【クローズアップ:RCEP合意へ急展開】主導権は日中どちらに 重要品目除外しアジア市場開拓2020年11月12日
新たなメガ通商交渉が急展開してきた。交渉中の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が来週15日にも大筋合意することになった。詳細はこれからだが、巨大なアジア市場の扉が開くことになる。農業大国もあり注意が必要だが、米麦、乳製品、食肉など日本にとっての重要品目は除外する「現実的」な協定内容になる見通しだ。

巨大経済圏に期待
RCEPは〈アールセップ〉と読む。東アジアを中心にオセアニアまで含む巨大経済圏を包み込むメガ通商交渉だ。8年前、2012年から始まった。このメガ協定のポイントは二つ。まず米国が参加していないこと。次に中国、インドの人口大国が入っていることだ。両国で人口は約28億人を数える。つまりは、巨大な胃袋を持ち、今後の購買力の伸びしろが大きい。
インドは2025年には中国を逆転し世界一の人口となることが予測されている。同協定の土台は、タイやインドネシアなどアジア10カ国で構成する東南アジア諸国連合(ASEAN)。これに周辺の先進国などが加わり、合計16カ国で協議してきた。各国の年齢構成を見ても、日本や韓国のように少子高齢化が進む先進国、高齢化が今後大きな国家課題となる中国のような国もあるが、東南アジアやインドは若年層が多く労働力が豊富な「人口ボーナス」による一層の経済発展が見込まれる。
少子高齢化、コメ過剰、財政悪化など「課題先進国」日本にとって、自由化の進展はどう映るのか。むろん「両刃の剣」の側面は否めない。しかし、大きな需要の機会が訪れるのも事実だ。輸入農畜産物の攻勢に注視しながら、高くても高品質な日本の農畜産物や食品を売り込むチャンスも広がると見ていい。
重要品目を除外
日本の通商交渉は「4面作戦」と言われた。まずは中国抜きで日米が主導した環太平洋連携協定(TPP)。次に今回の米国抜きで日中韓印などが加わるRCEP。この二つは経済規模、人口とも世界最大級のメガ通商交渉である。さらにトランプ政権以降のTPP11なった後の日米交渉、そして欧州連合との日EU交渉だ。日本はまずTPP11、日EU、さらには日米で協定発効となった。日英経済連携協定(EPA)は現在の臨時国会で協議中だが、残る大型通商交渉のRCEPで合意する見通しとなった。11日の閣僚会合を経て、来週15日の首脳会合のテレビ会議で合意、署名する方向で最終調整に入った。
RCEPで懸念していたコメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物のいわゆる重要5品目や鶏肉・鶏肉調製品は関税削減・撤廃の対象から除外する見通し。自民党農林議員や農業団体の強い懸念を踏まえたものだ。ただ、再協議や特定の条件なども付いている可能性もあり、協定案の精査が必要となる。
TPPより低水準
RCEPは途上国が多く参加しているため、国内産業保護の観点から例外措置のあり方を巡り調整が難航してきた。日本は工業製品の関税撤廃を求める一方で、地域経済に大きな影響を与えかねない重要5品目を中心に特例措置を求めた。
注目の農林水産物の関税撤廃割合は、需要品目除外の結果、TPPやEUより低い水準に抑える。対中国では国産比率を高めようとしているタマネギなど業務・加工用野菜については関税削減・撤廃の対象から外す方向だ。
日本の影の狙いはRCEPの舞台を利用しながら、実質的な日中韓3カ国の自由貿易協定を結ぶことだ。3カ国は先の大戦と絡め戦中、戦後の複雑な歴史、国民感情を抱える。特に中韓は自動車を主力に国際競争力を持つ日本への警戒が消えなかった。大筋合意すれば、中国、韓国と結ぶ初めてのEPAとなる。日本にとっては中国14億人の胃袋の魅力は限りない。数億人の富裕層が育っており。日本の高級農畜産物の需要は強い。民間在庫200万トンに達するコメの需給改善のためにも、国産米の輸出への期待も膨らむ。むろん、検疫など非関税障壁の解消といった現実的な課題は残る。
米中貿易戦争が影
米国が参加していないRCEPの妥結へ急転直下の裏には米中貿易戦争の激化がある。中国は米国との長期戦を覚悟している。そこで米国抜きの通商協議をできるだけ早期に広げたい。日中関係も大切にしたいとの思惑もある。中国にとって日本が日米同盟を基軸とするのはやむを得ないにしても、経済交流を強め両国の一定の友好関係を保つ。それが世界2位と3位の経済規模を持つ両国の発展にもプラスになるとみる。
RCEPで日本が最も気にかけていたのは、コメと酪肉だ。特に乳製品と牛肉は構成メンバーにオーストラリア、ニュージーランドがおり注意が必要だ。NZは乳製品で世界一の国際競争力を持ち、攻勢をかけられれば国内酪農はひとたまりもない。
今回の大筋合意からは、中国の貿易攻勢を警戒するインドが外れた。当初の16カ国からすると、いわば「RCEP15」となる。だがインドは人口大国で自由と民主主義を進める重要な国だ。インド抜きRCEPはそれだけ経済効果は低下する。再参加の道を閉ざすべきではない。今後、日中で主導権争いとなるだろう。日本が率先しインドが加わる道を開き、RCEPが各国のバランスのとれた効力を発揮するよう急ぐべきだ。
重要な記事
最新の記事
-
朝令暮改と日米首脳会談【小松泰信・地方の眼力】2026年3月18日 -
出願時から「新品種」保護 育苗法案と種苗法改正案、自民党が了承2026年3月18日 -
有機農業 規模拡大意向は2割強 理由は「よりよい農産物提供」2026年3月18日 -
福岡市の(株)エムズが牛トレサ法違反 農水省が勧告2026年3月18日 -
幻の柑橘「湘南ゴールドフェア」直営飲食店舗で23日から開催 JA全農2026年3月18日 -
常温乾燥保存が可能な「匂いセンサー」培養細胞の作出に成功 農研機構2026年3月18日 -
北海道米1年分が当たる「北海道米ななつぼし 米(マイ)レージキャンペーン」開催 ホクレン2026年3月18日 -
まるごと食べても94Kcal&脂肪0「Doleキウイミックス&ヨーグルト」発売 協同乳業2026年3月18日 -
AI搭載自律稼働農業ロボット「シンロボ」開発 株式会社SYN-ROBOTICSを設立2026年3月18日 -
田んぼの生き物を網羅『新版 田んぼの生き物図鑑』刊行 山と溪谷社2026年3月18日 -
鳥インフル 米国からの生きた家きん、家きん肉等輸入を一時停止 農水省2026年3月18日 -
家庭菜園ブランド「UETE」食育栽培キット「やさいとともだち」新発売 タキイ種苗2026年3月18日 -
農水省「農山漁村振興への貢献活動に係る取組証明書」岩手銀行、NTT東日本と取得 JDSC2026年3月18日 -
農業AIスタートアップ「inaho」資本業務提携を締結 東都興業2026年3月18日 -
大豆由来たんぱく質を手軽に「サクサクたんぱく」「ごはんでたんぱく」新発売 マイセンファインフード2026年3月18日 -
生産者向け「高温障害対策セミナー」28日に開催 農機具王2026年3月18日 -
生活クラブ「ニューズウィーク日本版 SDGsアワード2025」地域課題部門賞を受賞2026年3月18日 -
秋田市と雇用対策に関する連携協定を締結 タイミー2026年3月18日 -
献立づくりと買い物から解放「3日分の時短ごはんセット」リニューアル パルシステム2026年3月18日 -
業界初FIエンジン搭載 雑草刈機「ブルモアー HRS815A 」発売 オーレック2026年3月18日


































