【JA全国青年大会記念座談会】食と農と地域の再建へ! どうする農協運動(3)2026年3月2日
第72回JA全国青年大会は「咲き誇る 青年の情熱と協同の力~さあ、みんなでやってみよう!」をスローガンに開催された。JA青年組織の盟友は現在から未来につなぐ「農協運動」の担い手たちである。大会を記念した座談会は「食と農と地域の再建へ! どうする農協運動」をテーマに、長野県・JA松本ハイランドの田中均組合長、JA全中元専務の冨士重夫氏、JA全中の加藤純参事に率直な議論をお願いした。司会・進行は文芸アナリストの大金義昭氏。
写真右からJA全中参事・加藤純氏、JA松本ハイランド組合長・田中均氏、
JA全中元専務・冨士重夫氏、文芸アナリスト・大金義昭氏
けん引役は男女問わず
大金 男女共同参画をどう加速させるか?
田中 1月末に、第3回女性職員活躍サミットを開きました。もともとJA鹿児島きもつきの下小野田寛前組合長が発案し、3年前に大手町で7農協が集まって始めました。参加条件も役員と女性職員、可能であれば組合長と女性職員とがセットで来てください、と。開催に向けて、女性職員がプロジェクトをつくり、1年間かけて検討し刺激になっています。年功序列ではなく、フルに能力を発揮することができる人事制度も必要です。出産や育休で休職し、30代後半に復帰した女性がいました。子育てや地域での活動が仕事にプラスになり、決して無駄じゃない。それを人事制度の中にも組み入れようと、今年から年齢給を廃止した。年齢ではなく、意思と能力がある人だったらマネージャーにもなれるようにしました。
冨士 蔵王酪農センターには優秀な女性たちがいて改善提案の目安箱を置いたら、名前は不要なんですが、女性の8割が名前を書き、「ちゃんと答えを出してくださいね!」、方向感も含めて返答してほしいと言われる。
加藤 JAグループでは全国で部長以上の女性が約5%、課長以上も13%まで上がっています。専務や常務の女性も増えています。正組合員30%・総代15%・理事等15%の女性参画目標に対しては、正組合員の女性比率が24%くらいに増え、総代は11・6%、役員は11・7%です。3目標すべて達成しているJAは全国に22あります。まずは素地をつくっていくことが大切だと考えています。
求められる全中発信
JA全中元専務 冨士重夫氏
大金 直近の米問題については?
冨士 前農水大臣が備蓄米を放出して5kg2000円にすると聞き、これは政府が消費者米価をつくるという食管時代に戻ったのかと思った。その時、それでは一般販売米などが下落して生産者の所得やコストが賄えない事態になったら、生産者にも補償するんですよねと、間髪を入れずにいうべきでした。政府備蓄米を生産者のコスト割れするような水準で放出するなら、生産者米価をどうしてくれるのか。米をジャブジャブにして需給バランスが崩れ、価格が下がったときにどうするんだと、生産者米価を問えばいい。備蓄米を買い上げ、価格水準が戻るまではコストと価格の差を保障するとか、現場の声や農家の声を打ち出すべきなんです。
現大臣の「需給に見合った生産」「市場に関与しない」発言に対しても、主食用など需要が減少している現在の成り行きのままで需要に見合うとするだけなら生産の減少、減反することになる。しかし、成り行きのままの需要ではなく、国家の食料安全保障の観点からも意識的に生産拡大目標を掲げ、取り組むべきだと即座に発信する必要があった。
大金 JA全中には生産者団体であるJAグループの社会に"開かれた窓口"としての役割があり、「ピンチはチャンス」だったと思うのですが?
田中 単刀直入に言えば、トップ・メッセージが肝要です!
冨士 現在の米の生産実態からすると、精米5kgでは生産コストが約1800円、流通マージン250円、精米コスト250円、農家所得約700円であり、約3000円水準の米価が必要なんだと、それで農家は10a当たり約6万円、1ha当たりで約60万円の所得が確保できると、データに基づいて分かりやすく説明するべきだった。そうすれば消費者にも5kg2000円はやっぱり安いんだなと思ってもらえる。
加藤 今後は適正な価格形成に向けた食料システム法の施行により、規模によっては生産コストが異なりますから、合理的な価格形成はどの程度が適正かという話をしっかり伝えていかなければと思っています。特にJAやJA全農を中心に共同計算・共同販売という仕組みがあるからこそ、年間を通じて米を消費者や外食産業の皆さんに安心して安定的にお届けできるということもセットにして発信していきたい。
冨士 地域や農業の実態を訴えるビッグ・チャンスですからね。SNS時代だから、SNSやインスタグラムでもどんどん発信すればいい。
共生と共存 普遍的価値
JA松本ハイランド組合長 田中均氏
田中 米問題で言えば、政府が関われるのは備蓄米とミニマムアクセスだけです。いま求められていることを一言で言えば、「所得保障」であり「直接交付金」です。大きく分けると、大規模農家と中山間地域の農家、その中間もありますが、きめ細かな直接交付金体系をつくって保障する。それがあるべき姿じゃないか。
大金 新しい知恵や工夫が求められる!
田中 大規模農家に対する支援と、中小規模農家への支援はおのずから違っていい。一律の直接交付金ではなく、きめ細かにね!
冨士 世界の情勢からコストが高騰しやすいときに、すべてを消費者価格や市場価格に転嫁することには限界がある。タイムラグもあります。酪農は乳価の引き上げに3年半から4年かかり、借金が累積した。直接所得補償で価格とコストの差を補わなければ、持続可能な農業は成り立ちません。一方で、コスト上昇分も含めて全て市場価格に転嫁して消費者に負担を求めれば、所得の低い層ほど食費負担が重くなる。格差が広がる中では全てを消費者価格に転嫁するのではなく、所得税や法人税といった累進課税率によって徴収する政府財源で生産コストや農家所得を支える方が公平だという観点から政策を考える必要がある。
接点を多様に広げる
文芸アナリスト 大金義昭氏
大金 欧米に比べると、日本の農業は圧倒的に守られていない。国内の農業をどうしていくのか、考え方を共有していく運動が求められますが?
冨士 「農協運動」は食と農を基軸に地域に立脚した協同組合の立ち位置で自信を持って進めていきたいですね。
田中 資本主義社会なので、所得や米価などお金が尺度の基軸になりますが、それしかないというのは貧しい。価値観の多様性に、協同組合として、あるいは国内農業を担う立場からどう切り込んでいくか。移住しなくても、農業や農村の良さを味わうチャンスや価値があることにどう結びつけるかなど、方法はある。SNS時代に欠けているのがフェイス・トゥ・フェイスで、その部分は農協がしっかり出来ることじゃないか。そうしたことに価値を感じる皆さんと一緒に事業や運動を展開していきたい。「共生」と「共存」の新しいライフ・スタイルを求めていくのが、これからの「農協運動」の役割です。
冨士 協同組合は組合員の暮らしを豊かにすること、人間が幸せに暮らしていくためにある。それは普遍的じゃないか。誰でもみんなが幸せに暮らしていきたい、つながって生きていきたい、コミュニケーションをしたいと考えている。
正組合員も准組合員も多様化している中で、農協はその双方を抱え込み、組合員を主人公にしながら運動を広げていく。そのためにも、現場の問題や課題を抽出する体制の再構築が必要です。中央会や経済連の役職員だけでの意見集約には無理がある。農協の生産部会長のような方もメンバーになり、直接話を聞くような柔軟な仕組みづくりとプロデュース能力を持つべきだと思う。
加藤 大会決議でも、様々な人との接点をどうつくるかがキーワードです。接点を広げる仕組みをつくるのは私たちの役割です。JA全中の刷新プランでも現場に出かけていくことを数値化していこうと検討しています。新人職員の単協研修や人事交流も含め、青年組織をはじめ、現場との接点づくりに積極的に取り組み、その上で農政運動や「農協運動」などの提案を具体化していく。多様化する組合員の皆さんと一緒になって取り組んでいきたいと思います。
大金 厳しい視線が注がれている今だからこそ、存在理由や存在価値を示すチャンスですね。創造的でチャレンジングな取り組みに期待しています。
座談会を終えて
紙幅が足りないくらい議論が膨らんだ。「農協運動」を正面に据えて論じ合うのは、この数十年来なかったことではないか。出席した各位の真摯な議論を契機に、JAの組織・事業・経営を活性化する「百家争鳴」を期待したい。困難な時代だからこそ、仲間同士の活発な議論が大切だと熱くなった。(大金)
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