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【特集:第66回JA全国女性大会】現地ルポ:農福連携 農を通じ生きがいづくり 地域活性化けん引 愛媛県西予市 「百姓百品グループ」2021年1月27日
愛媛県西予市で地域活性化に取り組む「百姓百品グループ」が注目されている。高齢農家の生きがいや、地域の障がい者に働く場を提供し農村に新しい感覚を持ち込んでいる。この中で女性スタッフは欠かせない存在で、今後の農村の活性化に期待が集まる。(取材=山藤篤愛媛大学社会共創学部講師、村田武九州大学名誉教授)
周年栽培のネギの作業所の風景
お年寄り活躍/障がい者元気に/農村に新風
生協と連携青ネギ人気
愛媛県南予、八幡浜市と宇和島市に挟まれた西予市の野村地区(旧野村町)で、「百姓百品グループ」3社が「村おこし」に頑張っている。その本格的なスタートは、野村町職員で営農指導センター長であった和氣數男氏(73)のリードで、野村公民館の村おこし対策として、町内での野菜朝市を1992(平成4)年に始め、98(平成10)年には農家140人で「百姓(ひゃくしょう)百品(ひゃっぴん)産直組合」を立ち上げたことにあった。
「百姓百品産直組合」は2005(平成17)年9月には生産者を株主とする百姓百品(株)に改組された。株式会社化したのは、農家以外の弁当や加工品の出荷者を得るためであった。2008年には、地域農家が耕作できなくなった農地を引き受けて青ネギを生産販売する「農業生産法人 株式会社 百姓百品村」が事業を開始した。さらに2015年には、障がい者に就労機会を提供する就労継続支援B型事業所(レインボーアグリ)「(株)野村福祉園」を立ち上げた。
松山の「コープえひめ」3店舗でインショップ
百姓百品(株)は4tトラックで野村地区内5カ所に毎朝6時に集荷し、野村地区中心部にある「百姓百品本店」、西予市内宇和町のスーパー(1店舗)、そして約75kmある県都松山市内にある「生協コープえひめ」の3店舗のインショップ「百姓百品コーナー」に野菜や総菜・弁当などを運んでいる。
その生産者は、ほんの少数の加工業者を除いてほとんどが野村地区の高齢農家450戸である。その6割は70歳以上、さらに3割弱は80歳以上である。
生協コープえひめの店舗は、正月元旦と2日だけが休みだから、それこそ毎日出荷できる。出荷者は1株3000円の出資(上限10株。ただし株式の保有数で議決権に差はなく、ほとんどが1株保有)と、入会金1000円、年会費2000円を支払う。出荷手数料は、百姓百品(株)が12%、生協コープえひめが10%の計22%である。生協3店舗のうちのどの店舗に出荷するかは出荷者が選択できる。生産者には「あなたの野菜がほしい」という松山市内の生協組合員がついているからである。
生協の店舗にとっても、「百姓百品」が雇った専従パート職員が消費者と接する「百姓百品コーナー」は、「四国カルストを源とする豊かな水と土壌が創(つく)りだす、野村の新鮮でおいしく安全な野菜」の売り場として来店者数を確実に増やしてくれている。「生協コープえひめ」3店舗での売り上げは2019年度では、2億2000万円になった。出荷者は5a、10aの畑で周年野菜作りに励み、年間100万円以上売り上げる出荷者は50戸を超えている。
和氣數男さん
つい最近まで代表取締役であった和氣數男さんは「野村地区の高齢農家にとっては、これはすでに空気のような存在になっており、農家の粘り強さを頼りに、うまずたゆまずやってこれたのはうれしいことだ」と語る。
農家約100戸8haで青ネギ栽培
百姓百品(株)は2008年に「農業生産法人 株式会社 百姓百品村」を立ち上げた。青ネギを周年栽培し、愛媛県内のうどんチェーン店へのカットネギ出荷、全国40カ所の卸業者に365日加工用青ネギを出荷する。
なぜ農業生産法人を立ち上げ、青ネギの栽培に取り組むことになったのか。これは農家から「耕作が無理になった農地をなんとかしてほしい」という声が高まり、なんとかしなければならないと思い立ったのがきっけである。当初はダイコンや花などいろいろやったが、周年栽培のできる青ネギ(品種は「鴨頭(こうとう)」)が良いことが分かり栽培をはじめた。
青ネギ栽培農地は、「あなたの農地を再生します。10a以上の農地を貸してください」とのちらしを地区内に配って募集した。何と150戸の農家から200カ所もの水田や畑が合計8haも集まった。安定出荷を確立するために、「全量買い取りのネギ栽培農家」も同時に募集し、11戸3haが集まった。こうして、現在では毎日1tを超える青ネギ(10kg箱100箱)を出荷し、年間売上高は1億3000万円を超えるまでになった。これはコロナ禍のなかでも、それほど減らずにすんでいる。
自信持てる働く場提供
2015年2月には就労継続支援B型事業所「レインボーアグリ」を立ち上げた。法人名は「株式会社野村福祉園」である。障がいのある人たちに、「百姓百品村」での青ネギ栽培に参加することでお日様の下で農作業をすることが大きな効果をうみ、一緒に働ける屋内での出荷調製作業も、お互いを元気づけ自立していく機会を生み出そうという取り組みである。
百姓百品グループの農村活性化モデル
現在では野村地区内外の障がい者35人が、この事業所で働いている。「百姓百品村」の青ネギ栽培と出荷調製作業の8割は、この野村福祉園が請け負っている。「百姓百品村」が野村福祉園に支払う委託作業料金は3000万円にもなる。
全国で9000カ所余りあるというB型事業所が障がい者16万人に支払っている工賃は平均月額1万4000円ほどである。ところがこの事業所では、平均4万円を超える工賃である。障がい者に対する国の年金を加えれば、ほぼ月額10万円を超える収入となる。障がい者が自分の労働でこれだけの所得を得るということは、大きな喜びであって経済的自立に大いに貢献している。
和氣礼子さん
この野村福祉園の障がい者が働いている出荷場の実質的担当者である和氣礼子さんは、「障がい者にまともな働き場を提供できていることがうれしい。かなり厳しい出荷場の8時間労働の中で障がい者と健常者が励まし合いながら、楽しく作業することで、"人は人のなかで育つ"、"健常者は障がい者のそのままの姿を認め、気持ちが通じ合う中で元気をもらっている"と感じています。ここでは外国人(ベトナム人やブータン人)も働く。このコロナ禍の中で花見や焼き肉パーティーなどの楽しみができず残念だが、将来にわたって元気で続けられる事業所にしたい」と語っている。
県外出身者がスタッフの中心
井上桃子さん
百姓百品グループ3社の正社員は現在28人(男22人・女6人)である。そのうち19人は、地元西予市外の出身で、愛媛県外出身者が4人(うち3人は女性)である。
北海道旭川市出身の井上桃子さん(35)に聞いた。井上さんは、西予市野村町の山村部・惣川で「地域おこし協力隊」として活動し、3年後に和氣さんに見込まれ、「百姓百品村」の正職員として働き、いまでは百姓百品グループに欠かせない存在となっている。
彼女は、地域の80歳を超える農家女性が病気一つせず野菜作りに励み、障がい者の励みになるような工賃を払うことで、地区における「野村福祉園」の認知度も上がり、障がい者が元気に外に出てこられることが地域の人にも元気を与えることに驚いている。「今後は、グループ間での連携の強化がますます重要だ」と語る。
和氣氏によれば「彼女を含めグループで働く職員は20、30歳代の若手であり、"古くさい農村"に新しい感覚を持ち込んでくれている」のである。

【取材を終えて】
この間ずっと百姓百品グループを追跡してきた山藤篤愛媛大学社会共創学部講師を中心に、村田武九州大学名誉教授が補佐する共同取材を行った。記録・写真撮影は椿真一愛媛大学農学部准教授である。百姓百品グループのスタートから代表取締役社長であった和氣數男氏は、昨年2020年4月の西予市議選への立候補を懇請され、見事当選した。社長職は元JAひがしうわ専務の河野真次郎氏に譲られた。河野氏と若いスタッフが「百姓百品グループ」の農村活性化モデルを今後どのように充実させていくか、大いに期待したいところである。
※和氣礼子さんの"礼"の字は正式には異体字です
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