JAの活動:未来視座 JAトップインタビュー
「農的な暮らし」をつなぐ(2) 福岡県・JAにじ組合長 右田英訓氏【未来視座 JAトップインタビュー】2025年6月3日
福岡県うきは市や久留米市の一部を管内に持つJAにじ。野菜や果樹など地域ブランドも多い。農産物直売所では「にじの耳納(みのう)の里」が知られている。地域の現状や今後の方向などを組合長の右田英訓氏に聞いた。聞き手は文芸アナリストの大金義昭氏。
有機で生消交流にじイズム継承
福岡県・JAにじ組合長 右田英訓氏
大金 福岡県のJAグループは「男女共同参画」に熱心で、なかでもJAにじは元組合長の足立武敏さんの時代から全国でも注目されてきた先進JAです。「人づくり」にも力を注ぎ、以前は毎月夕刻に全役職員研修会を開いていました。
右田 コロナで中断してから、再開できていません。人員が減り、職員がなかなか集まれない状況もあります。これが合併に舵を切った一つの理由でもある。「働き方改革」の影響もあります!
職員が共済担当に異動すると、辞めるといった話も多かった。そこで共済推進の改善を考えるプロジェクトを立ち上げ、2022年から「サポート制度」を導入し、目標数字を廃止して、LAをサポートする職員体制をつくりました。2人で行くので「自爆」も防げる。JA職員である前に「人」として成長できれば事業も前に進むと信じ、折にふれてその話をしています。
「今だけ、金だけ、自分だけ」の"新自由主義"は最悪です! JAは「相互扶助」で互いに助け合って地域を盛り上げていく組織・事業・経営体です。JAにじの名前はなくなるかもしれませんが、「にじイズム」は引き継ぎたい。先輩や地域の皆さんに育てていただいた恩返しのつもりです。
大金 久留米市田主丸には、「右田」という姓が多いんですか?
右田 九州ではところどころに見かけます。詳しく調べたことはありませんが、毛利元就に「右田」という家臣がいたとか。山口県防府市には「右田」という地名があり、旧JAに右田支所があったとか。「中国百名山」のひとつに右田ケ岳(426メートル)という山があるとかは聞いています。
文芸アナリスト 大金義昭氏
大金 1959年生まれの右田さんは東京農業大学農学部を卒業し、帰郷して就農し、JA青年部活動に参加する。
右田 父親が早くから「観光農園」を始め、今は5ヘクタールほどの柿を生産しています。高品質の柿作りにも取り組んできました。果実すべてに通じますが、柿は1年1作で、私もベテランの一人ですが、30数回しか作ってない。1年1年が勝負で、気象も害虫も市況も変わってくる。しかし、ありがたいことに長男夫婦が後を継いでくれました。次男夫婦も東京で仲卸に勤めていたのですが、今は帰ってきてイチゴの「観光農園」に取り組んでいます。
今の私があるのは、JA青年部やその傘下にあった30歳以下のパイオニアクラブで活動したことと様々な出会いが原点になっています。多くの方々に「感謝」の気持ちでいっぱいです!
大金 お連れ合いとの出会いは?
右田 当時のJAの職員が紹介してくれました。お子さんが通っている幼稚園の先生に、「えらいステキな女性がいるから、1度会わんかい?」と。それが現在の妻です。
大金 どちらが先にお気に入りに?(笑)
主食は国がコミットを
右田 私の方ですね!(笑)。JAにじの田主丸地区青年部は、1977年に「虫追い祭り」という3年に1度の伝統芸能を復活させました。豊作祈願と同時に、役人に「虫が大変だったから」と年貢米をまけてもらう機会でもあったようです。
いろんな人から今は「米を持っとるんやろ! JAは」と言われる。「いや、米は全然ないですよ!」と答えるのですが、主食で右往左往するようなことはいかん! もっと国がコミットし、生産者も消費者も安心して作って食べられるような新しい仕組みや工夫が必要です!
世話になってきた青年部の先輩に、大熊茂成さんがいます。折にふれ背中を押してくれた畜産農家の先輩で、今は福岡県農政連のトップとして活躍しています。私が県青協委員長を務めた時には、元委員長の合屋洋一さんから「会議に出たら、黙って帰ってきてはいけん。お前の後ろには2500人の盟友がいる。その思いを必ず発言するんだ!」と言われ、それを守ってきました。
職員や後輩に伝えたいのは、「やってみせ 言って聞かせて させてみて 誉めてやらねば 人は動かじ」という旧連合艦隊司令長官・山本五十六の言葉ですね。
大金 ご両親は?
右田 おふくろは何かにつけて心配性で「大丈夫か、大丈夫か」と。親父は私が物心ついた頃から町議をし、私が30歳の時に町長を務めました。今思えば、その後ろ姿を見せてもらったことが血となり肉になりました。当時は苦労した妻も「いい経験をさせてもらった」と言ってくれます。妻の理解なしには、何もできない!(笑)
長女が佐賀海苔(のり)の養殖をしている生産者の家に嫁いでいます。
大金 ご一家そろって、一次産業でご活躍とは素晴らしい!(笑)
【インタビューを終えて】
東京・日本橋の農協協会サロンで午前9時から始めたインタビューに駆けつけ、着席するとハンカチで汗を拭い、「できるだけ歩くことにしています」と苦笑された。帰路も羽田までは地下鉄などを利用するとの由。「有言実行」が信条なのだなと感得した。
右田さんとはうれしい初対面だが、JAにじには幾度か訪ねている。春は柿若葉、夏は肥よくな田畑がむせ返るような緑に覆われ、秋は柿紅葉(もみじ)とたわわな実り。北九州の「まほろば」と自他ともに任じる耳納連山や筑後川の輝きが、右田さんの口から飛び出した「にじイズム」という言葉で鮮やかによみがえった。組合長が交代しても歴代が個性的なリーダーシップを発揮し、「協同の精神」を志高く継承してきたJAにじの歩みは尊い。合併しても、JAの「協同心」は永遠不滅である。(大金)
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