農業界・産業界にとって頼りになる農研機構に2018年4月6日
農研機構は4月1日付で新役員体制がスタート(別掲)したが、4月5日、初めて民間企業出身者として就任した久間和生理事長、折戸文夫理事(三菱ケミカル)、松田敦郎理事(住友化学)と中谷誠副理事長が記者会見した。
・久間新理事長が記者会見
会見では久間理事長が、三菱電機在職中に人工網膜チップや画像処理システムなどの研究開発と事業化を推進してきたなど経歴を自己紹介。そして現在の農業に関する環境を▽人口減少と超高齢化社会が進み国内市場の大幅な縮小と地方衰退の加速が懸念▽世界的には人口増加で市場は大幅に拡大▽海外での食の需要拡大が見込まれ戦略的に輸出を増やす大きなビジネスチャンスと分析。一方でICT化とデジタル化が飛躍的に進展し経験したことがない経済社会の構造変化が進行し「不確実な時代」に突入しているとしたうえで、農研機構の目標や研究課題を次のように提示した。
農研機構の目標としては、▽農業が産業として自立するには、農業経営者が自らの経営判断で営農を行い充分な利益を上げることが必須。▽ビジネスの基本は「顧客が満足する製品を、安く作り、高く買って頂くこと」。▽「顧客が満足する農産物を開発する」また「人手不足と高齢化対策、徹底的な生産性向上によるコストの削減などの課題を克服する」ためには、科学技術による解決が不可欠なので、▽国民に安全・安心・高品質な農産物・食料を安定供給すること、▽農業を強い産業として育成し、海外市場で農産物・食料のマーケツトシュアを伸ばし、政府の経済成長政策(GDP600兆円実現)に貢献することを目標として、農業・食品分野で科学技術イノベーションを創出し「農業の産業としての自立」を支えるとした。
重点的研究課題は、▽データ駆動型革新的スマート農業の創出、▽スマート育種システムの構築と民間活力活用による品種育成、▽輸出も含めたスマートフードチェーンの構築▽生物機能の活用や食のヘルスケアによる新産業の創出▽農業基盤技術(ジーンバンク、土壌などの農業環境データ)、▽先端基盤技術(人工知能、データ連携基盤、ロボット等)をあげた。
こうした課題を実現するための研究開発強化策として、▽予算や人的リソースなどの研究資源の最適配分、▽連携強化(「農業の産業化」「グローバル産業競争力の強化」の実現に向けた組織の枠や国境を越えた連携活動)、▽知的財産権と国際標準化活動の強化、▽広報活動の強化、▽人材力の強化をあげた。
これらを通じて、農研機構のあるべき姿として▽農業界や産業界にとって頼りになる農研機構▽技術と知識・知恵に立脚した存在感のある農研機構▽関係機関との連携重視の農研機構を上げた。
(写真)初めて民間企業出身者として就任した久間和生理事長
◇ ◇
初の民間企業出身の理事長と理事ということもあってか会見は、「農業はいまは大きなビジネスチャンス」、「データ駆動型革新的スマート農業の創出」や人工知能、ロボットなど「スマート農業」を強調した印象を受けた。これからの農業にとってそれも大事な課題の一つだが、生産現場の農業者にとっては、日々の栽培・生産で直面している「泥臭い」(スマートではない)課題が山積みだといえる。農研機構の各研究部門やセンターなど現場に近い研究者はそうしたニーズに応えるために努力していることを取材を通して実感している。そのことも十分に理解し配慮された運営がされることを期待したい。
(関連記事)
・民間出身の久間和生氏が理事長に 農研機構(18.04.06)
・トウモロコシ不耕起栽培の普及へ 農研機構が冊子作成(18.04.04)
・乾田直播技術マニュアルを改訂(18.04.02)
・カラス対策など動画マニュアルで紹介 農研機構(18.03.19)
・農研機構と北大が連携協定むすぶ(18.03.15)
・初の包括連携協定締結へ 農研機構と茨城県(18.03.15)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日
-
キウイブラザーズ新CM「ラクに栄養アゲリシャス」篇公開 ゼスプリ2025年4月30日
-
インドの綿農家と子どもたちを支援「PEACE BY PEACE COTTON PROJECT」に協賛 日本生協連2025年4月30日