小規模農家と輸出回復支援に力 FAОのウクライナ支援2022年7月11日
FAО(国連食糧農業機関)駐日連絡事務所は7月8日にウクライナの農業支援についてオンラインで記者会見を行った。
ウクライナ国内の農地の様子(FAО提供)
FAО本部のポールセン・緊急支援レジリエンス部長は、戦争の影響はウクライナを遥かに超えており、世界の食料、エネルギー、投資に影響を与えており、食料安全保障がどんどん悪化していると述べた。具体的には低所得食料不足の50か国のうち36か国が食料危機に陥っていると報告した。
ヴォティエールFAОウクライナ国別事務所代表は、ウクライナでは630万人が避難生活を余儀なくされており、とくに農村部で避難民が多いと話した。
種子や肥料など生産資材価格は45%高騰し生産者のなかには作付けを減らす意向もあるが、FAОは冬に撒く小麦の種子3000tを農家に配布して生産と農家の士気を維持したいとする。
ロシアの侵略で黒海が封鎖され毎月600万tあった穀物輸出量が、3月には32万tへ激減した。6月には陸上輸送で100万tへと回復したが、1800万tが輸出待ちの状態となっている。
戦争によるトラック運転手不足もあって国外への輸送に3週間かかり3000t~6000tが滞留している状態だという。そのため価格は高騰しているが、農家は生産量が減り収入は減少している。
こうしたなか貯蔵が問題になっており、施設の30%がすでに使用されており、これから収穫を迎えるなかで貯蔵施設がないために「収穫しない」と農家が判断することも懸念されている。そのため日本政府が援助を決めた約23億円の資金をもとに、農家に簡易倉庫などの提供を始める。
また、ルーマニア国境に近いイスマイル港からの鉄道を使った輸出も支援している。輸出に必要とされる農産物検査機関はオデッサにあるが、イスマイルと結ぶ道路は橋が破壊されるなど輸送に時間がかかるため、イスマイルに検査機関を整備することも計画している。
鉄道での輸送はヨーロッパの軌道幅が異なるため、積み替えが必要になり、それもまた時間がとられる要因となる。ただ月に100万tから200万tは輸出できるようになるのではないか、と話した。
ポールセン氏は2021年には2021年には8億2800万人が食料不安に直面したとし、コロナ禍と気候変動、さらに戦争で2023年に向け改善は見られないと指摘した。
FAОとしてウクライナイを初めアフリカや中東諸国の脆弱な農家の支援を続けていくと話した。
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