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肥料危機に現実味 食料危機の新たなステージ 世界では米収穫減リスクも 農中総研理事研究員 阮蔚氏2022年6月20日

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ロシアのウクライナ侵攻を発端に世界秩序の崩壊や市場隔離、さらに日本では円安なども重なり生産資材価格の上昇が止まらない。先行きが不透明のなか、農家の危機感も募る。そこで農林中金総合研究所理事研究員の阮蔚(RUAN Wei)氏に「化学肥料ショックがもたらす食料危機の新たなステージ」と題し寄稿してもらった。

穀物需給ひっ迫の先にある肥料不足

化学肥料価格が2008年以来の最高値水準にまで高騰している。世界銀行によると、2022年4月の肥料価格は前年同月比で、窒素が181・9%、リンが79・1%、カリが177・8%の異常な上昇となっている。背景にあるのは主要供給源であるロシア、ベラルーシ両国からの輸出がロシアのウクライナ侵攻によって落ち込んでいるためだ。世界は現状の穀物需給ひっ迫の先に食料生産を支える肥料の不足という大きな問題に直面している。

世界の肥料価格を振り返ると、2008年に原油価格が1バレル150ドル近くまで上昇した際に過去最高値に高騰した。肥料生産には大量のエネルギーが必要で、世界最大の天然ガス輸出国であるロシアが化学肥料輸出でも世界トップに立っているのはそのためだ。2019年の実績では、ロシアは窒素で世界輸出第1位の15・5%を占め、カリは18・7%で第2位、リンは13・7%で第3位と化学肥料で圧倒的な存在。同盟国のベラルーシもカリで18・2%を占める第3位の輸出国である。

化学肥料ショックがもたらす食料危機の新たなステージ1化学肥料ショックがもたらす食料危機の新たなステージ

両国からの肥料輸出は黒海岸の輸出港が戦火で機能不全に陥っていることに加え、米欧日など主要国がロシアを国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除する制裁を科し、貿易決済が困難になっていることもあって、かつてない停滞状況にある。

化学肥料生産には別の圧力もかかっている。地球温暖化対策として中国はじめ肥料輸出国が生産を抑制、国内需要を優先し、輸出を制限し始めていることだ。中国政府は2021年11月に化学肥料の輸出制限を開始した。もともと原料のリン鉱石の枯渇が現実化しつつあり、リンも先行き、さらに需給がひっ迫しかねない。

では、化学肥料は世界の食料生産にどれほどの意味を持っているのだろうか?

化学肥料の過剰使用で地下水汚染や健康被害などを懸念したスリランカのラジャパクサ大統領は2021年4月に全土で有機農業を実践するため、化学肥料や農薬の使用と輸入を禁止した。有機農業が構築されていないなかでの唐突な化学肥料禁止によって、主食の米の収穫量は大幅減、最大の輸出品である茶葉生産も大打撃を受けた。

米収穫減により食料価格が高騰し、農民収入が大幅に減少し、抗議デモで国は大混乱に陥り、ラジャパクサ政権はやむなく11月に化学肥料や農薬の輸入・使用禁止の撤廃に追い込まれた。

突出する中印の食料増産と化学肥料使用

有機農業等への転換は脱炭素や環境保全の観点でも模索していく必要があるが、現状では「食料の食料」といわれる化学肥料の確保は食料安全保障と同等といっていい。FAOによると、2019年までの半世紀で、世界の人口は2・1倍に増えたが、同期間の穀物生産量と化学肥料使用量はそれぞれ2・5倍と3・1倍に増え、増加した人口は化学肥料の大量投入による増産で養われている。

その中で、人口大国の中国とインドの食料増産と化学肥料の使用増加が突出している。同期間に中国の人口は72・4%、インドの人口は151・6%の増加となったが、それに伴う食料需要の膨張を支えたのは品種改良や化学肥料の投入増の成果としての穀物増産である。同期間の穀物生産量は中国は3・5倍、インドは3・1倍に大増産できたが、穀物作付面積は中国は5・3%増、インドは1・7%増にすぎない。増えたのは化学肥料使用量で中国は14倍に、インドは20・9倍へと驚異的な拡大となった。

化学肥料ショックがもたらす食料危機の新たなステージ2化学肥料ショックがもたらす食料危機の新たなステージ

偏る"痛手" 生産意欲減

中国の化学肥料の使用量は既に2015年をピークに低下傾向にある。環境改善のため政策的に化学肥料の使用削減が進められているが、現実には中国の農地は化学肥料をこれ以上追加投入しても単収が上がらないという段階にまで達している。

化学肥料ショックがもたらす食料危機の新たなステージ3

化学肥料ショックがもたらす食料危機の新たなステージ

一方、インドは穀物の単収が中国ほどには上がっていない。インドの単収は中国と比べ、米で56・3%、小麦で59・8%、トウモロコシで48・4%にとどまっている。これはインドの農業分野の化学肥料使用量が中国に対し、窒素で79・2%、リンで68・5%、カリは25・8%に過ぎないことと相関している。

逆に言えば、インドは化学肥料の増加投入で、食料増産を図ることも可能といえる。同様にインドネシアやバングラデシュ、アフリカの大半の国も化学肥料の巨大な潜在需要を持っていると言える。

ただ、化学肥料価格が高止まりすれば、途上国の大半は逆に肥料投入の削減に向かうだろう。FAOが2022年6月9日に公表した「Food Outlook(食料展望)」によると、化学肥料など農業の生産投入コスト指数(Global Input Price Index)は過去最高水準で推移しており、過去1年間の月間平均上昇率は6%に達している。これは食料価格の平均上昇率2%を大きく上回っており、現状の食料高騰のなかで、農民の実質手取り収入が減少していることを意味する。

利益得るのは肥料生産国や石油、天然ガスの供給国

利益を得ているのは肥料生産国や石油、天然ガスなどの供給国であり、農業生産者ではないことに世界は注目すべきである。

農民は現状では決して生産意欲を高めてはいない。むしろ生産支出を削減することに経済合理性がある。それが端的に表れているのが、米である。アジア地域の主食であり、現段階では備蓄も安定しており、農民の生産コストが上昇しても、米の市場価格が上がらない状況にある。米農家は採算の観点から次期作付けで化学肥料の投入を抑制する可能性が高い。

フィリピンに本部を置く国際稲作研究所(IRRI)は、次の米収穫シーズンに世界全体で米収穫が10%減るリスクがあると警告している。

世界の農業生産と食料安定供給を支える大きな要素である化学肥料の生産、流通の安定化を図ることが世界にとって喫緊の課題であり、国連や先進国を含め、効果のある対策が求められている。

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