JAの活動:JAアクセラレーターがめざすもの
ドローンで「空の道」作り農業・農村を活性化 (株)トルビズオン 増本衛CEO【JAアクセラレーターがめざすこと】2020年11月13日
ドローンが当たり前に利用される社会に向け、同社は「空をシェアし空の道を作る」ことが不可欠だと強調する。同社はそのためのプラットホームを開発しJAとの連携を進める。なぜJAとの連携が重要なのか。増本CEOに聞いた。

--最初に、めざしている社会と事業の方向についてお話しください。
世界中の空に道が張り巡らされているという状態を作りたいと思っています。何のための道かといえばドローンのための道です。私は2050年にはドローンや空飛ぶ車などが当たり前のように空の道を走っている社会になっていると思っています。
今、飛行機やヘリコプターは地上300メートル以上を飛んでいますが、それよりも低いところを飛ぶドローンについては航空法では150メートル以上の上空、人家の密集地域、空港の周辺は飛行禁止です。しかし、国土交通省からの許可と承認があれば飛ばすことはできます。
問題は民法です。土地の所有者の権利は一定の上空にまで及ぶということになっていますが、ただ、民法ですから訴訟されない限り飛行させても問題になりません。
しかし、モラルの問題があります。たとえば、ドローン企業が自分の土地の上をドローンを飛ばして運搬業をしていたらどうでしょうか。騒音もありますし、墜落リスクもあります。農家の方も農作業をしている自分の畑の上をよく分からないドローンが飛び交うなどということをどう考えるでしょうか。墜落すれば農作物への被害も出ることもあり得ます。私たちはこれを「空害」と言っています。
したがって、現在はドローンを使う事業者は土地所有者の許可を取って飛行させていますが、膨大な土地所有者の許可を取るのは非常に大変です。かといって自治体がまとめてここを空の道として指定するとなれば、なぜ勝手に決めるのかと問題になる。
つまり、ドローンが整然と走る社会のためには、いかに生活者のみなさんの理解を得て共存していくかが重要です。そのためには、すべての人々に対してフェアな空を作らなければならないということです。ただ、それを法制度で規制するだけではなく事業性を持たせたうえで、しっかりと考えていこうというのが私たちの「sora:share ソラシェア」の根本的な思想です。
--それはどういう仕組みでしょうか。
ソラシェアは、土地所有者がここに登録したら、その上空の使用権をドローンのユーザー側が払い、土地所有者に報酬として還元するという仕組みです。
もちろん私たちは手数料ビジネスですから手数料をいただきますが、その手数料の一部を保険料に充てます。そしてソラシェアのルート直下の土地所有者は誰一人取りこぼさず保険に加入してもらいます。つまり、ソラシェアに登録した土地の上空にはすべて保険が適用される、という仕組みまで作りました。こうすることによって上空の利用許可にインセンティブを与えることになります。土地をソラシェアに登録すればドローンが上空を通るとETCのように自動計算をしていくらかの報酬が土地所有者に支払われるという設計です。
私たちは2016年にはこのコンセプトを発表して、その後空域取引促進システムとしてビジネスモデル特許を取得しました。保険については保険会社と専用の保険を作りました。
--事業化に向けてどのような取り組みをしていますか。
現在までに実証試験をいくつか実施し、地権者の上空を飛行したという空路利用の証明と、ドローン事業者から使用料を徴収し、そのなかから地権者に報酬を払うという仕組みを開発しています。最終的なビジョンは使い放題の空の道を多数作っていきます。機能としても配送ドローンのほか、見守りドローンや点検ドローンなどさまざまな使い道に広げていこうと思います。さらにバッテリーを交換して乗り継いでいく拠点としての「空の駅」もつくり、それを網の目のように広げる。いわば「空」対応のスマートシティをプロデュースしていくような事業をしたいと考えています。
ソラシェアはその通過空域直下の人々の空中権に配慮した仕組みですが、それ以外にも、たとえば渡り鳥が飛来するルートを遮るような設定をしてはならないと考えています。そんな空の道をつくってしまうと生態系の破壊が起こる可能性があります。ですから、既存の空のエコシステムを破壊しないような空の道をつくることが大切で、そのためには農業や林業の関係者とのコミュニケーションなしに空の道を設計することはできません。このようにSDGs的な発想で事業に取り組んでいます。
--JAとの連携で何をめざしていますか。
まずは実証試験として農産物をドローンで配送するという取り組みをします。もちろんこれだけでなくJAの組合員のみなさんは農地を所有しているわけですから、JAと連携することによって地域に空の道を作っていけるのではないかと考えています。
そうなれば、たとえば肥料の配送にしても山を越えて30分かかったものをドローンによって5分で届けることができるようになったりします。そうした物流での活用だけでなく、農薬散布や畑の栽培状態をカメラでチェックしたり、さらにさまざまな書類の受け取り、建物被害の確認などいろいろなことできるようになりますから、農業や農村での生活のさまざまな問題の解決につながります。
しかし、野放図に飛ばしていいかといえば、先ほどから強調しているようにいろいろな問題がありますから安心安全な空の道を作らなければなりません。リスクをとるJAのみなさんとともに、農業をはじめ1次産業の関係者にとって有利な空の道を作っていくのです。まさにインフラを整備するわけです。私は国土の相当部分を占める農地と山林についてJAや森林組合という組織とともに整備していくことが大事になると考えました。
そのためにまずは、JAの皆さんにとって役に立つことから始める。例えば今回佐賀県多久市で実施したように、地場の農産物を直売所からキャンプ場などに空輸するといったことを手がけました。今後は、その取り組みのエリアを拡大していきたいと考えています。JAと連携することによって、鉄道会社が沿線の都市開発をしてきたように、JAが空の道の設計を主導しインフラとして整備することを担う可能性もあると考えています。
--空に着目することが逆に農地や林地をしっかり保全し、活用していくことが大事だということにもなりますね。
空の道も乱開発になってはだめだということです。きちんと営農している人の意見を聞きながら農業や林業のみなさんにメリットがあるようなかたちで空の事業を考えていく必要があるということを強調したいです。
AIと収穫ロボットで人手不足を解決 AGRIST 高橋慶彦取締役COO
野菜の粉砕技術で廃棄ゼロめざす greenase 石川慎之祐代表取締役社長
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