自立・安定経営へ懸命 農業法人実態調査2014年6月9日
日本農業法人協会はこのほど、農業法人実態調査結果(「農業法人白書」)をまとめた。それによると、農業法人は、設立から18年、特例有限会社による畜産経営で、経営者の年齢は60代、従業員は10?19名、売上げ高1?3億円というのが最も多い。経営課題については生産性の向上、社員育成、販路開拓を挙げる。このほか、認定農業者制度の認定基準については、技術力・経営意欲、計画達成などの評価をもとに見直しを希望しており、経営者としての自信を持ち、経営の自立と安定に向けて懸命に努力する農業法人の姿が伺える。
白書は2013年に実施したアンケート調査をもとにまとめた。調査対象は回答のあった867農業法人。現在(2010年)農業法人の数は1万2511あるが、設立がもっとも多かったのは食管法廃止・新食糧法施行の1995年。その後は下降傾向にある。会社形態は特例有限会社が半数以上(55.7%)を占め、株式会社(22.8%)、農事組合法人(18.6%)と続く。
◆株式会社多い稲作
業種別では、稲作で株式会社(33.9%)が3分の1を占め、地域では北海道・東北、九州が多い。業種の構成では、「生産」だけが畜産で多く、次いで稲作。「生産+直売」、「生産+直売+加工」が稲作(43.9%、39.9%)と最も多い。
経営者の年齢は約6割が50?60代。平均57.4歳。設立15年以上を境に2代目へのバトンタッチが増えている。従業員数(役員、常勤パートを含む)は16.5名。女性が参加している農業法人は5名以上が36.5%となっている。業種別の経営規模は稲作が47.1ha(50ha以上が34.5%。露地野菜が22.8ha、酪農(経産牛)434頭、肥育牛1212頭。
売上規模は、平均2億6377万円で前年調査より8.1%の減。1?3億円が約3割で。次いで7000万?1億円(14.2%)が多い。業種別平均売上高では、採卵鶏が約11億円で断トツ。次いで養豚、ブロイラー、酪農、肉牛、キノコ、野菜の順。稲作は8423万円。
◆JAへ販売は2割
販売先では問屋卸(34.0%)が最も多い。農協は18.9%で、前年より1.4ポイント増えた。消費者への直接販売は11.9%だが、毎年増加傾向にある。特に果樹(42.2%)の消費者直売が大きい。
金融機関との取引では、公庫(日本政策金融公庫)からの借り入れが70.0%で最も多く、民間金融機関、農協(信農連、農林中央金庫を含む)が続く。売上げ10億円以上の法人では民間金融機関からの借り入れが42.0%と際立つ。過去1年の経営状況は、「良くなった」と感じている法人の割合(34.6%)が収支実績で増えている。「悪くなった」の割合は減少傾向にある。
経営課題では、生産(95.6%)、人材育成(60.7%、6次産業化(60.6%)がベスト3で、それぞれ生産性向上、社員教育、販路拡大を取り組むべき課題として挙げている。こうした経営課題についての相談先では76.7%が税理士・会計士を挙げ、普及指導員(27.0%)、JA(18.6%)、農業会議(17.4%)を大きく引き離している。
認定農業者制度の認定基準については、「技術力・経営意欲などの評価」(64.6%)、「計画達成の評価」(46.6%)が、認定基準を見直す場合取り入れることを望んでいる。
◆企業参入には警戒
このほか、土地利用型農業への企業参加については、「要件緩和はすべきでない」(39.5%)、「農地リース制度を活用して参入すればよい」(29.9%)と考えている法人が多い。この二つを合わせると、稲作で約8割、野菜で約7割、畜産で約6割強を占めており、業種を問わず、農業法人の経営者は、株式会社による企業の農業参入には警戒心を持っている。
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