「地域と食を守る農政が筋」 国民民主党衆院・玉木雄一郎議員に聞く(1)2024年12月25日
10月の衆議院選挙では自民党と公明党が過半数を維持できず、臨時国会では税制や経済政策、政治改革をめぐって論戦のうえ与野党協議で政策が修正される場面も出てきた。野党の存在感が増すなか、今回は議席を改選前の4倍に増やした国民民主党の玉木雄一郎衆議院議員に農政を中心に聞いた。聞き手は千葉大学客員教授の加藤一郎氏。
直接支払いを重視

国民民主党衆院議員 玉木雄一郎氏
加藤 祖父は香川県さぬき市の大川農協組合長、父は香川県農協の畜産部長を勤められたという兼業農家で育った玉木さんは、小・中学校時代には農作業を手伝われたと思います。その後、東大法学部を卒業して大蔵省へ入省しますが、実際に農作業を経験したという大蔵官僚はいたのでしょうか。
玉木 全部調べたわけではありませんが、ほとんどいないでしょうね。当時、稲の病気を予防するためにパイプの穴から農薬が散布される器具の端を持って畔を歩いたという経験もあります。
財務省出身ですから、もともとは金融や財政が専門だったわけですが、私は農協一家で育ったし、地方の農業基盤がどんどん弱体化すると地域そのものが崩れていくことになるので、農政をしっかりやろうと初当選の時から国会では志願して農林水産委員会に所属しました。
加藤 ご指摘のように生産基盤が弱体化していますが、その最大の理由は農業所得が低いということにあるのではないでしょうか。どんな政策の見直しが必要でしょうか。

千葉大学客員教授の加藤一郎氏
玉木 今年、食料・農業・農村基本法が改正されましたが、そもそも基本法はなぜ作られたかといえば、戦後、他産業に比べて農業従事者の所得が低く、所得の格差をいかに是正していけるのか、いわば農業で食べていける所得を確保するための農政はいかなるものであるべきか、というのが原点でした。
しかし、今回の改正基本法ではスマート農業の導入や輸出の増大などを掲げていますが、いちばん肝心な営農継続可能な所得をどう確保するのかということはまったく書かれていません。農業経営の大規模化や効率化の努力は必要だということは相変わらず書かれていますが、それはすでにやってきたことです。一方、今回、上昇したコストを価格転嫁して、消費者にも一定の負担をいただくということは新たに盛り込まれました。これは必要なことです。
このように農業者にも消費者にも努力を求めていますが、国は何をするのかが欠けています。農業でも効率化を重視する産業政策を否定はしませんが、一方で多面的機能を重視し農業や農地の持つ公共性ということに着目した地域政策についての国の努力はどこに行ったのでしょうか。
それは直接支払いしかないと我々国民民主党は考えています。価格の形成は基本的には市場に任せればいいのですが、営農継続可能な所得は政策で保障する必要があります。
最近は米の価格が上昇しており、これは農業者にとっては良いことですが、一方で需給調整への取り組みの結果、高くなりすぎると消費者は買えなくなってしまいます。価格のコントロールを需給調整でやることには限界があるので、価格はある程度市場に任せていくことも考えなければなりません。しかし、それではコストが高止まりしている中で、販売価格が下がれば赤字になる。そのギャップを直接支払いで埋めていくことに踏み込まなければなりません。
ただし、現在は中山間地域直接支払い、水田活用の直接支払い、さらに畑作物へのゲタ対策など直接支払制度にもさまざまな制度があるので、もっとシンプルな制度に整理すべきです。
重要な記事
最新の記事
-
世界が認めたイタリア料理【イタリア通信】2025年12月27日 -
【特殊報】キュウリ黒点根腐病 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【特殊報】ウメ、モモ、スモモにモモヒメヨコバイ 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【注意報】トマト黄化葉巻病 冬春トマト栽培地域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
【注意報】イチゴにハダニ類 県内全域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
バイオマス発電使った大型植物工場行き詰まり 株式会社サラが民事再生 膨れるコスト、資金調達に課題2025年12月26日 -
農業予算250億円増 2兆2956億円 構造転換予算は倍増2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(1)2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(2)2025年12月26日 -
米卸「鳥取県食」に特別清算命令 競争激化に米価が追い打ち 負債6.5億円2025年12月26日 -
(467)戦略:テロワール化が全てではない...【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月26日 -
【スマート農業の風】(21)スマート農業を家族経営に生かす2025年12月26日 -
JAなめがたしおさい・バイウィルと連携協定を締結 JA三井リース2025年12月26日 -
「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」採択 高野冷凍・工場の省エネ対策を支援 JA三井リース2025年12月26日 -
日本の農畜水産物を世界へ 投資先の輸出企業を紹介 アグリビジネス投資育成2025年12月26日 -
石垣島で「生産」と「消費」から窒素負荷を見える化 国際農研×農研機構2025年12月26日 -
【幹部人事および関係会社人事】井関農機(1月1日付)2025年12月26日 -
GREEN×EXPO 2027の「日本政府苑」協賛を募集 2027年国際園芸博覧会協会2025年12月26日 -
初の殿堂入り生産者誕生 産直アプリ「ポケットマルシェ」2025年生産者ランキングを発表2025年12月26日 -
災害時の食の備えを支援 新サイト「食の備え BOSAI」公開 コープこうべ2025年12月26日


































