農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(3)【防除学習帖】 第242回2024年3月23日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にKPIをクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探る必要がある。そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用がとても重要だ。そこで、防除学習帖では、どのようにIPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか検討してみたいと考える。
IPM防除は、化学農薬による化学的防除に加え、化学的防除以外の防除法である①生物的防除や②物理的防除、③耕種的防除を効率よく組み合わせて効率的に防除するものである。化学的防除に関しては、既に検証・紹介し、みどり戦略対策の考え方一定程度整理したので、今回以降は化学的防除以外の防除法にどのような技術があるのか、その詳細を紹介しながら、対策法を考え、導入にあたっての留意点を紹介していこうと思う。
先ずは、生物的防除に使用される資材や技術の紹介から始めようと思うので、生物農薬の代表格にはバチルス剤があるが、殺菌剤としてはバチルス ズブチリス菌が、殺虫剤としてはバチルス チューリンゲンシス菌といった具合に、同じバチルス菌でも用途によって菌種が異なる。第2回は、バチルス殺虫剤について紹介する。
1.バチルス殺虫剤の特性
バチルス殺虫剤とは、バチルス チューリンゲンシス(以下BT)という芽胞細菌の生芽胞もしくは結晶タンパクを有効成分にしているもので、2つの系統(クルスタキーおよびアイザワイ)のものが使用されている。系統によって効果を示す害虫が異なることが多いので、どの害虫を防除するかによってBT剤を選択する必要がある。
BT剤の主成分である結晶タンパクは、アルカリ性のチョウ目幼虫の消化管に入って溶解し毒素タンパクに変化して殺虫活性を示す。このため、チョウ目以外の益虫を含む昆虫には効果を示さないので、天敵や環境影響の少ない殺虫剤である。
2.バチルス殺虫剤の種類と使用時期
製品には、芽胞が生きている生菌タイプと芽胞が死んでいる死菌タイプがあるが、生菌タイプの方が速効性である。ただし、いずれにしても浸透移行はなく、結晶タンパクが紫外線分解しやすいために残効は短く、幼虫が加害を開始する直前に散布しておく必要がある。発生初期のまだ個体数が少ない時期が防除適期である。
3.BT剤による防除の考え方
BT剤を導入することで化学農薬のリスク換算量を減らすことができる。ただし、BT剤だけで十分な防除効果が得られない場合もあるので、化学農薬を補完的に使用することも考慮しておかなければならない。つまり、対象害虫の発生前からBT剤を定期的に継続使用し、発生状況に注意しながら、発生が無いようであれば、そのままBT剤のみでの防除を継続し、万一害虫の発生が認められるようになったら、発生量が少ないうちに化学農薬を散布して害虫を一掃すると良い。その場合、使用する化学農薬はBT剤に影響を及ばさないものを選ぶよう注意する。化学農薬の選択にあたっては、メーカーの混用適否表などを参考にすると良い。BT剤の登録作物は多岐に渡っており、紙面上全ての作物を紹介しきれなかったので、作物類登録のあるBT剤を抽出してどの害虫に農薬登録があるかを下表に整理したので参考にしてほしい。
重要な記事
最新の記事
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(3)病気や環境幅広く クリニック西日本分室 小川哲郎さん2025年9月18日
-
【全中・経営ビジョンセミナー】伝統産業「熊野筆」と広島県信用組合に学ぶ 協同組織と地域金融機関の連携2025年9月18日
-
【石破首相退陣に思う】米増産は評価 国のテコ入れで農業守れ 参政党代表 神谷宗幣参議院議員2025年9月18日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】協同組合は生産者と消費者と国民全体を守る~農協人は原点に立ち返って踏ん張ろう2025年9月18日
-
「ひとめぼれ」3万1000円に 全農みやぎが追加払い オファーに応え集荷するため2025年9月18日
-
アケビの皮・間引き野菜・オカヒジキ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第356回2025年9月18日
-
石川佳純の卓球教室「47都道府県サンクスツアー」三重県で開催 JA全農2025年9月18日
-
秋の交通安全キャンペーンを開始 FANTASTICS 八木勇征さん主演の新CM放映 特設サイトも公開 JA共済連2025年9月18日
-
西郷倉庫で25年産米入庫始まる JA鶴岡2025年9月18日
-
日本初・民間主導の再突入衛星「あおば」打ち上げ事業を支援 JA三井リース2025年9月18日
-
ドトールコーヒー監修アイスバー「ドトール キャラメルカフェラテ」新発売 協同乳業2025年9月18日
-
「らくのうプチマルシェ」28日に新宿で開催 全酪連2025年9月18日
-
埼玉県「スマート農業技術実演・展示会」参加者を募集2025年9月18日
-
「AGRI WEEK in F VILLAGE 2025」に協賛 食と農業を学ぶ秋の祭典 クボタ2025年9月18日
-
農家向け生成AI活用支援サービス「農業AI顧問」提供開始 農情人2025年9月18日
-
段ボール、堆肥、苗で不耕起栽培「ノーディグ菜園」を普及 日本ノーディグ協会2025年9月18日
-
深作農園「日本でいちばん大切にしたい会社」で「審査委員会特別賞」受賞2025年9月18日
-
果実のフードロス削減と農家支援「キリン 氷結mottainai キウイのたまご」セブン‐イレブン限定で新発売2025年9月18日
-
グローバル・インフラ・マネジメントからシリーズB資金調達 AGRIST2025年9月18日
-
利用者が講師に オンラインで「手前みそお披露目会」開催 パルシステム東京2025年9月18日