農薬:防除学習帖
みどり戦略に対応した防除戦略(17)トマト葉かび病防除【防除学習帖】 第223回2023年11月4日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にKPIをクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上で、みどりの食料システム法のKPIをクリアできる方法がないかを探ろうとしている。
現在、農薬の使用量も多く、出荷量も多いトマトを題材にして、どんなリスク換算量の低減方策があるのか探っており、まずは、トマトの防除タイミング(場面)ごとにリスク換算量を減らす方策にどんなものがあるか検証している。検証する防除タイミングは、①苗の本圃への植付前、②育苗期後半~植付時、③生育期 の3つであり、前回から③の生育期に使用する農薬について検証しており、具体的な対象病害虫別に検証してみる。今回は、使用できる薬剤数の多いトマト葉かび病防除剤について検証する。
1.生育期のトマト葉かび病防除剤の10aあたりリスク換算量
トマト葉かび病防除には、多くの農薬登録があり、薬剤系列ごとに複数の農薬が登録を持っている。
葉かび病は、耐性菌の発生リスクが高い病害であるため、実際には複数の薬剤系列をローテーションで使用することが多い。このため、薬剤系列別に薬剤を並べ、リスク換算量を比較した。散布水量については、300?/10aに統一して試算した。
![生育期のトマト葉かび病防除剤の10aあたりリスク換算量[その1]](https://www.jacom.or.jp/nouyaku/images/1_6.jpg)
![生育期のトマト葉かび病防除剤の10aあたりリスク換算量[その2]](https://www.jacom.or.jp/nouyaku/images/2_5.jpg)
![【表3】生育期のトマト葉かび病防除剤の10aあたりリスク換算量[その3]](https://www.jacom.or.jp/nouyaku/images/3_2.jpg)
2.みどりの食料システム法対応の検討
前述のとおり、この処理時期の薬剤については、リスク換算量はあまり意識せずに、防除効果を優先すべき時期だ。一覧表に示したとおり、いずれの農薬も作期全体を通してのリスク換算量の低減に与える影響は少ないので、必要な農薬は確実に使用した方が良い。
使用の際には、耐性菌の発生リスクを考えて、異なる薬剤系列でのローテーション散布を基本とし、CAA剤やDMI剤、QoI剤、SDHI剤など薬剤耐性菌の発達リスクの高い薬剤系列を使用する場合はできるだけそれらと異なる成分を含有する混合剤を使用するようにする。
あえて実施しようとするならば、下記のような対策(詳細は前号222号https://www.jacom.or.jp/nouyaku/rensai/2023/10/231028-70309.phpを参照)を、防除効果が落ちないことを第一義としながら実行するとよい。
(1) 薬剤の1回当たりの処理量を減らす
1000倍~2000倍など希釈倍数に幅のある登録がある場合は希釈液が薄い方(この場合は2000倍)で使用する。
(2)リスク換算量の少ない薬剤に変更する
リスク換算量を比較して単純にリスク換算量が少ない薬剤を選択する。
(3)できるだけ残効期間の長い薬剤を使用する
(4)生物農薬などリスク換算値ゼロの農薬を使用する
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(172)食料・農業・農村基本計画(14)新たなリスクへの対応2025年12月13日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(89)フタルイミド(求電子剤)【防除学習帖】第328回2025年12月13日 -
農薬の正しい使い方(62)除草剤の生態的選択性【今さら聞けない営農情報】第328回2025年12月13日 -
スーパーの米価 前週から14円下がり5kg4321円に 3週ぶりに価格低下2025年12月12日 -
【人事異動】JA全農(2026年2月1日付)2025年12月12日 -
新品種育成と普及 国が主導 法制化を検討2025年12月12日 -
「農作業安全表彰」を新設 農水省2025年12月12日 -
鈴木農相 今年の漢字は「苗」 その心は...2025年12月12日 -
米価急落へ「時限爆弾」 丸山島根県知事が警鐘 「コミットの必要」にも言及2025年12月12日 -
(465)「テロワール」と「テクノワール」【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月12日 -
VR体験と牧場の音当てクイズで楽しく学ぶ「ファミマこども食堂」開催 JA全農2025年12月12日 -
いちご生産量日本一 栃木県産「とちあいか」無料試食イベント開催 JA全農とちぎ2025年12月12日 -
「いちごフェア」開催 先着1000人にクーポンをプレゼント JAタウン2025年12月12日 -
生協×JA連携開始「よりよい営農活動」で持続可能な農業を推進2025年12月12日 -
「GREEN×EXPO 2027交通円滑化推進会議」を設置 2027年国際園芸博覧会協会2025年12月12日 -
【組織改定・人事異動】デンカ(1月1日付)2025年12月12日 -
福島県トップブランド米「福、笑い」飲食店タイアップフェア 期間限定で開催中2025年12月12日 -
冬季限定「ふんわり米粉のシュトーレンパウンド」など販売開始 come×come2025年12月12日 -
宮城県酪初 ドローンを活用した暑熱対策事業を実施 デザミス2025年12月12日 -
なら近大農法で栽培「コープの農場のいちご」販売開始 ならコープ2025年12月12日


































