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特集:食料・農業・地域の未来を拓くJA新時代

2019.07.18 
「FEC自給圏」「5ポリス」構想実現こそJAの新時代拓く 菅野孝志JA福島中央会会長(JAふくしま未来組合長)一覧へ

-わがJAグループが目指すもの-
協同組合は世界の潮流

 今回の特集企画の主旨であるこれからJAグループが目指すものについて、東日本大震災、そして東電福島第一原発事故による直接的な被害だけではなく長く続く風評被害と戦いながら地域農業を守り振興してきた福島県の菅野孝志県中央会会長・JAふくしま未来組合長にこれまでの思いも込めてご執筆いただいた。

◆水田依存から脱皮

菅野孝志・JA福島中央会会長(JAふくしま未来代表理事組合長)菅野孝志JA福島中央会会長

 

 1977年8月から9月にかけて15日間、欧州5か国(西ドイツ・オランダ・スイス・イギリス・フランス)のりんごわい化栽培研修会が30名の参加で計画され、松川町から4人の青年と私が参加した。欧州各国のりんごわい化栽培の素晴らしさや台木と品種の親和性等など存分に学んだ。同時に私は、同じ欧州でも大陸の西ドイツ・オランダ・スイス・フランスの農地と島国イギリスの農地の違いを感じ取ることができた。
 イギリスの農地は荒廃地が多かった。なぜかという疑問にこんな答えがあったと記憶している。大陸の国は民族間の争いが頻繁で、国土の良し悪しが国力を示す。つまり人馬が豊富だと攻められる可能性が大きくなり、逆に貧弱だと侮られる。イギリスは、日本と同じく島国のために攻め難いという地理的優位性があり、故に荒廃地の多少も気に留めなくてもいいのだとのことであった。
 現在、カロリーベースの日本の食料自給率は38%まで低下した。目標とした45%にはほど遠い。イギリスのように「最低70%の食料自給率を目指す」くらいの、先進国としてプライドこそが重要である。イギリスにできて日本にできないことはない。

【表】イギリスと日本の食料自給率の推移(農林水産省食料需給表による)

 イギリスは、食料自給率の低下と言う局面で持った「これでいいのか」という思いは、2度の世界大戦で食料不足を経験した中で、食料自給率向上が国民的課題として醸成された。また経済成長とともに変わる食生活であっても、主食のパン(小麦)から大きく変わらなかったことが食料政策上有利に働いというべきなのかもしれない。
 日本は、戦後、食料不足の克服に向けた穀物の品種改良や農薬の普及、農業技術の向上などで飛躍的な食料増産を成し遂げた。しかし一方で、経済成長は食生活に大きな変化をもたらし、和食から洋風化し、米消費量の減少と肉類消費量が増加したにも関わらず、過度に水田依存への食料・農業政策に終始していたといわざるを得ない。

 

◆自己改革に全力を

 食料増産のなかで、1961年に農業基本法が公布され、農畜産物の選択的拡大による生産性向上が盛り込まれた。家族農業経営を中心に自立経営の育成と農地保有合理化の促進、 協業が助長され、選択的規模拡大で畜産や園芸等選択的拡大へ舵を切り、農事組合法人の新設が可能となった。そして農業の構造的な改革を目指した第1次農業構造改善事業が展開された。
 1970年、「総合農政の基本方針」の下、米の生産調整が始まった。同時に農地保有合理化促進事業の創設と農協による経営受委託事業が創設され、71年には、米の生産調整5年間計画が樹立され、。翌年、全国農業協同組合連合会(全農)が発足した。
 当時、列島改造論に沸き、市街化区域内の農地の宅地並み課税が導入された。第1次石油危機勃発し、74年にはローマで世界食糧会議が開かれ、世界の食料危機が惹起された。翌年、総合食料政策の展開が発表され、世界的な食料危機的基調の中で、国内自給率の向上などの総合的な食料政策が樹立された。
 水田総合利用対策において米の計画的生産を進めるとともに、増産が必要な農産物について水田での生産振興を図るとするものであった。具体的には食料の国内自給率向上など米の生産を計画的に調整するとともに転作作物を定着させるとするものであったが、第2次過剰米対策(5年間で650万t)が出され、JA全中は「米の生産調整強化に自主的に取り組む」方針を決定したのである。
 1999年食料・農業・農村基本法公布。2008年リーマンショック、10年民主党の菅首相が秋の臨時国会でTPP(環太平洋連携協定)への参加検討を表明。そして11年3月11日東日本大震災発生、福島第1原発事故を受けて,JAグループは「東日本大震災の教訓をふまえた農業復権に向けたJAグループの提言」を発表した。13年3月、安倍首相TPP交渉参加を表明、7月正式交渉参加を受け、衆参両院の農林水産委員会は「重要5品目の関税撤廃は認めない」と決議した。
 14年規制改革会議が農協組織の見直しを提言。政府は、規制改革実施計画を閣議決定(6月)し、5か年の集中期間に突入した。自主自立の組織であるJAグループは、15年10月開催の第27回全国大会に向け「創造的自己改革」を決議。JAはじめ県連・全国連は、翌16年の総代会(総会)で、地域の特性を生かし「農業者の所得増大と地域の農業生産拡大、その上で賑わいと潤いのある活力ある地域づくり」を決議・実践し、着実な成果を上げている。

 

来福したICAのルルー会長と来福したICAのルルー会長と

 

◆高い倫理観持って
 
 国連は、2008年のリーマンショックで顕著になった貧困・飢餓・雇用の喪失・食料不足・自然の荒廃等を修正し、持続可能な状況を創る役割が協同組合セクターにあるとして、12年を「国際協同組合年」とし、「協同組合はよりよい社会を築く」ことを提起した。わが福島県の地産地消運動促進ふくしま協同組合協議会はJA・生協・漁協・森連に福島大学などが連携して運動を展開した。その一つに黄色いハンカチプロジェクトがある。JAと全国生協からの延べ361人と、福島大学・福島県生協連の協力による「どじょ・スク」(土壌スクリーニング。2013年4月から展開し、9万2029か所の農地放射性物質を調査)、「国際家族農業年」「国際土壌年」「国際豆年」に呼応した。
 JA綱領「わたしたちJAの組合員・役職員は、協同組合の基本的な定義・価値・原則(自主、自立、参加、民主的運営、公正、連帯等)に基づき行動します。そして、地球的視野に立って環境変化を見通し、組織・事業・経営の革新をはかります。さらに、地域・全国・世界の協同組合の仲間と連携し、より民主的で公正な社会の実現に努めます。(中略)農業と地域社会に根ざした組織としての社会的役割を誠実に果たします。」とあるように、われわれのやるべきことは明確である。
 従ってJAがその役割・運動の理解を促進するには、高い倫理観のもとに「自然環境を、山を、川を、大地(農地)を、そして大海原」を守り育むトップリーダーであることを宣言し、日本国民との信頼関係を構築こそが大切である。「戦略は組織に従う」からである。
 2000年からのミレニアム開発目標MDGsは、世界の多くの人々の目を開発途上国が抱える課題に向けさせた。極度の貧困状態にある人口の半減などに貢献したが、未だに乳幼児5歳未満児が年間590万人も命を落としているなど達成できなかった目標も多い。
 これらのことから2015年から30年までをSDGs「我々は世界を変革。持続可能な開発のための2030年アジェンダ」とした。SDGsの特徴は、開発途上国だけでなく先進国も一人ひとりが自国と世界の課題に取り組み、17の開発目標を実現しようとするものである。協同組合はその重要なセクターとして大きな期待が寄せられている。「協同組合が未来を拓く」という世界の潮流を日本に取り戻さなければならない。

 

◆自然への畏敬喪失

 食料・農業・農村・JA・日本の未来を拓くことは、内橋克人さんが唱える「FEC自給圏」構想、いわゆるF(農と食)E(再生可能エネルギー)C(ケア)の実現である。さらに、今村奈良臣先生が提唱する「5ポリス」構想「アグロ・ポリス」「フード・ポリス」「エコ・ポリス」「メディコ・ポリス」「カルチャ・ポリス」の実現こそがJAの新時代を拓く方向であると確信する。
 農業に基点を置き、食に多様性を持たせ、守り育んだ自然から営みの根源をいただき、老いも若きも命を尊び、その地域に生きることを通じ文化を育むことである。そこに潤いある豊かさが宿る。
 ここ数年の災害は、新自由主義での市場経済至上主義の下、人を包み込む自然への畏敬の念を怠ったことによる人災である。倫理なき文明の進化は、人・こころの破壊への警鐘なのだと思う。

 

未来を担う子どもたちと田植え 特集:食料・農業・地域の未来を切り拓くJA新時代 JA福島中央会会長(JAふくしま未来組合長) 菅野孝志未来を担う子どもたちと田植え

 

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