JAの活動:JAアクセラレーターがめざすもの
野菜の粉砕技術で廃棄ゼロめざす greenase 石川慎之祐代表取締役社長【JAアクセラレーターがめざすもの】2020年9月16日
JAグループのさまざまな事業と、技術やアイデアを持ったスタートアップ企業などをむすびつけ社会課題の解決をめざすアグベンチャーラボは全中、全農、農林中金などが運営している。このアグベンチャーラボの中核となっているのが「JAアクセラレータープログラム」で、スタートアップ企業とJAグループが連携して事業化を促進する。今回は第2期で採択されたgreenaseの石川慎之祐代表取締役社長に同社の事業とJAグループとの連携でめざす農業の未来像について聞いた。
greenase 石川慎之祐代表取締役社長
野菜の粉砕技術を研究
--まず事業の概要から聞かせてください。
私たちが着目しているのは日本人の野菜不足です。とくに若い人たちで足りていない。1日350g、と言っていますが日本人平均は280gです。言うまでもないことですが、野菜不足となると便通が悪くなったり、肌が荒れたり免疫力も落ちます。もっと野菜を摂ることができれば、こうした問題を解決できると考えて「野菜の力でかけがえのないあなたの健康を支える」をビジョンとして活動しています。
取り組む事業は2つで、1つは野菜の力を使って個人の栄養不足を補うという「VegeMe」という製品のサービスと、もう1つは今食べている食品を少しでも健康なものに変えていく「フードリプレイスメント」のための製品をつくることです。
そもそもこうした製品化をめざしているのは、色、香り、栄養成分を残したまま、野菜を粉砕化することができる技術を大学で研究してきたからで、数年前からJA全農と共同研究もしてきました。
実際にホウレンソウを生と粉末でくらべてみるとたんぱく質、食物繊維、ビタミン類まで幅広い栄養成分を残すことができます。私たちはこれを水がなくなった野菜、野菜の新しいかたち、と言っています。
従来から野菜の粉末はありますが、それとくらべると数倍から数百倍も栄養成分を保持することが研究で明らかになりました。つまり、より野菜に近い粉末が実現したということです。
「VegeMe」のコンセプトは「あなたの野菜不足を解決します」で、人によって抱えている悩みや課題が異なりますから、その人にどういった野菜粉末を提供すればいいかを分析して提供するというサービスです。
個々人へどう最適化していくかですが、食事や仕事などの生活習慣、そして肌荒れ、疲労、便秘といった身体的不調に加えて、美味しいものを継続して摂取できるように嗜好性も考慮します。これに基づいてブロッコリーと枝豆などの粉末を混合して定期配送するという事業を考えています。
たとえば、肌荒れと疲労に効果のある栄養を含んだ野菜には、ニンジン、枝豆、トマト、カボチャなどがありますが、これらの粉末をうまくミックスして届けるということです。青汁のように飲んでもらったり、カレーライスに入れたりして食べてもらうなどを想定しています。

野菜入りパンを開発
もう1つの今の食事を健康なものに変えていく「フードリプレイスメント」の事業は、具体的には野菜の粉末を入れたパン、Salad Breadの開発です。とくに野菜不足の子どもたちが無理なく野菜を食べることができないだろうかということも考えました。共働きで忙しい家庭が増えていますが、そのなかで可能な限り手軽でもしっかりと野菜を摂ることができるようにしようというのがフードリプレイスメントの事業で考えていることです。
Salad Breadにはホウレンソウ、かぼちゃ、トマトの野菜粉末を入れています。年内発売をめざして多くの方に試食してもらいながら製品の質の向上に努めています。試食した方からは、野菜の味はしっかりしても、子どもがぱくぱく食べたとか、忙しい朝に手軽に準備ができたなどの声が寄せられています。このような事業を通じて食生活をサポートしていければと考えています。会社は2018年に設立し現在3名の社員で活動しています。
--そもそも野菜の粉砕技術の研究を始めたのはなぜですか。
出身は山形県酒田市で農業で地元に貢献できないかと考えていました。野菜の廃棄は年間200万tもあるといいますが、これがもし消費者に届けることができれば農家の収益につながるし、消費者ももっと健康になれるのではないかと考え、その解決策として5年前に研究をはじめました。
これまでの粉末技術は野菜を乾燥させてから粉末にするというものですが、私たちの技術は乾燥させながら粉末にしていくという技術です。それによって香りや栄養成分が残せるようになりました。研究を経て東京農工大の大学発ベンチャーとしてスタートしました。野菜の粉砕技術は特許を出願しています。
JAアクセラレーターに応募したのは原材料の野菜の生産、販売の分野と連携していきたいと考えたからで、実際に出荷できない野菜を私たちの事業で活用できないかということを話し合っています。もちろんそのためには私たちの製品の生産・販売を拡大し安定させなければなりません。出荷できない野菜の活用といってもコストはかかるわけですが、それでも中長期的に今まで捨てていたものを私たちが調達して消費者に届けていくという活動が検討できるようになったと思います。
--この技術や事業がめざす農業の未来をどう描いていますか。
廃棄をゼロにするということです。今までは出荷できるかどうかは収穫のときまで分かりませんでしたが、出荷できなくてもこの事業によって消費者に届けることができて農家の収益にもつながる。出荷できないものでも手間と時間をかけて農家が作っているわけですから、そこにも私たちは価値があると信じていますし、価値を持たせたいということです。それを粉という形に変えることによって消費者のもとに届き、消費者は健康になることができる。その架け橋になることが目標です。
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