農薬:現場で役立つ農薬の基礎知識2016
土壌消毒のポイント 効率的な土壌消毒で連作障害を回避(下)2016年6月30日
◆土壌消毒剤による消毒
効果の安定性やコスト面から考えても、現在の技術で最も一般的なのが土壌消毒剤の使用による土壌消毒である。
土壌消毒剤では、長い間臭化メチルが主流であった。しかし、1992年にモントリオール議定書契約国会合においてオゾン層破壊物質に指定されたため、先進国では、検疫や土壌ウイルス防除など不可欠な用途を除いて2005年に全廃することになった。その後、不可欠用途の許可数量は減り続け、国際的に「全廃すべき」との機運が高まり、12年に土壌用の臭化メチル使用の廃止が決定され、13年に土壌消毒用の臭化メチルは、日本国内からは例外なく姿を消した。
その対策としては、指導機関等のご努力によって開発が進められた臭化メチル代替技術が普及されるようになっており、その代替技術の主流となっているのが土壌消毒剤である。
その特性や効果の範囲を別表に整理したので、それらを良く把握した上で、効率よく安全に利用願いたい。
なお、臭化メチルと同様の活性を示し期待されたヨウ化メチルは、現在では土壌用途が登録失効となり検疫用(クリおよび木材関連)に限った登録となっているのでご注意願いたい。
以下に主な成分の特性を示す。
【クロルピクリン】
商品名 クロールピクリン、ドジョウピクリンなど
揮発性の液体で、土壌に注入することで効果を発揮する。激しい刺激臭がするので、使用時は、防毒マスク、保護メガネ、ゴム手袋など保護具の着用が必須。その反面、ガス抜けが早いので、ガス抜き作業が基本的に不要なのが特徴である。
最近では、灌注機や同時マルチ機などが普及し、より安全により楽に処理できるようになっているので可能であれば利用したい。クロルピクリン剤をPVAフィルムに封入し、土壌に埋設するだけの簡単処理ができるようにしたクロピクテープやクロピク錠剤があるので適宜使用するとよい。主にフザリウム病など土壌病害に効果を発揮する。
【D―D】
商品名 D―D、DC油剤、テロン
主に、土壌センチュウに効果を発揮する。クロルピクリンに比べ、ガス抜けが悪いので、丁寧に耕起して、ガス抜き期間3~4日を確実において作付けに移る。ガス抜きが不十分だと薬害が起こるので注意が必要。
【クロルピクリン・D―D剤】
商品名 ソイリーン、
ダブルストッパー
クロルピクリンと―Dを効率的に配合し、両成分の長所を活かした製剤とすることで幅広い病害虫雑草に効果を示す。刺激臭も、有効成分単剤のものより少なくなっており、比較的扱いやすい土壌消毒剤である。D―D同様、ラベル記載どおりのガス抜き期間をきちんと取る必要がある。
【ダゾメット】
商品名 ガスタード微粒剤、バスアミド微粒剤
微粒剤を土壌に均一散布し、土壌の水分に反応して、有効成分であるMITC(メチルイソシアネート)を出して効果を発揮する。そのため、処理時には適度な水分が必要であり、ガス抜きも10~14日と比較的長い期間が必要である。主に土壌病害に効果を示す。
◆土壌処理殺虫剤によるセンチュウ防除
連作障害の原因の1つである土壌センチュウを防除したい場合、土壌処理殺虫剤という選択もある。ネマキックやネマトリンなどの土壌処理殺虫剤は、粒状や液状の製剤を土壌に散布あるいは灌注して、均一に土壌混和するだけで効果を発揮する。これらは、土壌の中で有効成分がセンチュウと接触して殺虫効果を発揮するので、土壌の中に薬剤を均一に分散させることが効果を安定させるコツである。ただし、センチュウの密度があまりに高いと取りこぼす確率が高くなるので、土壌処理殺虫剤の効果が今ひとつの場合には、前述の土壌消毒剤を使用してセンチュウ密度を下げてやる必要がある。
→土壌消毒のポイント 効率的な土壌消毒で連作障害を回避 (上) (下)
【表1 主な土壌消毒剤の特徴】
表1のPDFはこちらから
表2のPDFはこちらから
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日