JAの活動:2025国際協同組合年 持続可能な社会を目指して 協同組合が地球を救う「どうする?この国の進路」
【新年特集】2025国際協同組合年座談会「協同組合が築く持続可能な社会」(3) どうする?この国の進路2025年1月22日
国際協同組合年(IYC)を迎え、年間を通じて協同組合に関する多彩な催しが予定されている。現在は世界各地で紛争が続き、気候危機は「地球沸騰」(グテーレス国連事務総長)と言われるほど深刻だ。新型コロナウイルスのような感染症もまん延し、格差と貧困は広がるばかり。国連が定めた2030年までのSDGs(持続可能な開発目標)の達成も危ぶまれる。課題解決のため、国連も期待するのが協同組合。そこで、日本における協同組合の運動に長年取り組んでいる方々の座談会を企画し、この国の課題解決にどのように取り組むべきか、議論をしていただいた。
座談会参加者
日本労働者協同組合連合会理事長 古村伸宏氏
日本協同組合連携機構代表理事専務 比嘉政浩氏
日本生活協同組合連合会常務理事 二村睦子氏
司会・進行 JA全中前副会長 菅野孝志氏
日本協同組合連携機構代表理事専務 比嘉政浩氏
地域に貢献、地域を元気にする
菅野 給食や食育の取り組みは喜びの度合いが違いますね。お膳立てしすぎると喜びをそいでいるのかもしれません。協同組合を成長させていくためには、農協も生協や労協とつながり、地域に貢献して地域を変え元気にしていく。それを組合員と一緒になって進めるためには何が必要でしょうか。
古村 全国の生協でコープステーションという、共同購入と個配の中間的な取り組みがあちこちにあるそうです。
二村 宅配の受け取り拠点のことですね。その場所を単に物を渡すだけではなく、居場所とセットにするという発想で取り組まれ始めています。
古村 ワーカーズコープもある地域で生協の方々と一緒に仕掛けています。公共施設を運営している移住してきたお母さんたちの一般社団法人と、その施設にコープステーションのようなものができないか相談しています。役所からは子どもの居場所づくりが呼びかけられている。この流れの中でワーカーズコープは、町全体が児童館のような、自然体験重視の学びと遊びの事業をやりたい。これらを通じて生協の組合員が生まれ、協同組合として自己組織化し活動する。働き手もワーカーズコープに自己組織化し、組合として活動するという、組合員と組織の関係を逆転させながら地域づくりができないか。
比嘉 JAの支所も拠点の一つになっている例があります。JAも他の協同組合と地域の課題解決のために新しい仕事のやり方を作ろうと挑戦してる。こうした取り組みをもっと知らせる必要があります。
古村 ある自治体からは、廃館予定の健康福祉センターで農業体験スクールと農業法人の学校のようなものができないかと相談されています。農家の協力が必要で、地元のJAや生協の関りも組合員発で期待できる。打ち出し方の工夫から積み上げていけば面白い連携になっていきます。
参加を高める仕掛けを作る
菅野 農協の役割は、そうした活動への組合員の参画を高めることなんですね。
古村 その自治体では環境省の生物多様性保全の地域にも認定され、農家の人たちや森林組合とも協力して「小規模林業×森のようちえん」を進めています。また地元の生協とは、ケアリーバー(児童養護施設や里親などの経験者)の支援を内閣府の休眠預金も使ってチャレンジしています。最近もクラウドファンディングで頑張ってお金を集めました。
比嘉 あるJAが子ども食堂に貯金金利の一部を寄付する仕組みを作っています。組合員がその貯金を選べば、金利の一部を子ども食堂に寄付できる。素晴らしい実践ですが、その金利相当はJAが負担している。組合員の参加がもっとあってよいのではないか。大きな震災での生協の募金の主体は組合員のみなさんです。
二村 生協の組合員さんの募金への協力はすごいです。東日本大震災も10年間募金活動に取り組みました。人はお金を出したらそのことに関心を持つ。だから、被災地の様子や支援活動について報告すると読んでもらえるし、そのことでまた関心を持ち・・・とつなげていけます。寄付としてお金を出していただくとか、何かお手伝いしていただくとか、人々がかかわるための仕掛けが大切だと思います。能登半島地震でも全体で17億円ぐらいの寄付が集まりました。
比嘉 JAグループでは組合員に主体的な役割を担っていただく仕掛けは弱かった。それをどう呼び起こすかです。
二村 農業者はものすごいスキルがあると思います。道路の普請や水路を綺麗にする、道具を直す、もちろん農作業をする、などなど。農協の組合員の存在って地域のすごい財産だと思います。
比嘉 生協と違い、JAは生産行動の協同です。職業として生計が成り立つかどうかだから、真剣な意思疎通が必要になる。営農部門での新しい事業方式への切り替えはプロフェッショナル同士で行い、地域課題の仕事は他の協同組合に学んでいくべきでしょう。
古村 地域や社会の経済は、経営の集合体です。最近よく言われる「社会的連帯経済」を形成する、企業や家庭などのコミュニティの経営のあり方を考える必要があります。ワーカーズの組合員が、給料を地域経済が潤う方に使えば、社会的連帯経済に近づくのではないか。また現物交換的な人間関係が働く者同士の中にはあります。農家も市場経済の農業とは別に、自家用やおすそ分けの経済分野も持ち、これはお金に関係ない世界です。一番の野望は一定の地域で協同組合しか使えないお金を回したら、どういう動きが出るか、どういう感覚になっていくかです。
菅野 何が不足しているか見えて、仕事おこしに繋がる可能性がありますね。
古村 地域通貨が今またあちこちで起こっています。ある自治体の首長から出た構想で、若い子たちが草刈りや農作業をやって、時給に加えて現物をもらう。その方がよっぽど何のために働いているかよくわかる。中学生だと労基法に触れるので地域通貨ならいいんじゃないかと。子ども食堂も自分が食べるにふさわしい役割を感じることが大事です。強制ではなく、何らかの役割が自己肯定感につながります。
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