農政:時論的随想 ―21世紀の農政にもの申す
予算案にみる「生産調整見直し」2018年1月7日
◆借金依存で最高額
97兆9138億円。昨年の12月22日閣議決定された30年度の当初予算案の金額である。前年対比0.3%増だがこれまでの最高の予算額だそうだ。歳入の主力の税収は59兆0790億が見込まれているにすぎず、歳入の34.5%は国債に依存する、という予算である。
59兆円の税収見込みにも不安がないわけではない。"続く借金依存"という大見出しでこの予算案閣議決定を報じた朝日新聞の記事によると、"税収の前提となる政府の18年度の経済成長見込みは実質1.8%と、民間予測の1.2%よりも高い。政府の見通しは実際の成長率を下回ることが少なくなく、16年度も円高などで税収が当初見込みを下回り、赤字国債を追加で発行している、想定通りに経済が成長しなければ今回も国債の追加発行に追い込まれかねない"という。
そのことは念頭に置くとして、国債依存の最高の大予算も、全部門がプラスになっているわけではないことをこの際は注意しておこう。
対前年0.3%増の予算の中で、部門別にその増減を見ると、増加のトップは医療費など「社会保障関係費」1.5%であり、ついで「防衛関係費」と「その他事項予算」の1.3%となっている。逆にこの予算増の中で対前年比マイナスになった部門を3つあげるとトップは「恩給関係費」のマイナス15%であり、ついで「エネルギー対策費」4.7%、「食料安定供給関係費」2.5%となっている。新型護衛艦建造に支出増は惜しまないが、37.58% にまで落ち込んだ食料自給率を引き上げるつもりは無いということであろうか。
◆農業予算は減額
アベノミクス財政が始まる直前の2012年当初予算を100にして、以降の当初予算の動きを一般会計総額と農林水産予算について示すと次の表のようになる。

一般会計予算は、アベノミクスに添ってか、毎年順当に増加している。が、そのなかで農林水産予算の動きは趣を異にし13年14年は一般会計予算増加率より高い増加率で増えたが、15年以降は減少になっている。
13年度14年度の予算増は"土地改良団体が自民党支持基盤になっているとの小沢判断による削減"だった農業農村整備費を中心にした予算の復活など、民主党農政の修正による増といってよかった。
が、修正復活したその年末、自民党農林水産業・地域の活力創造本部は、民主党農政の看板政策だった米の直接支払い交付金10a15000円を14~17年は半減し、18年産から廃止する、飼料用米に特別優遇措置を講じ食用米からの転換を促進するといったことを主内容とする生産調整"転換"するという"米政策の見直し"を打ち出した。この生産調整"転換"を安倍総理は生産調整"廃止"と発言、自民党農林族の先生方を困惑させたが、"転換"と言った狙いも本当のところは"廃止"にあったのかもしれない。そういう政策変更が15年以降の総予算増の中での農林予算の減となったのである。
◆転作支援は薄く...
今年度予算案は、生産調整転換政策の最後の仕上げとなる直接支払い交付金廃止が前提となる。直接支払い交付金は廃止し、生産調整への国の直接的関与をやめても、米の過剰生産が起らないようにすること、これが米政策の中心課題となる。そのための予算として組まれたのが「水田活用の直接支払い交付金」3304億円だが、閣議決定で農水省要求の満額が確保された。政策の"要となる同交付金が必要額を確保できなければ、産地に動揺が広がり、米政策改革はいきなりつまずきかねない。かねてから転作助成の削減を求めてきた財務省も、今回ばかりは、改革の成功を優先し、満額確保が決まった"のだという(17.12.22付「日本農業新聞」)。
廃止された直接支払い交付金の17年度予算総額は714億円だった。JAグループはこの廃止財源714億円を活用し、米農家の所得向上につながる代替案を新設するよう求めてきたが、結局実現しなかった。政府によると714億円の財源は、水田活用の直接支払い交付金、収入保険制度、農業農村整備事業に充てられたという"。(日本農業新聞)
収入保険制度の実施費用として19年度予算が組んでいるのは260億円だが、新設の収入保険への加入資格者は農家の中でも青色申告納税者に限られる。直接支払い交付金をもらっていた農家の多くは青色申告納税者ではないから、収入保険が代替案にはなれないとすべきだろう。また収入減少影響緩和対策交付金は19年産から生産調整への参加要件は無くなる。転作者への支援策は薄くなったとしなければならない。しかも、国は県別米生産数量の配分をやめ、生産調整の県別配分すら、民間で新たに作った農業再生推進機構にまかせるということでは生産調整はどうなることか。国会の予算審議で十分に議論してほしい。
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