説明し、理解してもらいました。

 

島の高齢者、安否確認も

JA職員が通勤途中に島から集めた農産物 谷口 単純に売るというだけでなく、タブレットを使い、独居の高齢者の安否確認もしているようですが。
 西坂 タブレットのディスプレイで、水を撒くと花が生長するんです。日々生長し30日で花が咲きます。タブレットの操作(水やり)をしないと、店から、「お婆ちゃん、水やりしなかったね。花が枯れるよ」と連絡を入れます。島嶼部や中山間地を中心に希望者に配布しています。当然、このタブレットで品物の注文もでき、店と1対1の通信なので、だれからの注文かが分かります。夜中12時までの注文は翌日の昼から届き、代金は口座から自動引き落としです。

(写真)
JA職員が通勤途中に島から集めた農産物


 谷口 島の生産者の集荷はどのようにしているのですか。
 西坂 「島の人のための直売所でもあるようにすること」。これが農協の経営者の注文でした。いくら離れていても、出荷の希望があれば行かなくてはなりません。運送業者からは、荷物があるかどうか分からないところの集荷はできないと、断わられました。
 ふと、農協には島から通う職員もおり、彼らを活用すれば通勤途中に集荷できるのではないかと思いつきました。そこで島で一番遠い人をパートで雇って、農協のトラックで通勤してもらい、そのまま直売所で働いてもらう仕組みにします。帰りには、注文のあった品物を配達します。いま3人が交替で1年362日、集荷と配達に従事しています。学校給食も同じようにしています。

 

売れ残りはゼロ目指す

 谷口 すばらしい発想ですね。ところで今後の課題ですが、直売所運営の最大の鍵はいかに売れ残りを減らすことだと思いますが、どのような対策を考えていますか。
 西坂 売れ残り対策として製粉や野菜のパウダー、干し芋、切干大根など、加工に力を入れています。究極は売れ残りゼロにすることですが、1割くらいは残ります。出荷農家の負担を減らすため、ゼロは無理でも5%くらいにはしたいです。そのくらいだと残量の全部を店で買い上げることができると思っています。

 

  

【概要】

seri1407020408.jpg▽事業のコンセプト・目標
 「生産と販売」「実証と技術指導」「生産者と消費者」「体験と購買」「書こうと調理」を一堂に会した地産地消型地域農業振興拠点を整備し、地産地消の推進、地域農業の振興、農業の担い手の育成、消費者理解の促進及び安全・安心な食料の安全供給を実現するとともに農家所得の向上を目的とする。

▽施設一覧     
・農産物直売所(残留農薬分析室)
・農産物乾燥      
・パウダー製造工場
・彩菜食堂
・SAISAICAFE

「さいさいきて屋」の正面

・キッチンンスタジオ(調理実習室)
・果樹実証圃
・栽培試験田
・学童農園
・貸農園(初級・中級・上級)
・会議室(地産地消研修施設)

 

(写真)
「さいさいきて屋」の正面

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