農薬:防除学習帖
【防除学習帖】第38回 水稲の防除<6> 本田期の害虫防除2020年2月10日
水稲の防除は、種子消毒から始まり、育苗、田植えを経て初期防除、除草剤を散布し終わるとひと段落する。その後、苗が活着し、分げつ期の中干し、間断灌水が終わり、幼穂形成期に入る頃(6月中下旬~7月上旬頃:地域によって異なる)が、だいたい本田防除を開始する時期になる。
この頃に発生する主な害虫とその防除ポイントを整理した。対象害虫別の有効薬剤については、一覧表に整理したので、選択の際の参考にしてほしい。
1.ウンカ・ヨコバイ類
セジロウンカ、ヒメトビウンカ、トビイロウンカ、ツマグロヨコバイが主な対象害虫である。これらは、まだ幼いイネの葉を加害し、初期生育を遅らせたり、ヒメトビウンカの場合はウイルス病を媒介したりする。特に、トビイロウンカは水稲の出穂期以降に飛来・急激増殖し、ひどい場合にはつぼ枯れなどの大きな被害を起こす怖い害虫だ。
しかし、これらの害虫は初期の防除をきちんと行った上で、本田でも防除を徹底すると高い防除効果が得られる。発生の多い年などは、ゼクサロン(トリフルメゾピリム)など長期持続型の成分を含む育苗箱処理と本田での防除の2段構えで防除を行うと効率の良い防除が可能だ。
本田での防除は、MR.ジョーカー、トレボン、スタークル、アプロードを含む散布剤(粉剤DL、フロアブル、ゾルなど)を使用する。
ただし、近年飛来するウンカ類はネオニコチノイド系薬剤(アドマイヤーなど)に抵抗性を獲得しているので、同系統の薬剤はウンカ類対象では使用できない。薬剤の選択にあたっては、他の害虫の発生状況やウンカ類の飛来状況をよく確認し、指導機関などによく相談するようにしてほしい。
2.チョウ目
ニカメイチュウ、コブノメイガ、イネツトムシ(イチモンジセセリ)、フタオビコヤガ(イネアオムシ)、アワヨトウなどが主な発生害虫だ。
これらの害虫もまずは、育苗箱処理で初期の発生を抑え、発生に応じて本田での防除を組み合わせると効率が良い。育苗箱処理では、フェルテラやパディート、プリンスを含む剤を選ぶようにするとよい。本田防除では、トレボンやロムダン、パダン、スミチオンなどを含む散布剤(粉剤DL、フロアブル、乳剤、ゾルなど)を使用するとよい。
3.カメムシ類
カメムシ類は、針状の口を持ち、それを穂に突き刺して吸汁する。その時空いた吸汁痕が斑点として残り斑点米を発生させ、等級低下につながる。このため、カメムシ類の防除には特に神経を使って防除にあたる必要がある。
斑点米を発生させるカメムシ類は、大型カメムシでは、ホソハリカメムシ、クモヘリカメムシ、トゲシラホシカメムシ、ミナミアオカメムシなど、小型カメムシでは、アカスジカスミカメ、アケヒゲホソミドリカスミカメが主なものである。
カメムシ類は年に2~3回発生し、成虫で越冬する。稲の穂が出る前は、水田外の雑草地でイネ科雑草の汁を吸って生活しており、稲の穂が出ると籾に移って加害する。そのため、出穂前のカメムシの生息地である畦畔、農道やその近くの雑草地の雑草を枯らすか刈り払いするなどすると稲への加害を減らすことができる。ただし、これを出穂間近で行うと、雑草地のカメムシを水田に追いやることになって逆効果になるので注意が必要だ。
防除の基本は、穂揃期以降に地域一斉で1~2回の防除を行うことである。
なぜなら、カメムシは広範囲に行動するので、無防除の水田があるとそこにカメムシが集中してしまうことがあるからだ。
使用する薬剤は、カメムシの種類によって異なるので、よくラベルを確認して使用する。
防除剤は、トレボンやMR.ジョーカー、キラップ、スタークルを含む散布剤(粉剤DL、粒剤、フロアブル、ゾルなど)が主なものである。
本シリーズの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
【防除学習帖】
重要な記事
最新の記事
-
約1cm程度の害虫を強力捕獲「吊るしてGET虫ミニ強力タイプ」新発売 平城商事2025年5月2日
-
農中情報システム 自社の導入・活用のノウハウを活かし「Box」通じたDX支援開始2025年5月2日
-
洗車を楽しく「CRUZARD」洗車仕様ホースリールとノズルを発売 コメリ2025年5月2日
-
戦後80年の国際協同組合年 世代超え「戦争と平和」考える パルシステム神奈川2025年5月2日
-
生協の「地域見守り協定」締結数 全市区町村数の75%超の1308市区町村に到達2025年5月2日
-
ムコ多糖症ニホンザルの臨床徴候改善に成功 組換えカイコと糖鎖改変技術による新型酵素2025年5月2日
-
エフピコ×Aコープ「エコトレー」など積極使用で「ストアtoストア」協働を拡大2025年5月2日
-
JA愛知信連と高機能バイオ炭「宙炭」活用に関する協定締結 TOWING2025年5月2日
-
5月の野菜生育状況と価格見通し だいこん、はくさい、キャベツなど平年並み 農水省2025年5月2日
-
「ウェザーニュースPro」霜予測とひょう予測を追加 農業向け機能を強化2025年5月2日
-
新品種から商品開発まで 米の新規需要広げる挑戦 農研機構とグリコ栄養食品2025年5月1日
-
米の販売数量 前年比で86.3%で減少傾向 価格高騰の影響か 3月末2025年5月1日
-
春夏野菜の病害虫防除 気候変動見逃さず(1)耕種的防除を併用【サステナ防除のすすめ2025】2025年5月1日
-
春夏野菜の病害虫防除 気候変動見逃さず(2)農薬の残効顧慮も【サステナ防除のすすめ2025】2025年5月1日
-
備蓄米 小売業へ2592t販売 3月末の6倍 農水省2025年5月1日
-
イモ掘り、イモ拾いモ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第338回2025年5月1日
-
地元木材で「香りの授業」、広島県府中明郷学園で開催 セントマティック2025年5月1日
-
大分ハウスみかんの出荷が始まる 大分県柑橘販売強化対策協議会2025年5月1日
-
Webマガジン『街角のクリエイティブ』で尾道特集 尾道と、おのみち鮮魚店「尾道産 天然真鯛の炊き込みご飯」の魅力を発信 街クリ2025年5月1日
-
5月1日「新茶の日」に狭山茶の新芽を食べる「新茶ミルクカルボナーラ」 温泉道場2025年5月1日