農政:JAは地域の生命線 国の力は地方にあり 農業新時代は協同の力で
【対談】JAふくしま未来 × 福島市 震災克服 未来につなぐ(下)2016年10月14日
「農家の企業化」推進加工・製造業と連携
福島市長・小林香氏
JAふくしま未来代表理事組合長・菅野孝志氏
――福島市は米、果樹、野菜、畜産が代表的で市場でも高く評価されていましたが、残念ながら安全性は確保されているにもかかわらず、風評で取り引きが難しい品目もいまだにあって価格が戻ってこない状況です。しかし、安全性も確保され品質も高いのだから、これからは新たな産地づくりと新しい市場に売り込んでいくことも考えていかなければなりません。
◆ ◇
小林 日本は一戸一戸の農家のみなさんが丁寧な農業をしてきたのが特色です。素晴らしいことだと思いますが、やはりこれからは一戸あたりの農業規模をある程度大きくすることも大事ではないか。また、農家自身が企業家であったらいいと思います。
農家が企業家になるという取り組みをもっと強化できないか。その分野でJAの役割はかなりあるのではないかと思います。今回の農協改革に関連するかもしれませんが、農産物販売という本来のJAの活動を通じて、農家の企業化という取り組みがもっと必要になるのではないか、私は期待したいです。
菅野 福島市では米では15haから20haぐらいであれば家族経営でできるだろうと思います。果樹では3ha以上でしょうか。ただ、若い人が企業家として農家になるには10年はかかり、親などから学ばなければいけない期間がやはりある。そのときに農業で生活ができるという裏づけがあるのか、所得・価格の保障をする制度があるのかということになるとどうも不安になってしまう。
企業家を育てていくことにわれわれも取り組みながら、同時に農業で生活できるという基盤を政策として下支えするような仕組みを国には考えてほしいと思います。また集落の農地管理には高齢者もがんばってくれているわけです。それは少しでも田んぼを生産性のある状態にして維持したいという気持ちからです。規模拡大する企業家を育てながらも、同時に農村社会に住む人たちが一緒になって農地の維持に取り組めるような仕組みもきちんとつくることが必要です。
小林 われわれ福島市としてもJAに委託するかたちで新規就農希望者に地域での農業体験をしてもらっていますが、これは続けていきたいと思っています。
菅野 福島市は県内でも新規就農者が多く、若い人たちががんばろうとしている地域です。そういう方々との定期的な会議を設けて、市長やJAも含めて現在の農業に学びながら、福島の農業を衰退させないためにこれをやろうというような話し合いをしていきたいと思っています。
小林 市長に就任してから女性で意欲ある方々に集まっていただき、女性の視点で政策提言をしてもらい、それを翌年度の政策に取り入れています。国の支援も活用しながら、農業者の需要に合った農業政策を展開するため若手農業者や女性も含め、意見交換会はぜひ実現したいです。
――原発事故後、生産現場を抱える市、JAは苦情の矢面に立ちながらも最前線で対応してきた5年間だと思います。それをふまえ、次にどう向いますか。
◆ ◇
菅野 これからは福島の農業が福島の加工業、製造業の方々と連携することも大事だと思います。これまでは生食販売が中心だったわけですが、加工業などともっと手を組んで福島の産業として全体として元気にしていく。加工や製造に携わる人を育てることも大事かもしれません。
――福島のいい素材に合わせて加工することができる技術を開発し人材を養成していくことも大事になりますね。
菅野 JAはこれまで自己完結しようという考えが強かったと思います。これからのJAは農家の人たちがつくったものをうまくどうコーディネートしていくか、そのときに地元の二次、三次産業とともに全体の価値を高めていくことが求められていると思います。
――市長からJAに対して期待をお話していただければと思います。
小林 福島市の農村部あるいは周辺自治体も含めてJAの果たす役割は極めて大きいと思っています。農業生産活動だけでなく金融面や直売所やAコープを通じて農村部の方々の生活を長年支えてくれていると思います。農業者に対する支援は基本的に変らないものだと思いますが、期待するのは、JA合併によって資金的にも組織的にも大きくなったわけですから、今まではなかなかできなかったことができるようになることがあると思います。そうすれば合併の意義もより出てくると思います。
菅野 3月の合併から半年が過ぎ、改めてJAとして、その地域ごとの状況を適切につかみながらいろいろな施策を打っていきたいと思います。たとえば、福島市の隣の本宮市にJA歯科診療所を開設し、訪問診療も始めました。
農業生産に関しては営農再開を支えるためにもJAとして5億円の地域農業積立金を積み上げ、それを活用していくことにしています。あるいは避難解除された南相馬、小高地区などについては新しい農業について国や県にも提起していく考えです。
新しい構図を組み立てることがこれからの5年では非常に大切だと思っています。
――ありがとうございました。
・【対談】JAふくしま未来 × 福島市 震災克服 未来につなぐ (上) (下)
・【現地ルポ】福島市(福島県)土壌マップが"道標" 営農継続の原動力
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