青りんごが赤くなる不思議 眠りから覚めた遺伝子が果皮の色を変えるメカニズム判明 千葉大学2025年3月12日
千葉大学大学院園芸学研究院の齋藤隆徳准教授、静岡県立農林環境専門職大学の森口卓哉教授(当時、2024年3月定年退職)、弘前大学農学生命科学部の林田大志助教らの共同研究グループは、遺伝的に着色しない青りんごにも、赤くなる仕組みが備わっていること、またその"赤くなりやすさ"の遺伝的な仕組みが品種ごとに多様であることを発見した。この成果により、遺伝子組換えや薬剤なども使わずに色を変えることが可能であると判明し、今後は"赤い"青りんごのような新たな商品開発や、未利用の遺伝子による新たな品種改良につながることが期待できる。

図1
りんごの果皮はアントシアニンとよばれる色素が蓄積することで赤く色づく。また、りんごの果皮にアントシアニンが蓄積するかどうかは遺伝的に決まっており、MdMYB1-1とよばれる遺伝子を両親のいずれかから受け継ぐことで赤いりんごになるが、MdMYB1-2やMdMYB1-3というその他の対立遺伝子しか持たない場合に青りんごになる(図1)。
一方、MdMYB1-1を持たない「陸奥」や「弘大みさき」のように、遺伝的には青りんごであるはずの一部の品種は、幼果のときに果実袋をつけて暗黒下で栽培し、収穫期の直前に太陽光を当てると赤くなることが以前から知られていたが、、この現象が生じるメカニズムと、「陸奥」や「弘大みさき」以外の青りんご品種でもこの現象が生じるのかは未解明だった。

図2
今回の研究では、はじめに「陸奥」や「弘大みさき」を含む様々な青りんごの品種の果実袋への反応性を比較。その結果、「陸奥」や「弘大みさき」ほどではないが、「王林」や「金星」の品種でも赤くなることが分かった(図2)。
一方で「ゴールデンデリシャス」や「とき」では、わずかに赤くなるものの、「陸奥」や「弘大みさき」のように鮮やかに色づくことはなかった。この結果から果実袋により果皮が赤くなる可能性があるものの、その反応性は品種によって異なることがわかった。
さらに今回の研究では、本来は発現しないはずのMdMYB1-2やMdMYB1-3が発現することも確認。青りんごにも赤くなる仕組みが本来は備わっていることも明らかにした。これは、MdMYB1-1を持っていなくても、眠った状態のMdMYB1-2やMdMYB1-3のスイッチが果実袋によってONになることで赤く色づくことを示すが、この現象は突然変異のようにDNA情報が変化するわけではないため、どのように眠った状態のMdMYB1-2やMdMYB1-3のスイッチがONになるのか、という新たな疑問が生まれた。

図3
そこでDNAの化学構造の変化である、メチル化を調べたところ、MdMYB1-2やMdMYB1-3のDNAの一部で、果実袋によりDNAのメチル化が低下(図3)することで、MdMYB1-2やMdMYB1-3遺伝子が目覚めることを「陸奥」で発見した。
これまで果実袋によって青りんごが赤くなることは知られていたが、品種ごとの"赤くなりやすさ"の違いを明らかにしたのは世界で初めての成果。また、遺伝子組換えや薬剤に頼らずに、役に立っていないと思われてきた遺伝子を目覚めさせるメカニズムをDNAレベルで明らかにした。
このメカニズムは「陸奥」のみで特定されたもの。今後は、『品種を超えて青りんごが色づくスイッチがあるのか?』という問題を解明することで、眠っているとみなされて、その役割が見過ごされてきた遺伝子の活用による、新たな赤いりんご品種の開発が期待される。
同研究成果は2月11日、国際学術誌『Scientia Horticulturae』に掲載された。
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