「農業白書」 国民への発信が課題-審議会で意見2018年4月18日
・自給率向上プロセス記述を
・農業の実態発信強化も審議会で意見
農林水産省の食料・農業・農村審議会企画部会は4月12日の会合で農水省が示した29年度「食料・農業・農村白書」(案)を了承した。これまでの審議で食料安全保障確保について輸入に依存するような印象を受けるなどの指摘があったが、「国内生産の増大を基本とし」の一文を入れるなどの修文を行ったなどと説明し審議会は了承した。政府は5月にも閣議決定する。
この日の会合でこれまでの審議をふまえた白書案は委員にのみ公開されたが、食料安全保障の確立については「国内生産の増大を図ることを基本とし、輸入と備蓄を適切に組み合わせる」との記述を加えたとの説明があった。この記述は平成11年に制定された食料・農業・農村基本法の第二条(食料の安定供給の確保)の条文と同じ文言だ。この部分は、当時、同法案の国会審議の過程で当初案にはなかった、国内生産の「増大を図ることを基本に」と修正された経過がある。
そのほか、カロリーベースの食料自給率向上のために「ごはんをもう一杯」、「国産大豆の豆腐2丁」でそれぞれ1%の上昇に寄与することなども消費者理解に向け解説を追加した。
企画部会委員の中家JA全中会長は白書案を了承するとしながらも、食料自給率45%まで「どういう形でもっていくか、プロセスをもっと記述すべきだ」と今後の課題を指摘したほか、農業産出額が2年連続で増加したことについて、「それで生産基盤が強くなったわけではない」などと農業の実態に即して分析することも大事で、「白書では農業は必要で重要な産業であることを国民に伝えてほしい」と意見を述べた。
一方で若手・中堅の農業者が地域の農地を集積し、スマート農業の実践などにも取り組んでいることなどを取り上げている内容を評価する声もあった。
また、意見として多かったのが白書による情報発信。「今度の白書の売りは何か、狙いは何か、新しさは何かの3つの観点で説明する準備が必要」との意見や、メールマガジンやSNSなどをツールとして活用する必要性も指摘された。
柏染谷農場の染谷代表は「農家自らも発信が大事」と考え、手づくりの「あぜ道だより」を発行し消費者団体と交流してきた体験を紹介し「この国の食料をどう考えればいいか、もっと訴えていきたい」と話した。
白書の構成は基本法に即して、これまで「食料」、「農業」、「農村」を基本的な章立てとしてきたが「基本法の枠組みは読み手には関係ない」と意見もあり、農水省は今後、編集の仕方も検討するとした。
そのほか東大の中嶋教授は4月1日から種子法が廃止されたことの記述がないことを指摘した。これに対して柄澤政策統括官は農業競争力強化プログラムを解説した昨年度の白書で記述したとし、法廃止後の実態については「今後、記述していくことになるのではないか」とした。
(写真)農林水産省の食料・農業・農村審議会企画部会の会場
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