土地利用 集落基本に新規参入の力活用も-農水省土地利用検討会2021年1月27日
農林水産省の「長期的な土地利用の在り方に関する検討会」(座長:池邊このみ千葉大園芸学研究科教授)は1月22日に第6回会合を開き、これまでの議論をふまえて検討の視点を整理し、農村の土地の利用・管理を担う人・組織や、地域の合意形成を支援する人材にどんな人が必要かなどで意見交換した。
今後の人口減少の本格化で、農業の担い手が減少し、農地集積やスマート農業の導入、新規就農を確保することがさらに求められるが、それでも維持困難な農地の発生が懸念されることから、放牧など多様な利用とそれを実施する仕組みについて議論するため検討会が昨年5月に設置された。設置は昨年3月に閣議決定された食料・農業・農村基本計画に盛り込まれている。
これまでの検討で農地を農地として有効利用するようあらゆる政策努力を払うものの、それでこれまでと同様の利用が困難な場合には▽放牧、景観作物、エネルギー作物などによる粗放的な利用、▽粗放的な利用も困難な場合は鳥獣被害対策の緩衝帯や、ビオトープとしての利用し有事の際には農業生産を行えるほう保全、▽それも困難な場合は荒廃化する前に計画的な森林への転換による有効活用の方向が打ち出されている。
こうした分類に基づいて、それぞれに必要な管理のあり方と利用・管理する主体、さらに新たな土地利用への転換にどう合意形成するか、などが論点になっている。
会合では地域の多様な住民がいかに土地利用で合意するか、そもそもその話し合いの場づくりに課題があるとの意見が出た。
広田純一岩手大名誉教授は、農地は私有地で農地法や農業委員会もあり、他者が口をはさむことは難しいが「敷居を低くして農家以外の主体が参加できるようお墨付きを与えることが必要」との意見を出した。土地を管理するには近くにいて見守る人材が必要で、農村や農業への参入規制を低くする必要があるとした。また、外部から参入するなか半農半Xのようなマルチワーキングが求められる。
安藤光義東大教授は合意形成の基本は集落だとしても、利用・管理するのは集落を横断する広域的な組織が有効ではと提起した。集落自体が自力で農地保全に取り組むとしても、継続が困難になれば広域の管理組織がサポートするほか、放牧地とするなら外部の畜産農家が管理を担うといった重層的な仕組みだ。中山間地域直接支払い交付金を活用して活動することも提起した。
山形県の置賜総合支庁の高橋信博農村計画課長は地元での実験的な取り組みを報告した。中山間地域直接支払交付金に関する集落戦略づくりに行政が積極的に関わり、話し合いを6集落同時に促進しているという。6集落が利用する大字単位のコミュニティセンターを活用し、各集落の取り組みをお互いに見守る。それをもとにいずれは集落間で助け合う戦略づくりに広がることも視野に入れているという。「最初も最後も地域単位の話し合いが必須」と話す。
一方で農地という私有財産を公的に利用することを検討することに難しさもあるとして田口太郎徳島大教授は「基礎自治体が公有化する方向も具体化する必要があるのでは」と提起した。農地を自治体が所有し、公共施設の運営に指定管理者として携わるように、地域運営組織が地域で合意して利用・管理を行っていくという考え方だ。
会合には「新しい農村政策の在り方に関する検討会」座長の小田切徳美明大教授も出席。今後の農村地域の土地利用の主体として個人や家族の半農半Xが参入できるよう「ハードルを下げることが必要」と話した。それは農地取得の下限面積だけでなく、農業技術の習得とセットになった農地取得などの支援が必要になるとした。
また、総務省の地域おこし協力隊から農業参入が多いことに着目すべきで地域内にネットワークを形成し地域住民とのつながりが生まれて、農地を任せようという住民の機運につながっていることも指摘した。
会合では地域の合意形成を支援する人材についても議論した。
新潟県阿賀野市の農業委員会の笠原尚美会長職務代理は、人・農地プランの策定や遊休農地の活用といった話し合いでは農業者以外が集まらず、「多様な人が参加できるように仕掛けていく必要がある」と指摘したうえで、地域に定着しようと努力してきた地域おこし協力隊の力は大きいことや、市町村合併前に地域に入り込んでいた市町村OBの活用を求めた。また、支援する人材にはしっかりと報酬を支払うべきとの声も多かった。
農水省はこうした検討結果をまとめて6月には人口減少に対応した人・農地に関連する施策や、農村での所得・雇用機会の確保についてなどの施策を取りまとめる。
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