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特集:創ろう食と農 地域とくらしを

2014.08.05 
共存と協調を前面に 香川洋之助・JA広島中央会会長一覧へ

・集落法人基本に
・野菜で個別経営
・法人への支援も
・営農指導再建へ

 県土の大半が中山間地の広島県にとって、規制改革会議のいう規模拡大は机上の空論。JA広島中央会の新会長・香川洋之助氏は、「多様な農業」に農業の将来像を描く。

多様な農業こそ日本の将来

 

◆集落法人基本に

――中山間地域の多い広島県の農協中央会会長に就任し、県の農業ビジョンをどのように描いていますか。

香川洋之助・JA広島中央会会長 いま農業・農協は、これまで想像しなかった大変な状況です。このことを意識しながら取り組んでいきたい。農協改革だけがクローズアップされていますが、もとは農業改革であり、このまま高齢化していくと、3〜4年後、県の農業は成り立たなくなってしまいます。まず農業の将来の方向を示し、その上で農協はどうするべきかを考えなければなりません。
 この時、重要なことは県や市町との連携ですが、さいわい広島県ではJAグループと県・市町の行政など関係団体で構成する「元気な広島県農業戦略会議」があり、行政と連携した農業振興に努めてきました。この4月に中央会は前副知事を顧問に迎え、戦略会議の会長に就任してもらいました。農協と行政が共通の認識をもって地域の農業振興に取り組んでいく方針です。
 農業の振興は、それぞれの農協でもやっていますが、特に「新農政」で打ち出した農地流動化、耕作放棄地対策などによる構造対策は行政との連携がなくてはできません。

 

――広島県は集落営農の法人化が進んでいますが、現状はどうですか。

 現在、243の営農集落法人があります。もともと地域営農集団や機械の共同利用組織からスタートした法人で、農協はその事務局として支援していますが、耕作放棄地の管理、農地の流動化などの構造対策については、これまで農協は一歩引いた状況にありました。
 ただ、これらの集落法人は土地利用型で、4、5年後には担い手が高齢化し、交付金も減って、早晩、維持が難しくなるでしょう。いかに足腰を強くするかが大きな課題になると予想しています。
 集落法人のなかにはコミュニティ機能を中心にしたものや、コミュニティ部分を1階、担い手のオペレーター組織を2階部分にしたもの、さらにJA出資によるものなどさまざまなタイプがあります。これらが将来とも継続できるようにしなければなりませんが、まだまだ弱いところがあります。

 

◆野菜で個別経営

 農地を大規模農家にや法人に集積して、コストのかからない農業をやっていく方法もあります。それはそれでよいのですが、残りの農家はどうするか。やはり野菜や園芸などの個別経営体の担い手のことも考えなければなりません。400〜500万円とれるような農家を何戸作ることができるか。これからの地域農業の振興で問われることになると思います。
 それには新規就農を含めた若い農業者が重要です。県北のJA広島北部に14人の白ネギ栽培のグリーンカルチャーという若い農業者のグループがあります。年間9億円の売上げがあり、頑張っています。このような農業者を育てる必要があります。そしてその裾野に定年退職者や女性らによる直売所販売を中心とする小規模農業があります。産直市場が盛んなので、これを整備することで、月に5万円くらいの売上げは確保できます。
 このように法人、野菜や園芸の専業的農家、それに産直の小規模農家、JA全中は「多様な担い手」と言っていますが、まさにその通り。この3者は、それぞれ地域によってウエートが違い、中山間地域も都市地域の農協も、それぞれの地域の条件に合せ、うちはこういう農業をやりたいというビジョンづくりが必要。確かな収入があって農家が元気になり、地域も元気になるのです。
 国が進めている「人・農地プラン」がありますが、これとセットで、農協自らのビジョンをつくることが大事です。

 

◆法人への支援も

――法人化すると農協から離れていくと言う心配はありませんか。

 農協の組合長のなかには一時、法人化に反対の見方もありました。しかし法人が売り先に困っているときは農協がきちんとした販売先を見つけるなど、相手が組合員であれば、入口をオープンにしておくべきだと考えています。農協は作ったものは何でも共販で販売し、資材はすべて農協でと言うのではなく、もっと柔軟で多様な対応が必要だと思います。
 今日のように米余りになると、「JAがとってくれるだけでありがたい」という法人もあります。購買事業も同じで、ある程度の取引規模になると、流通コストが安くなるのだから、奨励金を含めて対応するべきです。いま国が言っているのはそこであって、農協もリスクを負って柔軟にやれということではないでしょうか。これを農協改革のなかで位置づけるべきだと思います。組合員として農協へ結集するという意識さえあれば、対応は柔軟であるべきです。

 

――野菜や園芸で若い担い手の個人経営に期待していますが、将来の可能性は。

頑張る若い担い手(JA広島北部のグリーンカルチャーのメンバー) 広島県内の卸売市場における県内産農産物の占有率は10%を割っています。自立できる若い専業農家を育て、県内産地をつくる余地があるのです。ただそのとき、ネックになるのは労働力の不足です。JA広島北部のグリーンカルチャーの場合も、共同集荷場の作業員不足に直面しています。都市近郊であれば、勤労者家庭の主婦などを集めることができますが、高齢者ばかりの中山間地で人が集まりません。個選に戻すと生産者の負担が大きくなって、規模を縮小せざるをえなくなります。
 また、女性や高齢者が元気になる産直にも期待していますが、それだけでは産地が育ちにくいという問題があります。きちんとした生産者の部会で、部員が切磋琢磨しながら生産・出荷するという関係も大事です。また部会の基盤があって農協の営農指導員が育ち、市場開拓に販売部門も力が入るのではないでしょうか。

(写真)
頑張る若い担い手(JA広島北部のグリーンカルチャーのメンバー)

 

◆営農指導再建へ

――これからどういう分野に力を入れていきますか。

 もう一度、農協の営農指導事業を建て直したい。特にいま、企画営農のできる指導員が必要です。県や町村の行政と連携して地域の農業ビジョンをつくり、これを実行していくための体制ができつつありますが、それを担い、旗振りのできる営農指導員が求められます。
 また職員教育も重要です。協同組合の理念を身につけると、仕事のやり甲斐も出てくるものです。職員は地域の一員であり、地域がよくなることは自分もよくなることです。この認識を持つことは、合併して広域になったいま、ますます重要になっています。
 地元の農協では、朝礼や理事会などの時、JA綱領を斉唱しています。こうした人づくり・職場づくりは、トップである組合長の姿勢次第です。きちんと方針を出して、言い続けることが大事です。

 

――政府・規制改革の「農協改革」についてどうみますか。

 まったく実態を無視した改革論には怒りさえ感じます。どのような背景からこのような改革論が出てきたのかについては、今後十分に検討しなければなりません。
 またこれまでのJAグループの事業・組織の在り方についても謙虚に見直しをしなければならないと思っています。
 ただ、農協は農民がつくったものであり、改革は自ら行うべきものです。中央会ができて60年経っており、改めることは改めなければなりません。しかし、伸びる農家を抑えているとか、護送船団方式だとか、農協の事業を否定するような主張には、組織を挙げて反論しなければなりません。世界的に協同組合組織が見直されているなか、新自由主義で突っ走る日本で、われわれは共存・協調を前面に出し、農家・組合員を守っていかなければなりません。
 今回の農協改革には農協純化論があるように思います。農協、農業は地域と住民の生活を守っています。国は農業に特化した職能的な協同組合にしろと言っていますが、中山間地域で農協がなくなると、住民は生活も何もできなくなってしまいます。

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