水稲育苗箱に水まき感覚で 殺虫殺菌を省力化 シンジェンタが新製品2021年12月17日
シンジェンタジャパン(株)は2021年11月24日、水稲育苗箱用殺虫殺菌剤「ミネクト®ブラスター顆粒水和剤(以下、ミネクトブラスター)」(農水省登録第24473号)の適用拡大を発表した。高密度播(は)種栽培、およびイネツトムシ、フタオビコヤガ、もみ枯細菌病、内頴褐変病の防除に使えることになった。ミネクトブラスターは2021年の1月に農薬登録され、3月に上市した薬剤で、水まき感覚で防除できる。適用範囲の拡大で一層の省力・効率的な処理が可能になり、特に規模の大きい稲作経営の省力化に期待できる。
ミネクトブラスターは2つの有効成分シアントラニリプロール(殺虫剤)とイソチアニル(殺菌剤)組み合わせた薬剤。播種時(高密度播種栽培の場合は移植の10日前)から移植当日までの幅広い期間の使用が可能で、すでに所持している散布器具を使って、水まき感覚で散布できる。
水まき感覚で処理できる水稲育苗箱用殺虫殺菌剤ミネクトブラスターの散布
水稲育苗における箱施用剤は、圃(ほ)場での薬剤散布を削減できるメリットがあり、利用実績は年々増えている。技術も進歩し、各メーカーは粒剤を中心にラインアップをそろえてきたが、シンジェンタジャパン(株)は、新たに灌注処理によって、主要害虫といもち病などを防除できる殺菌殺虫剤のミネクトブラスターと主要害虫に適用がある殺虫剤ミネクト®スター顆粒水和剤(以下、ミネクトスター)を開発した。
頭上灌水装置
茨城県竜ケ崎市で160ha余りを経営する有限会社横田農場の横田修一代表取締役は「水稲栽培のための選択肢が広がる」と評価する。つまり、いもち病が発生しやすい山際などでは早生の品種を植えるなど、毎年苦労しながら品種を選んでいるが、ミネクトブラスターはいもち病のリスクを軽減できるので、作付けの自由度が広がるというわけだ。
2021年は、茨城県で近年にないほど、いもち病が多発したが、試験的に入れたミネクトブラスター散布の圃場は葉いもちの発生が抑えられ、初期成育も問題なかったという。また、大きなメリットとして「水稲栽培に伴う選択肢が増える」ことを挙げる。また、葉いもちや初期害虫が抑えられるため、これまで無人ヘリコプターで2回実施していた防除が1回でよくなった。ヘリコプター散布に必要な3人のスタッフを他の仕事に回すことができたという。
箱処理段階での省力効果も大きい。愛知県弥富市で22棟のハウスを2回転させ、年間3万5000箱の苗を育てる有限会社鍋八農産は、殺虫剤のミネクトスターを散布した。「顆粒剤を水に混ぜてハウスの頭上灌水装置のスイッチを押すだけでよい。1ハウス15~30分しかかからない。試験区では飛躍的な省力効果があった」と、同社の代表取締役の八木輝治さんは省力の効果を強調する。
さらに、同社はこれまでカメムシ防除にヘリコプター散布を実施し、葉いもちにやや弱い「あいちのかおり」の圃場では、さらにいもち病発生時にドローンによる追加防除をしていたが、来年はそうした圃場でも、殺菌効果の大きいミネクトブラスターを使ってみたいという。
ミネクトブラスター顆粒水和剤の特長
ミネクトブラスター、ミネクトスターともに潅注処理剤のため、心配されてきた散布ムラが解消でき、省力的で均一な散布が可能になる。同社は「生産コストの削減が強く
求められている飼料用米やWCS(ホールクロップサイレージ)にも対応できる(飼料用米、WCSはミネクトスターが対応)。今回の適用拡大で、戦略作目に取り組む大規模稲作経営者の規模拡大にはずみがつきそうだ」と期待を込める。
ミネクトブラスター顆粒水和剤
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