農薬:防除学習帖
みどり戦略に対応した防除戦略(12)トマトの抑制栽培の病害虫防除【防除学習帖】第218回2023年9月30日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にKPIをクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上で、みどりの食料システム法のKPIをクリアできる方法がないかを探ろうとしている。
前回までに、水稲栽培について検討したので、今回から野菜について検討してみようと思う。野菜では、農薬の使用量も多く、出荷量も多いトマトを題材にして、どんなリスク換算量の低減方策があるのか探っていきたい。ただ、水稲編とも同様に、防除効果が落ちるような変更は本末転倒であるので、あくまで不可欠な防除部分は残し、変更可能なところでリスク換算量を減らす対策が無いかを探っていきたい。
そのため、病害虫の被害が最も多く、防除回数も多い作型として抑制栽培を選び、対象病害虫は一般的な対象病害虫を網羅した以下の病害虫防除を目的に防除薬剤を組み立ててみようと思う。
1.検討する防除タイミング
トマト栽培の過程で重要な防除タイミングは、①苗の本圃への植付前、②育苗後半~植付時、③生育期の3つになる。その重要な防除タイミング毎に使用される農薬や処理方法が異なっているので、栽培全体の検討の前に、まずはその防除タイミング毎にリスク換算量の検討を行っていこうと思う。
重要な防除タイミング毎の農薬の使用方法については、以下のものを中心に検討を進める。
(1) 植付前防除:土壌消毒、土壌処理
(2) 植付時防除:苗箱灌注処理、植穴処理
(3) 生育期防除:スプレー散布、くん煙、常温煙霧、ダクト処理
2.防除場面別みどり対策検証の考え方
次回以降、みどり対策について防除場面ごとに検証を加えようと考えているが、それぞれは次のような考え方で検証を進めたいと考えている。
(1)植付前防除
植付前防除の代表は土壌消毒である。その方法には、土壌消毒剤を使用する土壌くん蒸が一般的だが、土壌消毒剤(=化学農薬)を使用しない太陽熱消毒、土壌還元消毒、熱水消毒、蒸気消毒などがある。単純にいえば、土壌消毒剤による防除を、化学農薬を使用しない消毒法に切り替えればリスク換算値は大きく減らすことができる。しかし、作物の品質、収量を保つためには、土壌消毒剤を使用しなければならない場面もあると予想されるため、土壌消毒剤を省けない場面が本当にあるのかないのかを含めて検証していこうと考えている。
また、粉剤や粒剤などを土壌全面に一定量を散布し、土壌混和する方法もある。この場合、大量の薬剤を散布することになるのでリスク換算量も多くなる傾向があるので、どのようなケースで不可欠になるか検証してみたい。
(2)植付時防除
植付時に処理する方法としては、水希釈剤による苗箱灌注や苗の植付け時に植穴に一定量の薬剤を処理していく植穴処理、同様に作付けの条に散布混和する作条処理などがある。これらも、苗箱灌注などは希釈して箱にしょりするのでリスク換算量も少なくなるが、植穴処理や土壌混和などは、製剤そのものを散布するので、リスク換算量も多くなる傾向にある。
この場合も、この方法を取らなければならない防除があるか検証してみようと思う。
(3)生育期防除
生育期散布では、水で希釈して散布するスプレー(希釈液の噴霧)散布が主な防除法になる。その他、くん煙処理や常温煙霧、ダクト処理といった処理方法があるが、これらは対象病害虫が限られるので、使用場面が限定的になるだろう。
なので、生育期散布については、先に紹介した対象病害虫全てを網羅できる防除体系を想定しながら、検証をすすめていこうと考えている。
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