農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(30)【防除学習帖】第269回2024年10月12日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っているが、そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探っている。IPM防除は、病原菌種別や害虫種別、雑草種別に整理すると、作物が異なっても応用しやすくなるのではないかと考え、現在、病害虫雑草別に化学的防除の詳細を除いたIPM防除法の組み立て方を検討している(化学的防除法の詳細については病害虫別に後日整理する)。
現在害虫別にその生態と防除について紹介しており、今回はティレンクス目を紹介する。
1. ティレンクス目の種類と生態・被害
ティレンクス目は、線形動物門、幻器網に属し、農業害虫では、メロイドギネ科(ネコブセンチュウ類)、プラティレンクス科(ネグサレセンチュウ類)、アフェレンコイデス科(イネシンガレセンチュウ)の3科10線虫が主なものである。
ティレンクス目は多くの野菜類やいも類に寄生し、作物の全体の生育が悪くなり、収量、品質を低下させたり、日中のしおれや、葉の黄化、土壌病害の感染助長といった被害を起こす。
被害の大きい土壌センチュウ類は、大きく分けてネコブセンチュウ類とネグサレセンチュウ類の2つである。いずれも広範な野菜等に発生し、作物の根に尖った口で食い入り、根の内容物を食べて生育する。その結果、ネコブセンチュウは根にこぶ状の塊をつくり、ネグサレセンチュウは根が腐ったような状態にして、根の活力を大きく低下させて、先のような被害を引き起こす。
それぞれの生態と被害を下表に整理した。
![gakushu269 IPM防除実践考[30]_2024-10-11up-2.jpg](https://www.jacom.or.jp/nouyaku/images/0ab8d53e51c8028d28d7f7a896d5d2b1.jpg)
2.ティレンクス目の防除対策
ティレンクス目(以下、線虫類)は、野菜類では土壌中での線虫密度と被害が正比例するため、できるだけ土壌中の線虫密度を低下させることが肝要で、耕種的防除と薬剤防除を組み合わせた総合防除を行うことが基本である。土壌中の線虫密度があまりに多いと防除困難となるので、被害が多くなってきている場合は、徹底した土壌消毒を実施し、土壌中の線虫類を一掃する必要がある。
(1)殺虫剤の使用 [化学的防除]
線虫類の化学的防除は、ネコブセンチュウ類とネグサレセンチュウ類は、土壌消毒剤の使用あるいは殺線虫粒剤の土壌施用が有効で、イネシンガレセンチュウはイネの種子消毒剤の使用に限られる。土壌消毒剤は土壌条件や被覆など用法・用量を守り適切に使用する。土壌粒剤は、土壌中でセンチュウと接触してはじめて効果を現すため、土壌センチュウが薬剤に接触する機会を増やすように、土壌混和を丁寧に行って作物の根圏のまわりに均一に土壌センチュウ粒剤が存在するように処理すると効果が安定する。
(2)被害残渣の除去[物理的防除]
野菜類の被害残渣には線虫類が残っているので、残渣がほ場に残らないようにできるだけきれいに集めて、ほ場外に搬出して適切に処分する。
(3)生物農薬の利用[生物的防除]
ティレンクス目害虫を対象とした生物農薬は、野菜類やいも類のサツマイモネコブセンチュウに効果のあるパストリア水和剤(パスツーリア ペネトランス水和剤)がある。同剤は、サツマイモネコブセンチュウに特異的に寄生する糸状菌であり、胞子が土壌中に数年間生存して、同センチュウの増殖を長期間抑制して被害を軽減する。ただし、登録適用害虫は「ネコブセンチュウ」となっているがサツマイモネコブセンチュウ以外には効果がないので注意が必要である。
(4)輪作の実施[耕種的防除]
同じ作物を連作すると加害線虫類が増え続けるので連作を避け、線虫の寄生性が異なる他の科の作物との輪作を行う。
(5)対抗植物の植生[耕種的防除]
作物と対抗植物を混植あるいは前作に植生することで線虫密度を低下させることができる。
対抗植物には、ネグサレセンチュウの密度を低下させる「マリゴールド」、ネコブセンチュウの密度を低下させる「コブトリソウ」がある。
(6)太陽熱消毒・土壌還元消毒[物理的防除]
水分を十分に含む圃場に被覆などして、温度を上昇による熱死か強還元状態にすることにより、土壌中の線虫を死滅させて密度を低下させることができる。
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