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特集:緊急企画:TPP11 12月30日発効-どうなる、どうする日本農業

2018.12.12 
【社民党・吉川はじめ幹事長に聞く】地方議会から安倍農政をただす一覧へ

 総自由化ともいうべき2019年は夏に参議院選挙がひかえる。農山漁村を抱える選挙区1人区が多い。社民党の吉川幹事長は野党が共闘して「安倍農政との対抗軸を鮮明にしていくべき」と話し、持続可能な農業に向け、国民合意のもとでの保護政策の確立の必要性を強調する。(聞き手:小松泰信岡山大大学院教授)

 小松 農業をはじめとする第一次産業の特徴をどう捉えておられますか。

 

 吉川 第二次、第三次産業の論理の上に第一次産業を乗せることに無理があります。例えば林業では、戦後間もなく植林した木が現在皆伐期に入っています。70年前に植林を指導した方々のだれも、70年後の需要動向を予想していませんし、できません。でも必要だから植え続けるわけです。

社民党・吉川はじめ幹事長

(写真)社民党・吉川はじめ幹事長

 

 小松 中山間地問題にも深くかかわる問題ですね。

 

 吉川 食料危機が来たので、荒廃農地に来年から米を作りますと意気込んでも、水路、あぜ道、機械の整備が不可欠で簡単にはいきません。その時には土壌はもとより、農業者の体力も技能も思うに任せなくなっているかもしれません。

 

 小松 二次産業、三次産業の論理を当てはめることの危険性ですね。

 

 吉川 工業生産と同じ論理を農業に求めると、持続可能性がことごとく破壊されます。アメリカ的な生産性・効率性重視の超大規模農業と日本のような細やかな品質重視の小規模農業とを同じ土俵に上げることはできません。

 

 小松 政権与党は分かっていないんですかね。

 

 吉川 かつての自民党にはその辺の見識があったはずです。"新自由主義病"に侵され、今は何でもかんでも、市場至上主義、自由化一辺倒の競争社会を目指しています。それをリードする未来投資会議や規制改革推進会議のメンバーを見ていても、実態を知らなさすぎる方々で構成されています。非常に問題です。

 

 小松 今度は、農業だけではなく漁業にまで攻め込んでいますからね。

 

 吉川 2018年秋の臨時国会では、漁業法改定において沿岸水域での漁業権に関する規制緩和が提起されました。その手口は農業改革、農協改革で学習したものです。無責任で、儲け尽くしたら「ハイサヨウナラ」という方々が多大な影響を与えており、空恐ろしさを禁じ得ません。

 

 小松 その危機感が国民にはなかなか伝わらないですね。

 

社民党・吉川はじめ幹事長 吉川 小泉純一郎首相の時代から、「規制緩和は善きこと」という考えが広がり、メディアも思考停止状態にあるからです。
 中山間地を取り上げる場合も、「素晴らしい棚田の風景を見て息を飲む」というような表現が当たり前のように流されるわけですが、実はその背後に、維持するための苦労や葛藤がどれだけあるか。「息を飲む棚田」を報じるなら、それを維持していくために、どんな支援が必要なのかも訴えるべきです。

 

 小松 御党の選挙政策集に載っている農林水産政策には、同意したくなることが多数提起されています。国会の議論に反映されているのでしょうか。

 

 吉川 国会議員が4人ですから人気の高い農林水産委員会のメンバーにはなれず、残念ながら直接的には反映されません。

 

 小松 農林水産委員会のメンバーになりたい議員が多いんですか。

 

 吉川 多いんですよ。地方選出の議員は与野党問わず、第一次産業に関係する方々の支持者が多く、その要求を代弁するためになり手が多いわけです。

 

 小松 そしたらもっとまともな議論や政策が提案されるべきですね。

 

 吉川 与党の議員にも、TPP、農業競争力強化支援法、農協改革などについて反対の人は結構います。でも、選挙での公認問題があって反対投票はしないわけです。

 

 小松 「民意とのネジレ」ですね。御党はどんな方法で農業政策を提起するんですか。

 

 吉川 国会においては、所属委員会のテーマと関連づけて取り上げます。 それから、わが党には自治体議員が約600名いて、自治体議会で頑張っています。地方自治法99条には、自治体議会は国会に対して意見書を提出することが認められているので、それを活用します。国会審議にどこまで影響するかはケースバイケースですが、首相や官邸が無視したとしても、関係省庁は絶対に無視できません。
 主要農産物種子法の廃止問題でも、各自治体で種子条例の制定などに取り組んでいます。

 

 小松 第一次産業が悪い方向に向かわないために必要なことは何でしょうか。

 

 吉川 やはり国民合意のもとでの保護政策です。アメリカもヨーロッパも、農業は大切な産業と位置づけて、手厚く保護しています。食料供給とともに、国の安全保障を担っているからです。他国の農産物より高いからやめましょう、というわけにはいかないわけです。そうした国々の補助金の中身を見ると、若い人が農業を続けていけること、持続性を意識したものなんです。日本の場合は、いわゆる紐付き、条件付きです。その辺からも変えていかないと持続性が保障されません。

 

 小松 来年夏の参院選において、農業問題を争点のひとつにしてほしいんですが。

 

 吉川 農山漁村を広く抱える選挙区では大きなテーマになります。そこには野党共闘が求められる1人区が多いので、安倍農政との対抗軸を鮮明に出していくべきです。いかにして総自由化に対抗し、持続可能な農業を構築し、新たな担い手を増やすか、という争点ですね。

 

 小松 都市では農業は争点になりませんか。

 

 吉川 子育て世代では、種子法廃止問題に関心を持っている人が結構います。安全で安心できる食べものを子どもには食べさせたいからです。食から入って農業に接近していくべきでしょう。

 

 小松 地方に根を張りつつ、小粒でもピリリと辛い国会活動を期待します。

 

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※このほか本特集、【緊急特集:TPP11 12月30日発効】まとめページもぜひお読みください。

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