農水省の米政策見直し案で米価は底なし沼へ2013年11月7日
農水省は6日、米政策の見直し案を自民党に示し、了承された。
見直し案の要点は、戸別所得補償制度をやめて、減反をした農家にたいする補助金、つまり、10アール当たり1.5万円の補助金、をやめるというものである。
激変緩和のために、来年から少しづつ減らし、5年後に廃止する、というのだが、その先、日本の水田農業はどうなるのか、が問題である。
これまでは、戸別所得補償制度で、米価がずるずると、底なし沼のように下がるのを、食い止めていた。米価が、いわゆる標準的な生産費以下に下がることは、制度としてあり得なかった。
農業者は、米価の下落を食い止める岩盤ができた、として歓迎していた。これが、4年前の民主党への政権交代の原動力になった。
この制度をやめる、というのが見直し案である。
細かくいえば、マスコミが騒ぎ立てているように、減反をやめるのではない。
今後も、減反は続ける。農水省は、減反のために、需給見通しを策定する、といっている。酔狂で策定するわけではないだろう。減反の意志は隠せない。
だが、農家が農水省の策定した需給見通しにしたがい、減反したからといって、何も利益にならない。いわゆる減反のメリット措置がなくなる。そういうように変える、というのである。
いままでは、10アール当たり1.5万円の補助金があったが、それをゼロにする、というのである。
◇
これでは、農水省が策定した需給見通しにしたがって、減反する人はいなくなるだろう。需給は崩れて米価は暴落するだろう。
それを食い止めるために、農水省は、新しく産地交付金の制度を考えている。産地の創意工夫でビジョンをつくり、需要に応じた生産を推進する、というのだが、それだけの内容で、制度の輪郭さえ明らかになっていない。
◇
もう1つは、飼料用米や、米粉などの加工用米の拡大を考えているようだ。しかし、その輪郭も分からない。
もしも、これを本気で考えているのなら、方策はある。
飼料用米の需要は大量にある。かりに、輸入トウモロコシの半分を飼料用米に代えるなら、500万トンになる。農地にして100万haである。これに10アール当たり8万円の助成をすれば、助成金額は、8000億円になる。
米粉にも大量の需要がある。かつて、民主党には米粉100万トンの目標を唱える人がいた。農地にして20万haだから、10アール当たり8万円の助成として、助成金額は、1600億円になる。
この2つの金額を足し算すると1兆円弱である。これを、水田農業の、瑞穂の国の維持のためなら高くはない、と考えれば可能になる。
◇
そう考えるなら、制度の詳細を検討すればいい。
しかし、残念なことだが、自民党のなかで賛同する人は少数派だろう。
そうだとすれば、減反のメリット措置を続け、制度に基づく減反を続けて、米価の暴落をさけるしかない。そうして、飼料米や米粉米の振興を、いままでどおりに続けるしかない。
そうしなければ、日本の水田農業は、混乱のなかで衰退し、やがて壊滅して、米さえも輸入に依存することになるだろう。瑞穂の国は滅びてしまうだろう。
(前回 朝日新聞の批判精神を欠いた米政策の提言)
(前々回 1俵2200円の米がやってくる Dさんへの回答)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日