農政 シリーズ詳細

シリーズ:時論的随想 ―21世紀の農政にもの申す

【梶井 功 / 東京農工大学名誉教授】

2014.10.16 
(89)「概算要求のポイント」の問題点一覧へ

・まずは獲得だが・・・
・米対策は十分か
・ほ場整備の目的を問え

 8月29日、農水省は総額2兆6541億円の2015年度農林水産予算概算要求を財務省に提出した。この"総額は予算要求できる上限額"(8・30付日本農業新聞)だそうだが、今年度予算額を14.1%、3274億円上回る。

◆まずは獲得だが・・・

 “「農林水産業・地域の活力創造プラン」に基づき、農林水産業を成長産業化して、農業・農村の所得倍増を目指すとともに、美しく伝統ある農山漁村の継承と食料自給率・自給力の維持向上に向けた施策の展開”を図るための概算要求だと、“概算要求のポイント”と題した農水省資料には書かれている。
 要求額がすべて通るということはまずあり得ないが、要求がすべて通ったとして、この予算で“美しく伝統ある農山漁村の継承”、“食料自給率・自給力の維持向上”ができるだろうか。
 「農林水産業・地域の活力創造プラン」に基づく最初の予算とて、前年度予算を3017億円上回る2兆6093億円を要求した昨年の概算要求でも、決まったのは2兆3267億円だった。来年度予算は、この程度の実現率にならないように頑張ることを、西川新農水相や与党の先生方に期待したいところだ。

 

◆米対策は十分か

 予算額は公共事業費と非公共事業費に分かれるが、公共が25年度予算より22.2%増の8038億円、非公共が16.9%増の1兆8503億円となっている。公共で増えたのは一般公共事業費であり、22.9%増の7846億円になっている。災害復旧事業費は今年と変わらず193億円の要求になっている。地球温暖化の影響が強いとされる今年の集中豪雨が、今年だけではないということを考えるとき、災害復旧事業費を今年と同じにしておくことに危惧を感ずるが、14.1%増予算の中で増えなかった予算として災害復旧費以上に気になるのは、経営所得安定対策予算と水田活用の直接支払交付金予算である。
 水田活用の直接支払交付金は今年と同じ2770億2600万円だし、経営所得安定対策予算は13億6700万円増の4064億8600万円だが、この中で畑作物の直接支払い交付金(ゲタ対策)と米の直接支払交付金は今年と同じ2002億6800万円と800億2500万円である。
 この予算編成の考え方には、農民運動全国連合会が、9月18日“東京・霞ヶ関などで「米作って飯くえねぇ 9.18米価要求中央行動」を実施。150人を超える農家が政府に米価下落対策の早期実施を要請した。”(9・20付農業共済新聞)という事態に対処する考えは、何もないといっていいであろう。9月15日現在の水稲作況は101の平年並みで25万トンの過剰となる見込み、来年6月の民間在庫量予測229万トンと農水省は発表したが、これは当然ながら米価の大幅低落を予想させるし、すでに全農は9月16日時点の新米相対販売基準価格をたとえば魚沼コシヒカリで前年産直近対比で60kg当たり1300円安の1万8500円、ひとめぼれで2800円安の1万1600円と発表している。今年より50億多く積んでいるとはいえ、加入者が限られているナラシ対策では対応し切れないのではなかろうか。また、全農は“このままでは米を中心に水田農業を営む担い手・大規模農家ほど経営面での打撃が懸念される”として“15年産飼料用米の生産振興目標を60万トンにする方針を固めた”という(9・26付日本農業新聞)。今年と同額の水田活用の直接支払い交付金では、今年の3倍にもなる飼料米増産に対応できないのではないか。

 

◆ほ場整備の目的を問え

 大幅増要求となっている公共事業費の中にも気になる予算がある。農業農村整備事業で行われる農地の大区画化事業の推進予算である(農業農村整備予算のところでは、農業競争力強化対策となっている)。
 この予算で“農地中間管理機構による農地の借受け・貸付けとの連携等により、農地の大区画化・汎用化等を推進します”ということになっており、今年度予算を34.3%も上回る1429億2900万円の予算が計上されている。
 気になるのはこの予算の使われ方だが、“大区画化・汎用化等を推進します”となっているが、“農地中間管理機構による農地の借受け・貸付け等の連携等”が強調されていることからすると、いい所どりを意図している場づくりになってしまわないか、を私は危惧する。
 重要なのは“汎用化”である。
 農水省が農政審企画部会に提出した「現行の食料自給率目標等の検証[2]」という資料は、自給率50%へ向けて各作物の生産数量目標の進捗状況を示し、“目標設定の考え方”、“施策の取組状況とその効果”、“施策の妥当性”、“まとめ(目標設定の妥当性)”を各作物ごとに記している興味ある資料だが、その中に、小麦・大麦・はだか麦について
 “収穫期が梅雨で収量・品質が不安定なこと、湿田等での単収の向上等が進展していないことから、ほ場整備や営農排水技術による水田の排水性向上、収量性に優れた良質な品種普及等を図る取組が不十分”
と書かれていた。この指摘に応えることをこそ、まずやる必要がある。

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