「農協改革」、自己改革、今思うこと4点(上) -今こそ組織あげての話し合いを、内部組織の活性化を-2016年10月23日
小池恒雄・滋賀県立大学名誉教授
「農協改革」のねらいは信共分離、総合農協の解体、協同組合の解体にある。言い方を変えて、農業所得の増大、「プロ農家」の組織たれ、職能組合になれという言い方もある。改正農協法の異様な中身は第4章「組織変更」で遺憾なくさらけ出されている。農協の発展のためにあるべき農協法と思いきや、第4章は以下にみるように、まさに「お帰りはこちら」、「出口はこちら」のお誘いである。
第1節 株式会社への組織変更(独禁法の適用除外で守られているのにそれでも生産資材を安く
供給できないのであれば株式会社になったらいかがですか)
第2節 一般社団法人への組織変更(上から締め付けの中央会である必要はないでしょう)
第3節 消費生活協同組合への組織変更(そんなに地域の活性化、地域貢献とおっしゃるならば、どうぞ生活協同組合になってください)
第4節 医療法人への組織変更(員外利用制限が邪魔だというならば、いっそのこと協同組合やめて一般法人になられたらどうですか)
本音丸出しの第4章の前には、農業所得の増大も、准組合員問題もいわばいいがかりに過ぎなかったと思われるほどである。
しかしである。改正農協法だからと言って、法治国家だからと言って、悪法もまた法なりだからといって何もただ唯々諾々と付き従うだけでいいのか。反論する言論の自由は憲法によって保障されている。政権自体が解釈改憲などということまでをやってのけようとしているのである。闘うところは闘わなければならない。どこでか、もちろん協同組合を損なわしめるような攻撃には断固として立ちはだからなければならない。
◇ ◇
問題は、2015年2月5日から8日にかけての4日間に進められた、全中の一般社団法人化かそれとも准組合員の利用制限かの理不尽な二者択一の選択を迫られて改革案を大筋で受け入れたところから始まっている。全国の各連合会をまとめきれなかった、全国のJAをまとめきれなかったという組織の弱いところを突かれた。今こそ、組合員と農協、正組合員と准組合員、単協と連合会・中央会、連合会と中央会、正組合員と認定農業者等々を分断するねらいを見抜いて、分断攻撃を越えていかなければならない。農協系統の一致団結、消費者との連携、国民的理解に向けての自己改革が求められている。
必要なのは組織あげての話し合い、そして内部組織の活性化である。このことを2つのできごとに関連づけて考えてみたい。一つは、独禁法対応をめぐってである。農林水産省は「事業利用の強制」にかこつけて「独禁法違反に関するJAへの監視を強める」意向とのことである。これに対して、改正農協法第10条「組合員は、次の事業の全部又は一部を行うことができる」の14項「組合員の経済的地位の改善のためにする団体協約の締結」でどこまで闘えるのか。
しかしこと「事業利用の強制」を生産部会員が公取に訴えたら、公取は動かざるを得ないのがこの制度の仕組みである。大騒ぎになって、新聞報道されたらそれで目的は達成されたということになる。しかしこれを農協が、「部会がやったことです」と言い逃れすることはできない。それこそ分断の思う壺である。罰則規定があるわけではないから、結末は常にうやむやで終わる。組合員との話し合うこと、組織の活性化こそが「事業利用の強制」に対応する生命線である。必要なのは運動論という側面をもっている「組織をあげての話し合い」という大運動である。他業態との競争で、組織力なくして、「裸で勝負して」戦えば必ず負けるのが協同組合である。
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