【緊急寄稿 安倍退陣】大胆な方向転換と緊急経済対策を 政治評論家 森田実2020年8月31日
8月28日、安倍首相が辞意を表明した。自民総裁選を経て9月17日にも新首相のもと新内閣が発足する方向が検討されている。安倍政権の総括と、新政権の課題を森田実氏に寄稿してもらった。
「脱皮できない蛇は滅びる」(ニーチェ)
2018年9月20日の自民党総裁選後の記者会見(自民党本部)
脱新自由主義へ転換を
「ポスト安倍」の新政権が為すべきことは大胆な政治路線の転換と大型景気対策の断行である。
2020年の新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延は、1978年のサッチャー革命以後世界を飲み込んだ新自由主義によって弱体化した人類社会を直撃し、人類を危機的状況に落とし込んでいる。
日本も1982年に誕生した中曽根康弘内閣以後、レーガン革命に同調し、新自由主義の道を進んだ。あれから38年間、新自由主義革命に抵抗する政治家も現れたが、大勢は新自由主義の波に流された。競争至上主義と小さな政府への道は、日本社会を弱体化させた。新型コロナウイルス感染症への日本社会の抵抗力の弱さの主たる原因はここにある。
安倍政権がすすめたアベノミクス政策は新自由主義を厚化粧した政策にすぎないもので、本質は新自由主義政策だった。
安倍政権の退陣は、日本に政治に出直しの機会をもたらしている。国民と政治家はこの大チャンスを生かさなければならない。とくに自由民主党のすべての政治家に訴える―「安倍政治から脱却せよ!」と。
新内閣総理大臣が為すべきことは、「脱安倍政治、日本列島大改革による地方改造計画」と「緊急経済対策」を国民に示して、衆議院を解散し、信を問い、国民の支持を得て公約を実行することだ。
衆院選の洗礼を受けた上で、まず着手すべきは大胆な行政改革である。総理官邸と各省庁に設置されている新自由主義政策推進のための審議会等を全面的に廃止し、非新自由主義の学者、有識者中心の審議会を設置する。さらに新自由主義を推進するために任命された総理官邸の幹部官僚、各省の事務次官、審議官、局長などの幹部を解任し、非新自由主義者を登用する。一言でいえば反新自由主義革命を断行することである。もちろん、過去の新自由主義を反省する官僚は受け入れるべきである。
繰り返す。
安倍内閣総辞職は日本再生の大チャンスである。今後も安倍政治を継続するようであれば、政権交代の意味はない、日本に希望はない。
日本列島大改造計画を示せ!
新自由主義は地方軽視の政治を推進した。これは大きな過ちであった。
「国家の実力は地方に依存する」は百年前の徳富蘆花の言葉だ。新自由主義の政治は、徳富蘆花の教えに反したものだった。今こそ徳富蘆花に従う政治に復帰しなければならない。
1972年に総理大臣になった田中角栄は、大都会の過密と田舎の過疎を同時的に解決するため「日本列島改造論」を提唱したが、1973年の石油危機で起きた世界的大インフレのために挫折し、さらにその後の新自由主義革命によって退けられた。
あれから48年が過ぎたが、今こそ田中角栄の地方重視の政治思想を復活させなければならない。地方にこそ日本の未来はある。
大企業の利益をはかるだけの経済政策は百害あって一利なしである。地方経済、農業経済の発展なしに、日本の未来はない。
今こそ、地方出身の政治家は与野党の枠を超えて大同団結すべきである。「地方・農村の発展なくして日本の未来はない」との思想をもって行動を起こすべきである。
コロナ禍により人類社会は大危機に直面している。異常気象による大規模な自然災害も続発している。経済不況は深刻化し大恐慌の足跡が聴こえ始めている。「自分さえよければ思想」「自分の国さえよければ思想」の蔓延が世界の平和と安全を乱している。人心は乱れ、道義は地に落ち始めている。
人類社会はこの危機をどう乗り切るべきか?「自然にかえれ!」「農業を大切にせよ!」「地方から出直せ!」―ここに人類と日本の未来がある。
大恐慌回避のため直ちに大型第三次補正予算を!
新政権が今すぐすべきことは、第三次の大型補正予算を組み、実行することだ。安倍政権はこれを為すべきなのに着手もしなかった。安倍政権はどうかしていた。大恐慌を阻止するためには超大型補正予算が必要である。直ちに取りかかるべし。
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