農政:緊急企画:TPP11 12月30日発効-どうなる、どうする日本農業
【公明党・石田祝稔政務調査会長に聞く】新自由主義的農政を正す2018年12月27日
自民党との連立与党である公明党。「与党は現実から出発して理想に向かう」立場と強調するが、規制改革推進会議の提言は行き過ぎで「効率一辺倒の新自由主義的論理は農業にはなじまない」と強調する。公明党としてどのような農政を実現するのか。注目される。(聞き手:小松泰信岡山大大学院教授)
小松 自由貿易の流れが急速に進んでいることについての感想をお聞かせください。
石田 自由貿易をしっかりやっていくことに変更はありません。しかし、農業が他国と比べて不利な条件下にあることも事実です。国土の狭隘さはいかんともしがたく、土地利用型農業がアメリカやオーストラリアと正面から対抗することは容易ではありません。品質向上でカバーするにも限界があります。守るべき産業ですから、しっかり予算措置をとります。

小松 すでに、量販店では外国産牛肉の安売りも見られますが。
石田 農業従事者は生産者と消費者、ふたつの顔をお持ちです。消費者として受ける自由化の恩恵も考慮して、トータルで評価してほしい。
小松 御党の綱領に、「行きすぎた経済利益追求至上主義が今日、国際社会で批判を受けています」と書かれています。規制改革推進会議の提言をどう捉えていますか。
石田 どちらかと言えば、行きすぎています。これには揺り戻しが来ます。効率一辺倒の新自由主義的論理は、農業には馴染みません。
小松 その綱領や政策ビジョンでは、農業問題にもかなり踏み込んだ提言がなされていますが、広く伝わっていませんね。
石田 我が党に対しては都市型政党、というイメージが強いわけです。でも、2019年1月から始まる収入保険制度は、私たちが言い出したことです。農家の方々の意見を聞かずして制度を提起することはできません。
小松 戸別所得補償制度については否定的なのでしょうか。
石田 戸別とは書いてあるけど品目横断の一種ですよね。私たちは農家の収入そのものをサポートして、「豊作貧乏」をなくすことを目指しています。農業共済という災害共済はありますが、市場価格の下落への対策がない。だから農家の収入全体に着目するわけです。
小松 構造問題についてのお考えをお聞かせください。
石田 「人・農地プラン」を、今一度本腰を入れて取り組みたい。地域農業の中心的な担い手を明確化し、その人や組織を軸に地域農業を再構築していくべきでしょう。
小松 国連で、「家族農業の10年」や「小農の権利宣言」などが採択されましたが。
石田 中山間地域にあっても、健康な高齢者が携われる産業として、家族農業は貴重です。国連の採択は評価します。
小松 低迷する食料自給率についてはいかがですか。
石田 高いに越したことはないのですが、カロリーベースだけではなく、金額ベースとの両建てで傾向を把握する必要があります。今度の食料・農業・農村基本計画ではその辺を考えることになるでしょう。
小松 御党は輸出に積極的なようですが。
石田 少子高齢化と食の選択肢が豊富化する中で、余剰農畜産物が生じる可能性があります。その部分については海外への道を開くべきでしょう。そのために必要な施設の整備などにも取り組みます。また、食の安全を目指したHACCPのような工程管理システムの整備も、政治の責任として支援します。
小松 農協の置かれた状況についてはどのようにお考えですか。
石田 自己改革に注力してほしい。?啄同時(そったくどうじ)という言葉があります。卒とは、孵化する時に雛が内からつつくこと。?啄とは、母鶏が外からつつくこと。これが同時でなければ雛は命の危険にさらされるわけです。自己改革は?。政権与党や規制改革推進会議の提言は啄。その啄にやり過ぎの感はあります。
小松 背後に農村市場を狙っている人たちがいるようですが。
石田 それは否定できませんが、農村を食いものにはさせません。それから、「営農事業は、信用事業、共済事業で応援する」という考え方はすでに合意されています。総合農協でなければ生き残れませんし、地域のインフラとして必要な存在です。
小松 現政権下においては、農政に限らず拙速な運営が目に付きますが。
石田 確かにトップダウンで結論を急ぎすぎている感は否めません。ただし、「巧遅は拙速にしかず」という喩えもあります。バランスが大切です。また、政策を遂行した時の弊害は語られますが、遂行しなかった時の弊害は語られません。何事にも光と影があります。影の部分をいかにケアしていくかが我が党の仕事です。
小松 政権与党の取り組みの多くが、国民の支持を得ていないのですが。
石田 野党は理想を前面に押し出し、現実に向かっていけます。与党は現実から理想に向かって出発するしかありません。なぜなら、日々の政治に責任を持たなければならないからです。我が党の使命のひとつは、自民党がリードする議論を精査し、必要に応じて修正に尽力することです。
小松 来年の参院選や統一地方選挙で農業問題は争点となるでしょうか。
石田 選挙でどう取り上げるかは今後の課題として、機会あるごとに国民にその重要性を訴え、それを支える政策を提示していくことは政治の責任です。我が党は「農は国の基」として、農業・農村を国家の土台に位置づけています。今後は、「農福連携」を機軸に加え、農政を充実させたいですね。
小松 新自由主義的農政の大幅な修正に期待しています。
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・【総括】連続インタビューから学ぶべきもの(小松泰信・岡山大学大学院教授)
※このほか本特集、【緊急特集:TPP11 12月30日発効】まとめページもぜひお読みください。
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