JAの活動:JAアクセラレーターがめざすもの
農家や職人 生き方、こだわりを地域資源に myProduct(株) 小山翔代表取締役【JAアクセラレーターがめざすもの】2020年11月12日
地方の農業者や職人など地域の大切な宝として掘り起こし、観光客に農業などの体験プランを提供する事業を自治体とともにプランニングして地域活性化を図ろうとしているのがmyProduct社。同社が開発した産業観光プラットホーム「CFAFTRIP」の仕組みや狙いを中心に小山翔代表に聞いた。

「旅中」に着目
myProduct(株)小山翔代表取締役--事業の概要についてお話しください。
会社は2019年の6月に設立しました。私たちは自分たちのことを産業観光のプラットホームと呼び、地域の職人や農家といった地域の地場産業の活性化を目的にしています。地域に観光客が来ているなか、まだ観光には取り組んでいない職人や農家のみなさんを対象に、その仕事の面白さや歴史、文化などを産業観光としてのコンテンツに作り上げていき、それを観光客に体験してもらうというプランを作っています。
たとえば和紙の町であれば紙漉きの工場見学や障子紙染めや和綴じフォトブックを作ったり、地域に住んでいる花火師とともに一緒に線香花火を作ったり、地域の案内をしてもらうといった一人ひとりの事業者がどうしてその地域に店や工房を持ち、どんな歴史を持ち、どんな思いで取り組んでいるのかが伝わるようなストーリー性のある体験プランを作っている事業を行っています。
特徴は3つあります。
1つ目が地域とのつながりを深く持っていくということです。私たちは提携する市町村に社員を地域コーディネーターとして送り込んで、3か月から半年ほど住み地域のさまざまな事業者を回ってそのなかから産業観光の体験プランを作っています。また、動画を作るメンバーもいてSNSなどで発信しています。
2つ目の特徴が開かれたプラットホームを作るということです。コンテンツを作るだけでは販路がありませんから、オンラインで予約決済できるプラットホームを販路として開発しています。それを事業者と観光客が無償で利用できるように提供しています。これが「CRAFTRIP」サービスで、たとえば、先ほどの線香花火づくり体験を3000円で企画すると、利用者は3000円で買い、それがそのまま事業者に入るということです。通常はこうしたプラットホームは手数料で課金していきますが、私たちは一切課金をしません。
3つ目の特徴は発展的な競争関係をさまざまな企業とつくっていることです。今、力を入れているのが鉄道会社で鉄道の切符と私たちの体験プランをセット販売してもらったり、クーポン発行のサイトと連携して私たちの体験プランを予約決済できるようにするなどです。こうすることで私たちが作った体験プランを利用する人をより多く地域に呼び込んでいくための「足」としていこうということです。
事業の収益は、このCRAFTRIPサービスを導入している自治体からの月額課金です。地域コーディネーターを送り込み、動画を作り、プラットホームができて実際に運用が始まってから、自治体から月額課金をいただくというかたちです。地域と共生するかたちで地域全体の産業観光をつくっていくというビジネスです。
また、ふるさと納税の運営受託もあります。私たちが作る体験型観光のコンテンツを市町村にふるさと納税の対象に認定してもらい、利用者は納税することでコンテンツを利用できるということで、す。その場合は一部の手数料をもらうようにしています。
--こうした事業を立ち上げようと考えた理由は何でしょうか。
私は農林中金の出身で日本の食や農について考える機会が多かったわけですが、その後、コンサルティング会社に移り、地方の工場なども行きました。そういうなかで日本の地場産業や地域経済の弱体化に危機感を覚え、地方創生が叫ばれていますが、自分ならどんなアプローチをするか、新しい地方創生へのアプローチを考えたいという思いがきっかけです。
具体的には旅行業界には旅前、旅中という言い方がありますが、私たちは「旅中」に着目したということです。たとえば2泊3日で軽井沢に行くことは決まっていても、真ん中の1日の予定が決まっていない。そこでその地域にある資源に着目し旅行者が参加できるプランをつくろうということです。日本はこの「旅中」が弱い。温泉旅行にしても旅館を決めて特急のチケットを購入すれば、そこから先はあまり考えません。その部分を考えてコンテンツを作っていこうというのが産業観光ということです。
本格稼動はコロナの影響でできなくなりましたので、9月からモニターイベントとして少人数の実証試験を各地地域で行っています。
地域に人を送り込む
--地域に人を送り込んで地域の資源である農業者や職人を掘り起こしていくということが、事業の始まりになっている点が大事なことだと思います。
プラットホームだけを作って終わりにせず、やはり人を送り込んで地域を知って自分たちでコンテンツを作っていかなければならないと思いました。そのなかで地域コーディネーターという考え方も出てきたわけです。
それによって2つほど発見がありました。1つは地域によって特色があるということです。地場産業がまだしっかりしている地域ではいろいろプランが作れますが、純農村では観光があまりありません。しかし、実は農業体験を産業観光にすれば旅の2日目需要に応えることができる、などです。
もう1つは地域に人を送り込むことは大切だと分かりましたが、人件費がかかりますから、人を送り込み続けられるビジネスモデルにできるかということです。それは産業観光は入口に過ぎず、本当の目的は地場産業の活性化だということです。地場産業が抱えているさまざまな問題に対して、たとえば新しい集客チャネルとしてはこのCFAFTRIPでいいと思いますが、新しい製品を企画販売するためにはクラウドファンディングしたいというニーズも地域にあります。それから和紙づくりを体験した人が、帰ってから自分で漉いた和紙で年賀状を作って欲しいということもありました。こういうニーズに一つひとつ応えていける地域商社のような役割を担っていくことの大切さも発見しました。人を送り込むと信頼関係ができますから、いろいろな困りごとを私たちに話してもらえるようになります。これは現場に行って教えられたことです。
--JAアクセラレターに応募した理由は何でしょうか。
JAグループにとって地方創生は大きな課題だと思いますが、地域の農家の方やJAで産業観光の取り組んでみたいと思うような方が手を挙げていただければという期待があります。JAとしても組合員さんへの付加価値を高める事業になると思います。
その期待もありますが、今は農協観光と協業するかたちで検討を進めています。地域に滞在する着地型観光が課題で、私たちのプラットホームを販路として利用してもらったり、一緒になって自治体にこの仕組みを提案していこうなど検討を進めているところです。
--地域の人たちのプランづくりでどんな気づきがありましたか。
たとえば、山梨県の例でいえば、寿司屋さんが一生懸命にプランづくりに加わってくれましたが、海無し県の寿司屋さんをどうPRしたらいいか、なかなか難しいなと思っていましたが、思いを聞いていくと地域に対しての愛着がすごく強い。海無し県ですが、その地域で養殖されたマスを使ったユニークな寿司や、野菜など地域の食材を使っていて、その一つひとつの生産者の思いをしっかり語ることができる方でした。地酒の酒造会社とも親しい。そうであればその寿司屋さんに行き、一緒に仕入れルートを回ることで、それぞれの生産者の思いを聞くことができるという体験プランもできるわけです。何も知らなければお寿司を味わうだけですが、そのプランを通じて発見や楽しさが生まれてくるということです。そうすると地域の人もこのようにPRすればいいのか、という気づきになります。
私たちは産業観光を軸にして人とモノ、お金が地方と都市をうまく循環するような仕組みを作りたいということです。地方へのシフトはコロナ禍もあって加速化していくと思います。一方では地方に危機感があります。そういうなかでCRAFTRIPが新しい仕組みづくりになればと考えています。
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