JAの活動:食料・農業・地域の未来を拓くJA新時代
【現地ルポ】JA十和田おいらせ(青森県) 独自に種苗費助成 販売強化へ市場を調査2019年7月17日
-わがJAグループが目指すもの-
青森県のJA十和田おいらせは農業者の所得増大に向け、作付け面積を増やす農家を支援する事業とそれを受け入れる集出荷施設の整備、消費地への販売力強化などに力を入れてきた。「農家から信頼される農協、地域に存在感がある組織にしていかなければならない」と竹ヶ原幸光組合長は力を込める。

JA十和田おいらせは将来の地域農業を支える担い手育成に
力を入れナガイモ、ニンニク、ゴボウなどで「育成塾」を開講している。
写真は「ながいも育成塾」の現地講習会。地域の"達人"から技術と情熱を学ぶ。
◆種苗費助成で規模拡大
JA十和田おいらせは2008年に3JAが合併して設立し、2010年にさらに4JAが広域合併した。
青森県東部の十和田市、むつ市、おいらせ町など2市5町3村がJAのエリアで、正組合員は6500人、准組合員は5100人となっている(2019年3月末)。米はもちろん、ナガイモ、ニンニク、ゴボウ、長ネギ、トマトなどの野菜と畜産物まで多彩な品目を生産している。 竹ヶ原幸光代表理事組合長は米、麦、大豆を中心とした農業生産法人を経営、非常勤の理事から9年前、誕生間もない新生JA十和田おいらせの組合長に選任された。
就任時に考えたのは、農家所得をいかに増やすか--。農家の気持ちは「資材のコストを下げ、品質のいいものを作って高く売る」である。

そのためのJA事業として具体化させ現在も継続しているのが産地拡大対策事業である。
2012年度に導入し、ナガイモムカゴやニンニク種子、そのほかゴボウやダイコンなど地区ごとに指定した品目を対象に、増反した面積あたり種苗費を助成することで規模拡大を後押しする。竹ヶ原組合長(=写真)は「農家にとっては種子代が負担、それをいかに引き下げるかが課題」と話す。JAではこの事業に年間約2000万円の予算を当てる。
たとえばナガイモムカゴの種苗助成は2017年度に316名が利用し約6000kg分を増反した。野菜全体では5年間で作付け面積は8%増大した。同事業は継続的に実施する。
合わせて肥料・農薬・ダンボールを柱とした奨励金や、集荷対策金などで農家の経費負担の軽減を図ってきた。肥料など購買事業では供給高に応じたランク奨励金で支援する。たとえば肥料ではオリジナル肥料の開発とともに普及にも力を入れ、2017年度は1700件に対して約3600万円を還元した。集荷対策も同様に販売額に応じた奨励金を助成している。そのほか土壌診断で施肥の無駄を省きコスト低減する取り組みにも助成を行ってきている。
また、野菜などの収穫作業をJAが請け負うJA受託作業も強化してきた。産地拡大対策事業で若手農家が活気づく一方、高齢化も進み収穫作業が難しくなる農家もある。 そこで作付けから栽培までは農家自らが行うものの、収穫から施設への出荷まではJAが受託する事業を始めた。農家と話し合って計画を設定、JAは労働力を雇用し収穫から出荷までを担う。要望が増えるのに応えるためJAはダイコンとニンジンの収穫機を3年間継続して購入し農家負担の軽減にも力を入れる。
◆市場調査とPR活動
こうした生産・集荷での改革実践とともに販売力の強化にも取り組んできた。
JAでは販売担当職員を毎月首都圏などの市場に派遣し、市場調査とセールスを行っている。試食販売やテレビでの産地紹介などでPRし、量販店やホテル、外食産業など新たな販売先の開拓にもつなげてきた。
また、十和田おいらせミネラル野菜としてブランド化した「TOM-VEGE」(トム・ベジ)のトマトなどは産地での消費者サイズへのパック詰めを行って量販店の店頭に並べるなど、取引先の要望に応える品揃えで農家の手取り額アップも図っている。
また、米は「まっしぐら」を主体に卸への独自販売を実施。33万俵を集荷し品質も安定していることから、業務用需要の要望が多く、年末には売り切るという。さらなる生産と販売拡大のために、新たなカントリーエレベーターの建設も計画、精米施設までそろえた米の事業拠点づくりも行う予定だ。野菜も含めJAが集出荷施設を整備することがJAへの結集力を高め、生産拡大にもつながるとの考えだ。
来年には東北地域トップレベルのファーマーズマーケットを十和田市内にオープンする予定だ。竹ヶ原組合長は「農家の所得向上とともに、地元の消費者にも新鮮なJAのブランド野菜などを喜んでもらうことができる」と期待する。
(写真)産地で消費者サイズにパック詰め。流通改革による所得増大にも取り組む。
◇ ◇
合併当初から約10年間の取り組みで農産物販売額は野菜を中心に10億円以上増えた。2018年度は182億円でそのうち青果物が90億円。うちナガイモ20億円、ニンニク18億円、ダイコン10億円など1億円以上の品目が10品目ある。
このように農業振興を図ってきたJAは将来の担い手育成にも力を入れており2012年度に育成塾を開講した。
育成塾とは若手農業者が安定した経営ができるよう農業経営の柱となる技術の習得をめざす場だ。栽培の達人らによる技術指導と現地講習会によって地域全体の技術レベルの底上げを図ることが目的。現在までにナガイモ、ニンニク、ゴボウなど5品目で開講しており延べ120人ほどが参加した。達人からは「5年先、10年先を見据え情熱とプライドを持って仕事を」、「自分で考え行動し成功、失敗し学んで」などのアドバイス。塾生からは「何でこの時期にこの作業をするのかが、理解できた」などの声が聞かれているという。2017年度からは農業経営を学ぶマネジメントスクールも加わった。
(写真)若手農業者のための「育成塾」を開講。写真はねぎ育成塾の現地講習会
竹ヶ原組合長は「意欲を持っている30代、40代が農業で豊かになること支援していきたい。そのためにも若い人たちの意見が大事」だという。JAは昨年初めて後継者を集めた交流会を開催したところ300人も参加した。今年も引き続き開催することにしているほか、管内9支店の夏の祭りなどには若手の積極的な参加を促している。
こうした育成塾や生産組織への助成金、すでに紹介した産地拡大事業や集荷奨励金など、2012年度から取り組んできた農家支援は毎年年間2億円を超えるという。
◆組合員との話し合い重視

支店長と経済事業担当者などで農家を定期巡回する「担い手パワーアップアクション」。
年間約6000戸を訪問。
JA十和田おいらせの取り組みでは産地拡大事業など農家支援策と同時に注目されるのが農家巡回体制である。
JAでは販売額500万円以上の農家を定期巡回する「担い手パワーアップアクション」を展開してきた。大規模農家とJA未利用農家を選定し巡回する。巡回するのは各支店長と支店の経済事業担当課長や営農指導員など4~5名。メンバーは自宅に限らず畑にでも出向き、JAの要望や相談事項などを聞く。毎月の本店への実績報告はもちろん、何よりも現場でのスピード感ある対応を求めているという。たとえば信用や共済についての相談があるとなればその場で支店長が担当に電話を入れるなどを心がけている。
18年度は年間約6000戸を訪問した。こうした訪問からニンニクの植え付けと収穫機が求められることが分かり、機械購入にJAは年間1000万円を助成することを決めた。現場の声から具体的な農家支援事業が組まれている。「パワーアップ」の名前は「協同組合力(パワー)で農業所得向上!!(アップ)」というキャッチフレーズが由来だ。
一方、約7000名のすべての正組合員には全職員300名が毎月1回3~4日かけて訪問する。1人約20戸ほどを担当し広報誌を持って訪問する。不在の場合は連絡票に自分のメッセージを書き入れて配布するようしている。 こうした取り組みのうえに今回の全組合員調査を行い、准組合員からも9割近いアンケート回収率となったという。
「職員と組合員の対話がいちばん大事。農家巡回は組合員に喜ばれている」と竹ヶ原組合長。「農家の協力で農協にも体力がついてきた。これを組合員に還元していかなければなりません。農家から信頼され、地域に存在感のある組織にしていきたい」と話している。
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