白未熟粒 全国で5割発生 23年産米 農水省温暖化レポート2024年10月1日
農林水産省は9月30日、23年産米では高温で白未熟粒が全国で5割発生したなどの内容の「令和5年地球温暖化影響調査レポート」を公表した。
2023年産米の全国1等比率は60.9%(3月末)と過去最低水準となっている。
昨年の夏は記録的な暑さで日本の平均気温(1991~2020年平均)からの差は+1.29℃と1898年の統計開始以来、2020年を抜いてもっとも高い値となった。
こうしたなか水稲の生育では出穂期以降の高温で「白未熟粒の発生」は22年産よりも多く、全国で5割程度となった。農研機構の試験によると、出穂後約20日間の平均気温が26~27℃以上で白未熟粒の発生が増えることが分かっているという。
そのほか高温と少雨で「粒の充実不足」、カメムシなどの「虫害の発生」、「胴割れ粒の発生」も全国でそれぞれ1割程度発生した。胴割れは出穂後約10日間の最高気温が32℃以上で発生が増加するという。
白未熟粒や胴割れ粒の発生を防ぐ対策としてもっとも多く実施されているのが「水管理の徹底」。ほかにも適期移植、適期収穫、肥培管理が行われている。
また、高温耐性品種の導入も行われており、2019年には主食用作付け面積に占める割合は9.9%だったが、23年産では14.7%、約18万haまで増えている。
りんごでは、着色期から収穫期の高温の影響で「着色不良・着色遅延」が全国で3割程度みられた。対策としては、着色優良品種の導入や、日焼け果発生抑制のため遮光資材の活用などが行われている。また、冬から春先にかけての高温で成熟が早まり、その後の低温で「凍霜害」の影響も報告されている。
ぶどうでは、「着色不良・着色遅延」が全国では2割程度、西日本では4割程度みられた。対策としては着色優良品種の導入や、着色を気にしなくてもいい白・黄緑系品種の導入が行われている。
温州みかんでは、高温や高温・少雨で「日焼け果」の発生が全国で3割程度みられた。一方、高温・多雨による「浮皮」、「減酸の早まり」も全国で2割程度みられた。
日焼け果軽減にために、カルシウム剤や遮光資材の活用、浮皮軽減と防止のために植物成長調整剤(ジベレリン・プロヒドジャスモン剤など)の活用などが行われている。
トマトでは、高温による「着花・着果不良」が前年より多く、全国で4割程度みられた。また、高温や強日射による裂果など「不良果」と「日焼け果」はいずれも全国で2割程度みられた。
対策としては遮光、遮熱資材の活用、換気、かん水、細霧冷房などが行われている。
畜産では乳用牛で高温による「乳量・乳成分の低下」、「繁殖成績の低下」が全国で1割程度みられた。
対策としてもっとも多いのが牛舎への送風・換気。そのほか散水・スプリンクラー、細霧冷房・ミストなども実施されている。農研機構によると、乳牛の水分蒸発量が多いのは肩と腰周辺で、この部分を冷やせると効果的だという。
ただし、導入にともなうコストが課題となっている。
そのほか温暖化対策として新たな品目の栽培も行われており、さつまいもを北海道で栽培面積が100haまで増えたほか、秋田県でも栽培実証が行われている。
農水省では気候変動による影響に対応するため「「気候変動適応計画」を作成しており、地方と連携して温暖化影響のモニタリングと適応策について発信していくことにしている。レポートは普及員など関係者が活用する資料として作成している。
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