JAの活動:今こそ農業界の事業承継を
【JAの事業承継】畜産農家に特化して成果あげる!(JA岩手ふるさと)2018年3月2日
・明日の農業を創る「事業承継」
前沢牛といわて奥州牛で知られるJA岩手ふるさとが、本格的に事業承継に取り組み始めたのは、実は昨年からのこと。きっかけは3月の「担い手農家情報共有連絡会」で「肥育農家で事業承継の相談をしたい農家がいるが、どうしたら良いか」という相談だった。その対応について検討していくことが、事業承継に真正面から向き合うことになった。
そこで明らかになったのは、畜産農家が莫大な資産を有し、相続税や贈与税などの相談をしたいというニーズが高いことだった。そのため、平成29年度は畜産農家を中心に事業承継支援を行うこととした。そして、70歳以上のリストアップ先で農業後継者がいる担い手にヒアリングを実施。その結果、5戸の農家が税務面で相談したいことが判明した。
5戸の畜産農家のうち、ある1件の農家の事業承継の事例を紹介し、どのようなメリットが農家とJA岩手ふるさとの双方にもたらされたかを見てみよう。
紹介する畜産農家の経営者・Aさんの経営規模は108頭の肥育牛を飼育。Aさんは81歳で、後継者は直属の家族ではなく、別居している娘婿だ。
Aさんが相続に直面した際に、多大な相続税を支払った経緯があり、税務対策の重要性を強く認識していた。
生産技術や生産基盤については、現在も後継者が実質的に中心となって作業を行っていることから、その点についての承継の不安はなかった。
そうした状況を受けて、JA岩手ふるさとでは、JAいわてグループの「経営相談・管理サポート体制強化事業」を活用し、税理士による無料相談を実施し、その結論として、後継者を代表とする法人を設立し、今年の4月をメドに開業することになった。
法人化のメリットは次のようになる。
設立した法人に対して約5000万円相当の棚卸資産(肥育牛)を3500万円で売却することで1500万円の相続資産を圧縮できる(3500万円は農業近代化資金で調達)。また経営者から後継者へ暦年贈与(110万円)を行うことで、相続財産の圧縮も図れる。また役員報酬や給料制の採用で、給与所得控除を受けることができ、後継者の所得税や住民税、健康保険料が現在の経営者に比べて大幅に減少する。法人化することで次回の事業承継がスムーズに行えることなどだ。
JA岩手ふるさとにおいても、今回の事業承継の取り組みを通じて、担い手農家との信頼関係の構築ができたこと、また成功事例が生まれたことでTAC自身のモチベーションとスキル向上にもつながった。
今後について、JA岩手ふるさとでは、担い手の「声を聴く運動」や訪問活動のさらなる推進などを通して、夢や課題解決に向けた提案型の活動に力を入れる一方、今後は水稲や園芸農家への展開も視野に入れていきたいとしている。
改正農協法の施行に伴い、厳しい環境変化が予想される中にあっても「これまで以上に、TAC担当者を通じて、担い手農家とのグリップを強化して、所得増大と農業生産の拡大に貢献していく」(伊藤直飛人常務理事付)考えだ。
(関連記事)
【特集・事業承継】の関連記事は「今こそ農業界の事業承継を」をご覧ください。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日