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世界の食糧問題にひそむ経済格差2013年2月12日

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【森島 賢】

 新しい農政の基本方針が固まりつつある。新しい基本方針は、その中核に食糧安保を据えて、農業振興を図るのかどうか。それが問題である。つまり、いまの39%という低い食糧自給率を向上させるのか、さらに低下させるのか、である。
 食糧安保政策は、将来に予想される、地球規模での食糧不足に備えて、国家が国民の食糧を確保しておくための最も重要な政策である。それと同時に、これは、農業が負うべき最も重要な役割りである。
 このばあい、食糧とは野菜や果物ではない。東西の歴史をみれば分かるように、野菜や果物が不足したからといって、社会問題にはならない。食糧とは、空腹を満たし、働くための穀物や肉である。肉も穀物を餌にして生産したものが多い。つまり、食糧の基本は穀物である。
 そこで、最近50年間の世界の穀物の需給状況をみてみよう。そこには、経済格差がひそんでいる。

第1図 世界の1人当たり穀物消費指数 上の第1図は、最近50年間の、世界の穀物消費量を世界の人口で割り算したものの指数である。
 この図をみると分かるように、前半の25年間は増加したものの、後半の25年間、つまり、1985年ころから減少ぎみである。ここに世界の食糧問題の深刻さがある。それを招いた要因は何だろうか。

第2図 世界の穀物需給指数 上の第2図は、穀物需給とその要因を4つに分けてみたものである。
 生産側の要因は、収穫面積と単収の2つである。この2つの要因を掛け算すると生産量になる。消費側の要因は、人口と1人当たり消費量の2つである。この2つの要因を掛け算すると消費量になる。生産量と消費量とは作柄による在庫調整を加味すれば、中期的にみて同じである
 この図をみると、生産量が増えた主な要因は、単収で、消費量が増えた主な要因は、人口であることが分かる。収穫面積はほとんど増えていないし、1人当たり消費量は、第1図で分かりやすく示したように、それほど増えていない。ことに1985年以後は減少ぎみである。

 生産側をみよう。この50年間で生産量が増えた要因は、単収である。収穫面積は、横ばいである。
 今後どうなるだろうか。農地面積の増加は見込めないだろう。農地開発による自然破壊は、もう限界にある。単収の増加は、遺伝子組み換え技術や肥料の増投や農薬の開発などの技術進歩によるものだろう。これらは、安全性の問題があって、今後も単収を増やしつづけられるかどうかの不安がある。

 消費側をみよう。消費量が増えた要因は、主に人口である。1人当たり消費量は、ことに1985年以後は、減少ぎみである。
 これが問題である。つまり、第1図でも分かるように、ことに1985年以後、穀物消費は改善されなかった。食糧不足人口は減らなかったのである。
 今後どうなるか。人口の増加が、今後も続くことは間違いないだろう。ことに発展途上国の人口増加の勢いは、今後も数十年の間続くと考えられる。幼児と高齢者の死亡率の低下は、各国が経済発展の過程で経験した喜ばしいことである。発展途上国が、これから経験することは確実だろう。

 穀物消費には、2つの側面がある。穀物を人間が直接食べる側面と、いったん家畜に飼料にして食べさせ、太らせて、その肉や乳製品を人間が食べる側面である。
 飼料として消費するのは、良質な食糧にして消費することになる。しかし、カロリー効率が低いという点で贅沢な消費である。
 発展途上国の一部では発展の過程で、肉食を増やしている。この点からみて、1人当たりの穀物消費量が平均して、やや減少ぎみ、ということは、その一方で、1人当たりの穀物消費量を激減させている低所得国の人たちが少なくない、ということである。
 ここに食糧問題の経済的側面がある。

 食糧問題の経済的側面は、ここにみられるように、経済格差の問題である。
 穀物の生産量が増えないので、1人当たりの穀物消費量が増えないのは、平均でみたばあいで、個々の国の経済格差の問題がかくされている。
 今後、食糧不足になったばあい、市場原理主義のもと経済格差が広がるなかで、そのしわ寄せは低所得国にとって、より深刻になるだろう。
 日本が今後も先進国であり続けたとしても、国内の食糧生産を軽視し、輸入に依存すること、つまり、食糧自給率を低下させることは、国民を不安にするだけでなく、低所得国からの非難を浴びることになるだろう。
 農政の基本に、食糧自給率の向上を据え続けねばならない。


(前回 「攻めの農政」に期待できぬ

(前々回 農家兼業は悪か

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