米価高騰はなぜ起きたか 埼玉の米どころ・加須からの報告 松本愼一さん(加須市の農家、埼玉農民連副会長)2025年3月24日
米価の高騰はなぜ起きたのか。農水省は「流通がスタック(滞留)している」というが、埼玉の米どころ・加須の農家・松本眞一さんは「米は本当に足りない」と話す。以下は、3月22日に開かれた「埼玉の農業・食料を考えるシンポジウム」での松本さんの報告の要旨である。
埼玉の農業・食料を考えるシンポジウムで「農業と食料は国防なんだ」と話す松本眞一さん
(3月22日、さいたま市内)
埼玉一の米どころ・加須市でコシヒカリを1.8ヘクタール作付けしています。面積では、埼玉県の平均的な兼業農家です。ソーラーシェアリングも活用しながら米づくりをしています。
●コンビニの棚、午後には空に
この1週間、お米売り場をみると、近所のコンビニでは午前中は米がありますが午後はなくなる。農家ともつながっているスーパーにはそれなりにありますが、人気の銘柄は欠けています。値段は軒並み、税込み4000円を超えています。去年夏に起きた米パニックは今でも続いている。これからどうなるか、心配しています。
「米は不足していない」「新米が出れば落ち着く」「農家が売り惜しみ」「外国人が買い占め」、政府のいうことがコロコロ変わり、消費者はいっそう不安になったと思います。
●23年産は「不足」、24年産は「先食い」
2024年6月末までの1年間の米需要は705万トンでした。政府の予想より多かった。それに対し23年秋の収穫は661万トンで、44万トンも不足していた。米不足が起きたのも当然です。
端境期の在庫も約200万トン必要なのに(24年6月末には)153万トンしかなかった。足りないので、昨年9~10月には新米が先食いされました。「1ヵ月分くらい早く食べちゃったんじゃないか」と言う業者もいます。1ヵ月分は約60万トン。半分でも30万トンです。これらを合わせると、50万~70万トンは足りないのではないかと思っています。
●25年産はどうなるか
今後はどうか。
政府も「(米を)もう少し作ってくれ」と言い方を変えてきていますので、(農家が主食用米の作付けを増やす結果)25年産の米は(平年並みの作況なら)約12万トン増えるといっています。最近、農業統計の精度が落ちているのでどうなるかわかりませんが、深刻な状況は続きそうです。
●「農業と食料は国防」
農業予算を増やし、これ以上農家が減らない対策に全力をあげる。過半数をしめる中小農家を大事にする。私はソーラーシェアリングといって、発電をしながらその下で米や野菜を作っています。そうした試みも、国や県がもっと応援してほしい。県の試験研究機関には高温障害に強い品種を作ってほしいです。
「農業と食料は国防なんだ」という世論を、今こそ消費者と一緒に作り上げて、農業を再建するために頑張りたいと思います。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(166)食料・農業・農村基本計画(8)農業の技術進歩が鈍化2025年11月1日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(83)テトラゾリルオキシム【防除学習帖】第322回2025年11月1日 -
農薬の正しい使い方(56)細菌病の防除タイミング【今さら聞けない営農情報】第322回2025年11月1日 -
酪農危機の打破に挑む 酪農家存続なくして酪農協なし 【広島県酪農協レポート・1】2025年10月31日 -
国産飼料でコスト削減 TMRと耕畜連携で 【広島県酪農協レポート・2】2025年10月31日 -
【北海道酪肉近大詰め】440万トンも基盤維持に課題、道東で相次ぐ工場増設2025年10月31日 -
米の1等比率は77.0% 9月30日現在2025年10月31日 -
2025肥料年度春肥 高度化成は4.3%値上げ2025年10月31日 -
クマ対策で機動隊派遣 自治体への財政支援など政府に申し入れ 自民PT2025年10月31日 -
(459)断食:修行から管理とビジネスへ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年10月31日 -
石川佳純が国産食材使用の手作り弁当を披露 ランチ会で全農職員と交流2025年10月31日 -
秋の果実王 旬の柿を堪能 福岡県産「太秋・富有柿フェア」開催 JA全農2025年10月31日 -
「和歌山県産みかんフェア」全農直営飲食店舗で開催 JA全農2025年10月31日 -
カゴメ、旭化成とコラボ「秋はスープで野菜をとろう!Xキャンペーン」実施 JA全農2025年10月31日 -
食べて知って東北応援「東北六県絆米セット」プレゼント JAタウン2025年10月31日 -
11月28、29日に農機フェアを開催 実演・特価品販売コーナーを新設 JAグループ岡山2025年10月31日 -
組合員・利用者に安心と満足の提供を 共済事務インストラクター全国交流集会を開催 JA共済連2025年10月31日 -
JA全農と共同開発 オリジナル製菓・製パン用米粉「笑みたわわ」新発売 富澤商店2025年10月31日 -
【スマート農業の風】(20)GAP管理や農家の出荷管理も絡めて活用2025年10月31日 -
農業経営効率化へ 青果市況情報アプリ「YAOYASAN」に分析機能追加 住友化学2025年10月31日


































