農薬:防除学習帖
みどり戦略に対応した防除戦略(32)【防除学習帖】 第238回2024年2月24日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にKPIをクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上で、みどりの食料システム法のKPIをクリアできる方法がないかを探ろうとしている。
現在、散布回数の多い果樹を検討するためナシを題材に検討を進めている。果樹も水稲と同様に防除暦が整っている作物ではあるが、暦の内容が地域によって異なるため、一律的なリスク低減方策を示しにくい作物であることから、栽培ステージごとに一般的なリスク換算量低減方法の検討を試みようとしている。
今回は、収穫期の害虫防除について検証してみる。
1.収穫期の害虫防除
この時期に発生する主な害虫はハダニ類、シンクイムシ類、カメムシ類であり、いずれも収量・品質に多大な影響を与える害虫ばかりなので、徹底した防除が必要である。特に、ハダニ類は爆発的に発生が多くなる時期なので、発生状況には十分に注意を払い、早めの防除を徹底するようにしてほしい。
ハダニ類は薬剤抵抗性が発生しやすいので、暦に示された薬剤でのローテーション散布を着実に行うようにしてほしい。
2.収穫期の害虫防除の実際
以下にモデル防除暦を示した。基本的に系統の異なる殺虫剤をローテーションで使用する。
3.リスク換算量削減方策
この時期は、害虫被害を防ぐ最重要期間なので効果最優先で防除を確実に実施する。
その上で、あえてリスク換算量を減らすなら、他の時期と同様に次のような方法が考えられる。
① 作用性の異なる薬剤の中からリスク換算量の少ないものを選んでローテーションで使用する。
② 希釈倍数が複数ある場合は薄い方でも十分に効果があると判断される場合に限り選択する。
③ 1剤で複数の害虫に効果のある薬剤を基本防除に組み入れる。
なお、フェロモン剤を導入している園地であればチョウ目害虫の防除剤を大幅に減らせるので、もし必要があれば、減った分のリスク換算量をチョウ目以外の害虫防除剤にあてることも一考の価値がある。
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