農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(60)【防除学習帖】第299回2025年5月24日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っているが、そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探っている。
みどり戦略対策に向けたIPM防除でも、必要な場面では化学的防除を使用し、化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせて防除効果の最大化を狙うのだが、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できるようにするためには、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理すると、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道が探れると考えている。そのため、有効成分の作用機構ごとに分類し、RACコードの順番に整理を試みている。現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
26.OSBPI(オキシステロール結合タンパク質阻害)殺菌剤
(1)作用機構:[F]脂質生合成または輸送/細胞膜の構造または機能
(2)作用点: 脂質恒常性および輸送/貯蔵
(3)グループ名:OSBPI(オキシステロール結合タンパク質阻害)・グループコード:[49]
(4)殺菌剤の耐性リスク:中~高
(5)耐性菌の発生状況:事例無し
(6)化学グループ名/有効成分名(農薬名):
[1]ピペリジニルチアゾールイソキサゾリン/オキサチアピプロリン(ゾーベックエニケードOD)
(7)グループの特性:
このグループ[49]は、病原菌の細胞内で合成されるタンパク質の輸送に重要な役割を果たすOSBPI(オキシステロール結合タンパク質)の働きを阻害して、菌糸の伸長抑制や胞子形成阻害、遊走子の間接発芽阻害、また遊走子の放出や運動性の阻害といった作用を示す。これによって防除効果および病害の蔓延防止効果を示す。卵菌類であるべと病や疫病に特異的な効果を示す。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
このグループに属するOSBPI(オキシステロール結合タンパク質阻害)殺菌剤の農薬登録は新しく、基準年出荷量がないため削減対象数量を計算できない。卵菌類に効果を示す貴重な薬剤であることから耐性菌対策に留意しながらローテーション防除の剤として使用する方が得策である。
(9)OSBPI(オキシステロール結合タンパク質阻害)殺菌剤の農薬登録がある主要病原菌一覧
OSBPI殺菌剤の農薬登録がある主要作物・病害名・病原菌の一覧を次表に示した。これらは、OSBPI殺菌剤を含む農薬が農薬登録を取得している作物・病害を整理したもので、本グループが活性を示す病原菌群を示したものである。実際の使用前には必ず農薬ラベルにて登録内容(作物・病害名)を確認して正しく使用するようにしてほしい。
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