オオムギの起源解明ー品種改良の効率加速化に期待ー岡山大学と生物研2015年8月3日
世界中のオオムギ品種は欧州(西)に分布する栽培オオムギと日本等(東)に分布する栽培オオムギの2つのグループに分けられる。今回、西の栽培オオムギが、約1万年前に現イスラエルの南レバントで起きた突然変異の子孫であることと、東の栽培オオムギが現北西シリアから南東トルコの北レバントで起きた突然変異の子孫であることがわかった。2つのオオムギの子孫の品種グループを交配することで、多様性が生まれ、品種改良の効率が加速すると期待されている。
2万3000年以上前から食用にされていた野生オオムギの実は、成熟すると穂の軸の節々の連結が外れ、バラバラになり地面に落ちる。一方、1万年前頃の遺跡から発見されるようになった、人が収穫する栽培オオムギは、人が軸から実を刈り取った跡が残る。人類は野性オオムギの中に実の落ちない突然変異の起きたオオムギがあることに気が付き、地面に落ちた実を集めなくてもこれを栽培して収穫していくことを始めた。これが人類最古の農業の始まりであり、オオムギの起源だと分かった。
今回、栽培オオムギとの大きな違いである野生オオムギの実が落ちる現象は、穂の軸の節々の細胞壁が極端にもろくなることが原因だと分かった。実が落ちるには2つの遺伝子が関係していることはわかっており、今回はさらに、この2つの遺伝子が西と東の栽培オオムギの遺伝子で違いがあることが発見された。
西と東の栽培オオムギはそれぞれ別の突然変異の性質に影響を受けている。たとえば、病気の抵抗性やビール製造の品質などでその違いは現れてくる。
今回発見された2つの遺伝子の違いが、品種改良の親として使われる遺伝資源の保存と利用に役立ち、さらに互いに持っていない情報を活用して品種改良の効率が加速していくと期待されている。
国立研究開発法人農業生物資源研究所(生物研)の小松田隆夫上級研究員と岡山大学資源植物科学研究所の佐藤和広教授が、ドイツなど世界6ヵ国の研究機関との共同研究をリードし、栽培オオムギの起源や実の落ちる2つの遺伝子の起源などを世界で初めて突き止めた。
研究の成果は7月30日(米国東部時間正午)、アメリカの学術雑誌「CELL」に掲載される。
(関連記事)
・カドミウム除去に新品種 生物研がイネで育成 (15.07.21)
・生物研「植物遺伝資源供給センター」3月に開所 (15.1.23)
・飛ばないテントウムシなど 10大トピックス選定(2014.12.11)
・イネから多様な機能の遺伝子 愛媛大学と生物研(2014.09.04)
・表示義務 早急に拡大を加工食品の原料原産地(2014.08.28)
重要な記事
最新の記事
-
【肉とビールと箸休め ドイツ食農紀行】食文化の変化じわり2025年9月4日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】コメ騒動と米国との関係~根底にある「胃袋からの属国化」2025年9月4日
-
プロ職員育成へ「専門業務従事者」設置 JA北つくば【JA営農・経済フォーラム】(1)2025年9月4日
-
【統計】原料用ばれいしょ生産費 10a当たり0.9%増 100kg当たり1.2%減 農水省調査2025年9月4日
-
【統計】原料用かんしょ生産費 10a当たり1.1%増 100kg当たり3.5%増 農水省調査2025年9月4日
-
【統計】てんさい生産費 10a当たり1.9%減、1t当たり6.2%減 農水省調査2025年9月4日
-
【統計】そば生産費 10a当たり0.6%増 45kg当たり13.6%減 農水省調査2025年9月4日
-
【統計】さとうきび生産費 10a当たり4.4%減 1t当たり16.4%減 農水省調査2025年9月4日
-
この夏の私的なできごと -東京の夏・「涼しい夏」の初体験-【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第354回2025年9月4日
-
野外スポーツイベント「岐阜ロゲin大垣」に協力 マルシェで県産農畜産物販売 JA全農岐阜2025年9月4日
-
盛岡つなぎ温泉で「いわての牛肉フェア」 伝統の「さんさ踊り」公演も特別協賛 JA全農いわて2025年9月4日
-
セブン-イレブンに「飛騨トマトと生ハムのバジルパスタサラダ」 夏にぴったりの爽やかメニュー JA全農岐阜2025年9月4日
-
【スマート農業の風】(18)農水省の進める農業DXとeMAFF農地ナビ2025年9月4日
-
「医食同源」について考えるイベント LINK-Jと共催イベント あぐラボ2025年9月4日
-
見て・食べて・楽しむ酪農イベント JR那須塩原駅前で9月6日に開催 那須塩原畜産振興会2025年9月4日
-
井関農機とNEWGREENの「アイガモロボ」 Xtrepreneur AWARD 2025でグランプリ受賞2025年9月4日
-
北海道と沖縄県の食の交流「どさんこしまんちゅフェア」開催 セブン‐イレブン2025年9月4日
-
兼松「農業・食品GX」強化へ インセッティングコンソーシアムに参画2025年9月4日
-
火山灰シラスから土壌改良資材「オリジンジオ」農業支援プロジェクト実施中2025年9月4日
-
オランダと考える未来の園芸技術「環境制御型農業特別シンポジウム」開催2025年9月4日