【規制改革推進会議 農協改革の「意見」】改革の狙いはJA「解体」(下)2016年11月17日
国民の食料が危ない。対策早急に
規制改革推進会議農業WG「農協改革に関する意見」概要はこちらから。
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◆委託販売方式こそ マーケット・イン
販売事業は1年以内に委託販売を廃止し全量を買取販売に転換すべきであるとした。
全農は、たとえばJA全農青果センターで実需者と結びつき、集荷、販売をしており実質的に買取をしているが、農業WGはこれを買取販売とは認めないという。11日に行われた規制改革推進会議事務局による記者レクでも「売れると決まったものを仕入れるのは買い取りではない。買い取りを行えばリスクに見合うだけの行動をとる。より高く売る相手を見つけるだろう」と説明した。
しかし、農産物の市場取引価格は毎日公表されて農家を含め関係者はみんな知ることができる。とくに農協の買取価格は競合する業者の標的となり、業者より安ければ農協には出荷しない。農協が組合員のために機能を発揮しようとすれば委託販売であってもリスクという点は買取と変わらない。
また、委託販売であれば小売店でいくらで売っているかも含め、流通各段階の情報をオープンにして農協が生産者に説明できる。競合産地の品質、価格、さらに輸入品の情報などを得て対策を考えることができる。まさに売れるものを作るというマーケット・インの生産へと改善されていく。
農業WGの言う買取販売の姿が不明だが、生産者から買い取り、実需者・消費者へ直接販売をという事業でそのリスクヘッジをしようと思えば、出荷者からの買い叩きも起きる。農家の所得向上とはまったく逆、「国内の生産基盤を崩せといっているようなもの」との声も聞かれる。
直接販売を強調するが、いうまでもなく野菜、果実、生乳など生鮮品は天候などで需要量も変動するし供給量も変わる。毎日の需給調整がなければ安定した供給はできない。中間段階を省けば合理的だと思いがちだが、卸売業者、小売業者という機能分担は実態に合った流通の担い手である。
また、全農、農協が手数料をとることも問題にしているが毎年の総会(総代会)で品目ごとに決めており、農家組合員には見直す権利は与えられている。言うまでもなく農協改革とは農家組合員が農協と徹底的に話し合って実行することがもっとも重要だろう。
◆組織の分断を防げ まず国内生産体制を
農業WGの「意見」には、また農協組織を分断させかねない提起もある。
JAが農産物販売に全力を挙げられるように信用事業の農林中金への譲渡を積極的に推進するとしている点だ。3年後に信用事業を営むJAを半減させるべきと提起しているが数字に根拠はない。平成33年までの5年間を農協改革集中期間としていることから「減らす方向感を出した」(規制改革推進会議事務局)。
クミカンの廃止の提起と、さらに准組合員の事業利用規制についても「実態調査・研究を加速すべき」とした。
農産物の生産・販売に全力を挙げられるように、という名目で総合農協の解体を目論む提起がなされている。全農の改革は全農が考えることで、JAには信用事業と准組合員規制問題が降りかかってきた、などと別々に考えてはならない。各段階から組織をあげて対応する必要があるだろう。
今回の「意見」は政府が進めようとしている「攻めの農業」実現のための農協改革である。そのために輸出の強化も掲げている。しかし、世界の情勢は不透明になっている。TPPをはじめとした通商交渉も外交全体のなかでどう位置づけられるのか見極める必要がある。
そのためには何よりも国内の農業生産基盤を万全な体制にしていくべきであり、拙速で実態に即さない改革論は不要である。農業・農協に関して部外者だらけの欠席裁判ではなく、真に日本の将来の食料・農業の姿を正しく検討する体制を早急に求めていく必要がある。
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